16年のF1はよりスリリングな展開へ チーム戦略の幅が広がる新タイヤルール

田口浩次

1月25日、26日にポールリカールでウエットタイヤテストが行われ、フェラーリのベッテル(写真)らが参加した 【Getty Images】

 2016年F1シーズンは2月22日から予定されているバルセロナテストから、各チームが新車を投入し、いよいよ始動することとなる。それに先立ち、1月25日と26日の両日、ピレリタイヤは16年シーズン用ウエットタイヤテストを、フランスのポールリカール・サーキットでおこなった。

 このウエットテストに参加したのは、フェラーリ、レッドブル、そしてマクラーレンの3チーム。当初、テストドライバーや若手ドライバーの起用がささやかれていたが、ピレリ側のリクエストから、フェラーリはキミ・ライコネン(1日目/99周)とセバスチャン・ベッテル(2日目/134周)、レッドブルはダニエル・リカルド(1日目/99周)とダニール・クビアト(2日目/113周)、そしてマクラーレンは昨シーズン直後のアブダビテストでステアリングを握ったストッフェル・ファンドーネが両日(89周/127周)とも担当した。彼は唯一レギュラードライバーではないが、昨年のアブダビテストではトップタイムをマークした逸材だ。

 今回のウエットタイヤテストはピレリが主催したものなので、3チームともにピレリが準備したプログラムに沿って走行を行った。状態としては、マシンは15年シーズン仕様をそのまま使用。サーキットに散水し、完全なウエット路面状態を作り上げ、溝が少ないインターミディエートではなく、フルウエット用タイヤを装着した状態で、各車1回のスティントで10周前後走行する方式で行われた。より効率良くデータを取るためか、3チームそれぞれのマシンも、前後10秒づつの間隔を空けて走行するように指示されていたという。

選択肢が増えたタイヤルール変更

 さて今シーズン、F1にとって大きな変更ポイントがタイヤルールの変更だろう。というのも、今回のルール変更は、チームにとってレース戦略の幅が大きく広がる内容となっていて、入賞圏を争う中堅チーム以下にとっては、ギャンブルに出る事で大きな成功を得るチャンスがあると考えられている。それだけに多くのチームエンジニアが、このルール変更をどう戦略に生かすべきか頭を悩ませている。2台あるマシンのうち、1台にはハイリスクハイリターンを仕掛ける価値があるからだ。では、どのようなギャンブルが可能なのかを含め、まずはルール変更部分を確認してみたい。

 15年のルールではレースウイークに使用できるタイヤセットは、ピレリが指定したプライム(硬い側)7セット、オプション(柔らかい側)6セットの合計13セットだった。16年シーズンも合計13セットは変わらないのだが、ピレリが事前に準備するタイヤが従来の2種類から3種類(ハード、ミディアム、ソフト)に増える。さらに、ピレリは予選Q3用にいちばん柔らかいソフトタイヤを指定し、決勝レース用に2種類のタイヤを指定。つまり13セット中3セットは、ピレリが指定したタイヤとなる。残りの10セットはチームが自由に3種類のタイヤから選択できる。ただし、この3種類をサーキットに入ってから選択することはできない。タイヤを製造するピレリの供給力問題や運搬費用を抑えるため、チームはピレリが指定した期日(約3週間前と言われている)までに使用するタイヤセットを選択することが義務づけられている。もしチームが期日までに選択しなかった場合は、FIAがタイヤを選択し、それを使わなければならない。

 さらにチームはピレリがレース用に指定した2種類のタイヤのうち、必ず1種類をレースで使用しなければならない。例えば、ピレリがレース用タイヤにミディアムとハードを指定した場合、Aというチームはミディアムとハードを使用。Bというチームはソフトとミディアムを使用。という具合に、タイヤ選択に差が出てくるわけだ。

 また、レギュレーションでは3種類を使用してはいけないとは記載していないので、その気になればCというチームがソフト、ミディアム、ハードと3種類のタイヤをレースで使用することも可能となる。一方、Dというチームがソフトだけを使用、Eというチームがミディアムもしくはハードだけを使用するといった具合に、1種類のタイヤだけでレースすることは、昨年同様に禁止されている。もちろん、雨が降り、ウエットタイヤを使用した時点で、2種類のドライタイヤをレースで使用しなければいけないというルールは解除される。

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