バルサとリーベルの間の途方もない距離 クラブW杯が示す戦力的、経済的格差

40分以上を残し、勝負は決した

後半4分、スアレス(中央奥)がバルセロナに2点目をもたらし、勝負は決した 【写真:フォトレイド/アフロ】

 私は今大会と同じく、スペイン(レアル・マドリー)対アルゼンチン(サン・ロレンソ)の対戦となった2014年大会決勝のデータを見て、あることに気づいた。アルゼンチン勢の抵抗を破る先制点がほぼ同じ時間(昨年は37分にセルヒオ・ラモス、今年は36分にメッシが決めた)に生まれただけでなく、追加点までほぼ同じタイミング(昨年はガレス・ベイルが後半6分、今年はルイス・スアレスが同4分)で決まっているのだ。これはただの偶然とは思えない一致である。

 以前からアルゼンチンのチームは戦う姿勢や戦術的な適応能力、フィジカルコンタクトの強さ、劣勢の状況下における粘り強さといった特徴を武器としてきた反面、ボールを介したプレーが輝きを放つことはなかった。現在の同国のフットボールにおいては、他の時代のようにボールが重要視されていないからだ。

 だが、そのような性格を持つチームは、多数のタイトルを獲得してきたスター選手をそろえ、ボールポゼッションを通して世界中のファンを魅了し、リスペクトを集めるバルセロナのようなライバルに対して、実力差以上に大きなアドバンテージを与えることになる。

 スコアの均衡が破れ、とりわけスアレスが2−0と突き放す追加点を決めた時点で、まだ試合は40分以上残っているにもかかわらず、実質的に勝負は決した。その後はバルセロナがメッシやネイマール、アンドレス・イニエスタ、ブスケッツ、ジェラール・ピケらのハイレベルなプレーを披露しながら、さらなるゴールを目指して攻め立てる一方的な展開に終始している。

別次元のレベルにあるバルセロナ

クラブW杯3度の優勝は、近年のバルセロナが他のライバルを超越してきたことの証明だ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 前半を0−1で終えた時点で、ガジャルドは対戦相手がバルセロナ以外のチームであれば理に適った采配だと言える選手交代を行った。ロドリゴ・モラとレオナルド・ポンシオに代えてルチョ・ゴンサレスとゴンサロ“ピティ”マルティネスを投入したのは、よりテクニカルな選手を起用することでボールポゼッションの時間を増やすこと、そして警告を受けていたポンシオの退場を避けることが目的だった。

 だが実際は、この交代策によって相手の中盤にかけるプレスの圧力が低下し、ほどなくスアレスの追加点が生まれてしまう。こうなるともはやリーベルにできることはほとんどなく、諦めが選手たちの心身を支配していくことになった。

 他大陸の王者とは別次元のレベルにあるだけでなく、間違いなく地球上で最も質の高いフットボールを体現している現在のバルセロナは、あらゆる面で世界王者にふさわしいチームだ。現在のバルセロナと比較し得るのはバイエルン・ミュンヘンのみで、あとは最高のパフォーマンスを発揮した時のマンチェスター・シティやパリ・サンジェルマンくらいしかない。

 クラブW杯における3度の優勝は、近年のバルセロナが他のライバルを超越してきたことの証明だ。また過去9大会のうち8回はヨーロッパ勢が優勝しているという事実は、ヨーロッパのビッグクラブと他地域のクラブの間に戦力的、経済的に大きな格差があることを物語っている。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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