欧州野球界を取り巻く日本選手の現状=来春から新リーグ発足で新たな展開へ

ベースボール・タイムズ

池永氏が昨年在籍したスペインのバルセロナ。17人中9人がスペイン以外の出身とのこと 【写真提供:池永大輔】

 今年10月、欧州野球協会がプロ野球リーグ「ユーロ・リーグ・ベースボール(ELB)」の発足を正式に発表。世界大会「プレミア12」の開催、五輪競技復活への動きが活発になってきている中で、欧州野球界も新たな発展、拡大を推し進めている。この新リーグ・ELBの内容から欧州野球界における日本人選手の現状、そして今後の未来について、欧州を舞台に選手兼代理人として活動しているの池永大輔氏の話を聞きながら考察してみたい。

5カ国10チームが参加

 欧州大陸を横断して実施される「ユーロ・リーグ・ベースボール(ELB)」。構想がありながらも長年、各国の足並みがそろわずに実現に至らなかったが、ウィム・バンデンハーク会長(福岡ソフトバンク所属のリック・バンデンハークの父)の下、各所への調整を続けてひとまずは来春、2016年4月4日の開幕までこぎ着けた。

 初年度の参加チームは、計5カ国10チーム(ドイツ3、オランダ2、イタリア2、フランス2、チェコ1)。4月4日から8月25日までの間に1チーム週2試合のペースで試合を行い、その後上位4チームによるプレーオフが行われる。各チームはそれぞれの国の国内リーグ戦も同時に進行し、週の頭に「ELB」を戦い、後半は国内リーグ戦に臨む形となる。動画サイトYouTubeに専用チャンネルを設けてライブ中継やハイライト映像を流す予定。これまでも欧州野球連盟主催の「ヨーロッパ・カップ」という欧州王者を決める大会があったが、今回の「ELB」はそれをさらに進化させた意欲的な試みとなる。

 ただ、課題は少なくない。今回参加を決めたアムステルダム(オランダ)、ボローニャ(イタリア)、レーゲンスブルグ(ドイツ)などは、欧州内でも資金的に恵まれたビッグクラブとして有名で、移動、宿泊等にかかるコスト、選手数の確保などの問題をクリアできるチームのみがELBに参戦できるとも言える。今後、チーム数、試合数の増加など、さらなる規模拡大を目指しているが、どこまで実現できるか未知数な部分も残る。

日本人投手は欧州で高評価も…

 それでも新リーグに対する期待は大きい。近年、徐々に盛り上がってきているとは言え、欧州における野球はあくまでマイナースポーツ。サッカー、ラグビー、バスケットボール、ハンドボールといった人気スポーツの陰に隠れてしまっている。今回の新リーグ「ELB」は、五輪競技への復活も含めた野球人気の拡大・定着、競技人口の増加という使命も負っている。

 では今後、その欧州野球界で活躍する日本人選手は出てくるのだろうか。06年の渡欧以降、ドイツ、フランス、スペインのチームでプレーし、フランス代表のアシスタントコーチも務めた経験を持つ池永氏に聞いた。

「日本に欧州野球の情報が入ってこないのと同じで欧州にも日本野球の情報は入ってこないです。でも、G.G.佐藤さんとか、数は少ないですけど欧州でプレーした日本人はいますし、今年もいろいろな国を含めると10人ぐらいはいました。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などの国際大会などもあって、欧州のチームも日本人選手に対して興味は持っています。特にピッチャー。日本の投手はコントロールが良いという印象は共通していますし、需要はあります。ただ、その需要に供給がマッチしないというのが現状ですね」

 西武を戦力外となったG.G.佐藤が12年にボローニャ(イタリア)に移籍したが、1年間のプレーのみ。欧州における日本人選手の評価は、情報の不足もあってそれほど高くない。自ら現役選手としてプレーを続けると同時に、他の選手の代理人業も行っている池永氏は、日本人選手の越えるべきハードルを次のように解説する。

「給料にしても、欧州のチームはそれほど多くは払えない。各自で条件は違いますが、だいたい日本の独立リーグと同じくらいでしょう。住居や日本へのフライト代などは別で支給されますが、そういう条件ではNPB出身の選手に紹介しても折り合うのがなかなか難しい。自分のところにも毎年、NPBのチームから戦力外になった選手から問い合わせが来ますが、特に家族がいたりすると難しい面はありますね」

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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