バルセロナの圧勝で幕を閉じたクラシコ いまだ明確な方向性が見えないレアル

混沌とした状況を迎えるレアル・マドリー

今季から指揮をとるラファエル・ベニテス。明確な方向性が見えないまま、クラシコを迎えてしまった 【写真:ロイター/アフロ】

 スタンドには抗議の意を示す白いハンカチが多数揺れ動き、「フロレンティーノ、ディミシオン(辞めろ)!」コールが響き渡った。ファンの怒りはフロレンティーノ・ペレス会長が獲得してきた選手たちよりも、今季の監督にラファエル・ベニテスを選んだことに対して向けられているようだった。

 前監督のカルロ・アンチェロッティがディフェンスラインを押し上げてボールポゼッションの向上に努めたのとは対照的に、これまでベニテスは戦術的にジョゼ・モウリーニョ時代への回帰を目指すような采配を見せてきた。だが、彼の指揮下ではガレス・ベイルをどのポジションで起用すべきか、イスコとハメス・ロドリゲスを両サイドに起用した4−4−2にすべきかといった議論が繰り返される中、けが人とローテーションへのこだわりからシステムがころころと変わってきた。格下相手に大量得点を挙げた試合もあったものの、いまだ明確な方向性は見えないままクラシコを迎えてしまったのだ。

 今季初黒星を喫した代表ウィーク前の第11節セビージャ戦(2−3)からすでに、クラシコで大敗する兆しは見えていた。ウナイ・エメリ率いるセビージャ相手になすすべなくゲームを支配されたチームが、ホームとはいえセビージャをはるかに上回るバルセロナに対抗できるわけがなかったのだ。

 けが明け間もないハメス・ロドリゲスは動きが重く、ベイルはプレーに絡むことすらできず、パスを受けられないクリスティアーノ・ロナウドはカリム・ベンゼマとともに前線で孤立し続けた。ダニーロは攻守に散々な出来で、ルカ・モドリッチは球際で戦えず、トニ・クロースはミスが目立ち、ディフェンスラインはバルセロナの厳しいプレスを受け、混乱し続けた。この日のレアル・マドリーはピッチ上のあらゆるエリアにおいて、完膚なきまでに打ち負かされたのである。

 ベニテスが実質的に失格の烙印(らくいん)を押され、ペレスは支持を失い、近年ファンの不満のスケープゴートとされてきたイケル・カシージャスもいなくなった今、レアル・マドリーはこれまで以上に混沌(こんとん)とした状況を迎えることになるだろう。

バルセロナを待つ明るい未来

90分間相手を圧倒し続け勝利したバルセロナ。メッシの復帰など、明るい未来が待っていると言えるだろう 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 一方、バルセロナには明るい未来が待っている。クラシコの大勝はチームにさらなる自信をもたらすだろう。メッシは復帰し、1月にはアルダ・トゥランとアレイクス・ビダルの登録も可能になる。だが、何より大きいのはチームが数年前から模索し続け、シャビの退団後はもう不可能と思われていた最高のプレーを再び取り戻したことだ。

 過去にバルセロナは、ベルナベウのクラシコにて5−0や6−2といった歴史的大勝を収めた経験がある。だが今回の4−0ほど、試合開始から終了まで90分間を通して、ピッチのあらゆるエリアで相手を圧倒し続けたことはなかった。

 だからこそバルセロナにとって、今回の勝利は特別な価値があるのだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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