世界水泳は最終日へ、今日本ができること 星・渡部が生んだ流れに乗り切れるか

田坂友暁

金2つも目標のメダル「10」には遠く

渡部香生子が今大会メダル2つの活躍を見せるも、日本チーム全体としてはメダル3個と低迷している 【写真:ロイター/アフロ】

 ロシア・カザンで行われている水泳の世界選手権。競泳7日目を終えて12個の世界新記録が誕生し、大会は大いに盛り上がりを見せている。ロシアの観客からは、新記録が出る度に大声援が選手に送られ、7日目に米国のケイティ・レデッキーが800メートル自由形で従来の記録を3秒61も縮める8分07秒39の世界新記録を樹立した瞬間には、会場中でスタンディングオベーションが沸き起こった。

 日本代表は、後半戦が始まった競泳5日目の女子200メートルバタフライで、星奈津美(ミズノ)が2分05秒56で金メダルを獲得。続く6日目には、女子200メートル個人メドレーで銀メダルを獲得していた渡部香生子(JSS立石)が、女子200メートル平泳ぎで世界記録保持者のリッケ・ペダーセン(デンマーク)を破って金メダルを奪う活躍を見せた。

 しかし、大会前に「金メダルを含む10個のメダル」を目標に掲げていた日本に対して、最後日を前にメダル3個という状況に、五輪前年の世界選手権を戦う厳しさが襲いかかっている。

“ひとつが良いと、ひとつが悪い”前半戦

男子100メートル平泳ぎでメダルが期待されていた小関也朱篤は、決勝に進むことができず 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「調子が良い時はすごく流れに乗っていけるが、うまくいかなかった時、とてももろい気がする。目標先行のような形になっており、思い通りにいかなかった時の崩れ方が大きい」

 大会4日目を終えて、平井伯昌監督が少し苦しそうにこう話す。大会初日、渡部が200メートル個人メドレーの準決勝で日本記録を出して決勝に進出し、清水咲子(ミキハウス)も同種目で自己ベストを更新。さらに100メートルバタフライに出場した星も自己ベストを出すなど、順調な滑り出しかと思われた。ところが、同日の男子100メートル平泳ぎでメダルが期待されていた小関也朱篤(ミキハウス)が決勝に進むことができない。

 2日目に渡部が銀メダルを獲得し、「これは良い流れができたか」と思われた翌3日目、入江陵介(イトマン東進)が100メートル背泳ぎで6位となってメダルを逃す。そして、前回のバルセロナ大会の400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した瀬戸大也(JSS毛呂山)は、4日目の200メートルバタフライで6位に沈み、同日の200メートル個人メドレー準決勝では「ちょっとビックリした。何がどうなっているのかが分からない」と2分00秒05というタイムで準決勝敗退を喫するという状態に陥った。

 良い結果の流れに乗りたいところで、期待されていた主力選手が結果を残せない。ひとつが良いと、ひとつが悪いという、プラスとマイナスが同じ分だけ、しかも同日に生まれてしまうことで、いまひとつ勢いに乗ることができないまま前半戦を終了してしまった。

 これをひと言で「五輪前年の世界水泳選手権の厳しさ」と表すことは可能だが、優勝記録を見ているとそれほど全体的なレベルが跳ね上がっているわけではなく、日本代表チームが掲げていた「メダル10個」も絵に描いた餅ではないのが分かる。だが、現実にはメダル数もそうだが、記録的にも自己ベストで泳いだのが5人という状況。これほどまでに厳しい戦いが続いている答えは、チームが良い流れに乗れないのではなく、『流れをつくれなかった』ことではないだろうか。

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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