【浦和レッズ】耳の痛い言葉も「すべて愛情」…伊藤敦樹は覚悟をもって浦和を引っ張っていく「まだクラブの顔には…」
【©URAWA REDS】
「去年、日本代表に選ばれ、初めてJリーグのベストイレブンにも選出されたので、今季はそれだけ期待もされているだろうなって。当然、僕に課される周囲のハードルは高くなる」
そのあふれる意欲とは裏腹に思うようなスタートは切れなかった。
ペア マティアス ヘグモ新体制で任されたポジションは、従来のボランチから1列前に出たインサイドハーフ。わずか数メートルの移動ではあるが、ポジショニングも変われば、役割も変化した。
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まだファン・サポーターの期待には応えられていない――。
頭の中がすっきり整理されてきたのは、4月28日の名古屋グランパス戦からだ。試合の2日前に日本代表に初選出される直前のプレーなどを見返し、持ち味を再確認した。
「普段、昔の映像はあまり見ないのですが、『こういうプレーが俺の良さだな』と思いました。試合に臨むメンタルを含め、気づいたことは多かったですね。その直後の名古屋戦はチャンスに多く顔を出し、ゴール前でのプレーも増えたと思います。何よりも自分の良さが出せて、チームが勝てたのは大きかった。あとは個人の結果だなって」
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「試合が終わってから、『また左か』と思いました(J1リーグでは23年に2得点、22年に2得点を記録)。フィーリングがいいのかもしれませんね。力が入らないのでコースを狙えるんですよ。そろそろ右足でも決めたいです」
笑顔を浮かべ、冗談まじりに振り返るほど、心の余裕が生まれている。
「やっと結果を出せ、吹っ切れた感じです。もがきながらもやり続けていれば、ゴールは生まれると思っていましたが、正直、少しほっとしています。難しさを感じていたシーズンの立ち上がりだったので、得点後はこみ上げるおもいもありました」
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同じポジションでピッチに立てるのは伊藤を含めてふたりだけ。ベンチに座るチームメートもいれば、メンバー入りできない選手もいる。チャンスをもらえていない仲間の心情を想像すると、はがゆかった。
「個人の結果を出さず、試合にも勝てていないとなれば、『なんでだよ』と思うのはプロ選手として、当然の気持ちです。僕も人ですから、そういう雰囲気は分かります。このクラブで試合に出る以上、責任を持たないといけない。僕はとにかく結果を出すしかなかった」
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リーグ初ゴールを決めるまでのプレーがすべて低調だったわけではない。得点に関与しなくても貢献した試合はいくつもあったが、ノーゴールのレッテルは貼られたままだった。それでも、結果だけで評価する人たちに負の感情を覚えたことはない。浦和の街で育ち、幼少期からレッズを追いかけてきたからこそ分かるという。
「見ている側からすれば、言いたくなるのも当たり前。昔、僕自身もそういうときはありました。他のどこよりも熱く応援しているからこその声です。プロ選手として、厳しい意見から目を背けると、サッカー選手として成長できなくなります。風当たりの強さは感じましたけど、それも含めて愛情だと思っていました。期待されている証かなって」
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「すべて愛情ですね」
すでにレッズでは、J1リーグで111試合出場。名実ともにチームの核となりつつあり、自らの置かれている立場も理解している。積極的に声を出し、周りを鼓舞するタイプではないが、ピッチ外でも果たすべき役割はあるという。
「中心選手の責任と覚悟を持って闘わないといけない。背中で示していきたいです。目の前に試合に集中して勝ち続ければ、また日本代表も見えてくると思っています。僕もレッズを引っ張っていく立ち位置になってきました。そこにやりがいもすごく感じますが、まだクラブの顔にはなり切れていません。もっと結果が必要です」
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物心ついたころからゴール裏で強いレッズを見て育ってきた伊藤は、積年のおもいを口にする。
「チームを勝たせる選手になり、タイトルを獲りたい。リーグで優勝したときには、自分がレッズの『象徴』になっていたいですね」
高い壁をひとつ乗り越え、またたくましくなったようだ。いま背番号3の背中は、自信がみなぎっている。
(取材・文/杉園昌之)
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