南米最強はチリか、アルゼンチンか コパ・アメリカ決勝は期待通りのカードに

常に勝利を目指してきた2チーム

開催国のチリは対戦相手に恵まれたこともあり、メンバーやシステムを調整しながら決勝まで勝ち上がってきた 【写真:ロイター/アフロ】

 勝つべきチームが勝ち残った。現地時間7月4日にサンティアゴのエスタディオ・ナシオナルで行われるファイナルに駒を進めたのは、コパ・アメリカにおける2つのベストチーム、チリとアルゼンチンだった。同決勝の勝者は2017年にロシアで行われるコンフェデレーションズカップへの出場権を手にすることになる。

 この2チームは常に勝利を目指し、攻撃を仕掛け、対戦相手より長い時間ボールを支配し続けてきた。プレーの安定感という点ではおそらくアルゼンチンよりチリの方が上ながら、アルゼンチンも自分たちのリズムでプレーできている時間帯にゴールを奪う効率性を発揮してきた。

 両者の差を生んだのは、チリの方がグループリーグの対戦相手に恵まれていたからだろう。チリがグループAで対戦したのは、エクアドル(2−0)、ボリビア(5−0)、そして主力の大半を7月のゴールドカップに向けて温存してきたメキシコ(3−3)といった格下ばかりだ。そのためチリにはメンバーやシステムを調整しつつ、自分たちのプレーを見いだしていく余裕があったのである。

 それでもまだ2人のスター選手、アルトゥロ・ビダルとアレクシス・サンチェスは所属クラブで厳しいシーズンを戦い抜いた直後ということもあり、期待されていたほどの活躍を見せることができていない。

プレー以外で生じた問題

ビダル(写真)の飲酒運転やハラの挑発行為など、チリはピッチ外での問題に悩まされた 【写真:ロイター/アフロ】

 一方、クリエーティブ性の鍵を握る中盤ではチャルレス・アランギス、そして現代フットボールにおける絶滅危惧種であるクラシカルな10番、ホルヘ・バルディビアが非常に良いパフォーマンスを見せている。

 昨年はホルヘ・サンパオリ監督と対立する時期もあったが、今やバルディビアは準決勝が終わった時点で大会の最優秀選手と言われるまでに不可欠な存在となっている。彼の両足から送られるパスのほぼ全てが相手守備陣を深くえぐっているのだ。

 左右両サイドに中央からと、チリはあらゆるゾーンから攻撃を仕掛ける魅力的なチームながら、時にその攻撃的過ぎる姿勢が相手のカウンターを招く原因にもなっている。また高さに欠ける最終ラインは空中戦の対応力に欠け、セットプレーやハイクロスに際して長身選手のマークに苦しんでいる。

 しかも大会中にはプレー以外の問題も生じてきた。開幕後に初めて与えられた半日のオフには交通事故に巻き込まれたビダルが飲酒運転で逮捕され、彼をチームから追放すべきかどうかの議論が繰り広げられた。

 そしてこの騒動が落ち着いたと思ったら、今度はウルグアイとの準々決勝(1−0)の後半にゴンサロ・ハラがエディンソン・カバーニの尻に指を入れた挑発行為が問題視され、2試合の出場停止処分により大会を去ることになった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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