南米最強はチリか、アルゼンチンか コパ・アメリカ決勝は期待通りのカードに

準々決勝までは苦戦を強いられる

アルゼンチンはPK戦で勝利を収めた準々決勝まで苦戦を強いられた 【写真:ロイター/アフロ】

 チリとは対照的に、アルゼンチンは粘り強い守備が特徴の難敵パラグアイとウルグアイが同居する厳しいグループを勝ち上がってきた。

 パラグアイとの初戦において、ヘラルド・マルティーノ率いるアルゼンチンは前半のうちに最も困難だと思われていたことを実現した。イタリアのカテナチオに匹敵するパラグアイの堅守をこじ開け、前半のうちに2点のリードを奪ったのだ。

 だがゴールラッシュすら期待された試合はその後に展開が一転し、終了間際にパラグアイの同点ゴールが生まれる驚きの結末を迎える。それはラモン・ディアス監督とパラグアイの選手たちにとって、偉業に近い同点劇(2−2)だった。

 長身選手をそろえ、得点力の高いセットプレーが脅威であるウルグアイとの第2戦も大苦戦を強いられながら1−0で辛勝。格下ジャマイカとの第3戦は大勝が期待されたが、実際は内容の乏しい1−0の勝利に満足せざるを得なかった。

 それでも全ての試合で主導権を握ってきたアルゼンチンは、強豪コロンビアとの準々決勝でもやはりゲームを支配した。今大会のコロンビアはラダメル・ファルカオ、ジャクソン・マルティネス、カルロス・バッカ、テオ・グティエレスら優秀なストライカーを多数擁しながら、4試合でわずか1ゴール、それもセンターバックのジェイソン・ムリージョが決めた一発のみに終わる期待外れのチームだった。それがアルゼンチン戦では90分間無失点で耐え続ける粘り強さを見せたのだが、最後はPK戦で涙をのんでいる。

チリにとっては唯一無二のチャンス

代表ではタイトルに恵まれていないメッシだが、もし今大会で優勝すればバロンドールの受賞が決定的となる 【写真:ロイター/アフロ】

 この試合までのアルゼンチンは、優れた選手たちが巧みにボールを支配しながら攻撃を仕掛けるハイレベルなプレーを印象づけた反面、実際に相手ゴールを脅かしたビッグチャンスは数えるほどしか作れていなかった。

 それがパラグアイとの準決勝ではとうとうリオネル・メッシとハビエル・パストーレをつなぐホットラインを見いだし、6−1の大勝とともに全ての疑念を振り払うに至った。

 そして今、両チームにとって勝負の時が訪れる。これまでタイトルを獲得した経験がないチリにとって、今回の決勝は唯一無二のチャンスだ。現在ほど多くのタレントに恵まれ、かつ自国開催の大会で決勝を戦えるチャンスなど、この先いつ訪れるか分からない。

 一方のアルゼンチンにとっても、4日の決勝はガブリエル・バティストゥータ、オスカル・ルジェリ、ディエゴ・シメオネらを擁した1993年のエクアドル大会以来の国際タイトルを獲得するビッグチャンスとなる。

 それはアルゼンチン代表でのタイトルを熱望してきたメッシも同じだ。バルセロナであらゆるタイトルを獲り尽くしてきた彼にとって、コパ・アメリカ優勝の有無は2015年のFIFAバロンドール獲得を決定づける意味も持つことになる。

 こうした背景に加え、チリとアルゼンチンは長年ライバル関係を築いてきた隣国同士でもある。期待通りのカードとなった4日の決勝にて、いよいよ南米最強のチームが決まる。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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