タフな全仏OP、日本勢の注目選手は!?=杉山愛コラム「愛’s EYE」
男子は伊藤の飛躍に期待
杉山愛さんが注目する伊藤竜馬。全仏オープンでは立体的に攻めることができるか 【Getty Images】
日本勢は男子の錦織圭選手(日清食品)、添田豪選手(GODAIテニスカレッジ)、伊藤竜馬選手(北日本物産)、女子の奈良くるみ選手(安藤証券)、土居美咲選手(ミキハウス)が本戦から出場します。
日本選手にとって、クレーコートの全仏は四大大会でもっともタフなサーフェスと言えます。特に男子ですが、添田選手、伊藤選手は、どちらかというとフラット系のボールからの展開が中心なので、どれだけクレーコートにアジャストしていけるかが、好成績を残す鍵になります。
私の現役時代を振り返っても、クレーだからといって、いわゆるクレーのテニスに全面的に変えていくのは無理です。幸い、全仏のサーフェスは硬めで球足は速く、ハードコートに似た展開でもポイントを取っていくことができるので、本来のテニスを見失わずに、上手にアジャストしてほしいですね。
フットワーク、攻め方、気持ちの持ち方と、少しずつのアジャストでテニスががらっと変わります。これがうまくいけば、日本の選手たちが大きく飛躍できる大会になりうると思います。
その点で注目したいのは伊藤選手です。今はヨーロッパに拠点を置く伊藤選手ですが、そのことがクレーのテニスというより、彼のテニス全体のレベルを底上げすることにつながるのは間違いありません。
どちらかというと単調になりがちなテニスですが、クレーコートでは3次元的、立体的に攻めていくことも必要です。そこに取り組むことが、彼のテニスをつくる上でも重要なプロセスになると思います。
奈良は“あと一歩”をどう詰めるか
女子では、ビッグネームとも互角に戦えるようになった奈良くるみに注目 【Getty Images】
グラウンドストロークに安定感があって、フットワークも良く、特に前後の動き、コートの中への入り方、そこでのボールのとらえ方というのは素晴らしいと思います。見ていると、彼女のやりたいことが手に取るように分かりますし、そこが彼女の頭の良さを表しているように思います。
クレーコートではビッグショットがかき消されてしまうので、他のサーフェス以上に展開力が必要になります。その展開力を磨くことが、彼女がさらに上に行くために必要なステップになると感じます。
テニスの内容的には、トップ10クラスの選手――エレナ・ヤンコビッチ選手(セルビア)やアザレンカ選手との試合を見ても、奈良選手が取っていてもおかしくない接近したゲーム展開がありました。でも、その1本が取り切れないというのが現状です。彼女のテニスがそこまで来ているのは確かです。本当に近づいているけれど、その1本を取る難しさというものが、まだあると思います。
そのための工夫、勝負する気持ち、攻めのパターンなどをもう一つ習得できると、ビッグネームに勝つ日も近いと思います。(昨年の)ウィンブルドンでビーナス・ウイリアムズ選手(米国)と対戦した試合もそうでしたが、決して大きな差があるような内容ではなかったと思います。本当にもう少し、あと一歩だと思うので、そこをどう取るかが今後の彼女の課題です。それができた日には、トップ50、トップ30がまた見えてくると思います。それを、この全仏という舞台で実現させてもらいたいなと思います。
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