クレーコートで戦う錦織選手に大きな期待=杉山愛コラム「愛’s EYE」

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戦いの舞台はヨーロッパへ

4月下旬のバルセロナからクレーコートシーズンが始まる錦織選手。今年の活躍に大きな期待 【Getty Images】

 カナダ・バンクーバーでの「デビスカップ」から、米国インディアンウェルズの「BNPパリバ・オープン」、米国マイアミの「マイアミ・オープン」と錦織圭選手が転戦した北米シリーズは終わりました。次は4月下旬にスペイン・バルセロナで行われる「バルセロナ・オープン・バンコ・サバデル」から始まる、ヨーロッパのクレーコートでの戦いとなります。

 私はクレーコートシーズンの錦織選手をすごく楽しみにしています。1年前のバルセロナでは優勝、マドリードの大会では準優勝。ランキングを考えれば、去年獲得したポイントをディフェンド(前年の同大会と同じ程度の成績を取り、ポイントを維持すること)するのは決して楽ではないと思いますが、昨年の全仏オープンは1回戦敗退だったので、クレーコートシーズンをトータルで考えると、そこまでディフェンドのことを考えながら戦う必要はないとも言えます。

 去年のクレーコートの戦いで、記憶に鮮明に残っているのは、やはりマドリードの決勝、ラファエル・ナダル選手(スペイン)との試合ですね。

 私もテレビに見入ってしまいました。このテニスができれば、全仏も当然取れる、と思わせるくらいの試合でした。惜しくもふくらはぎのケガと腰痛で、第3セット途中リタイアという形になりましたが、クレーコートでの錦織選手にこれほど可能性を感じたのは初めてでした。

ナダルを呆然とさせた錦織

 しばらくハードコートでの試合が続いたので、フットワークの違いなどクレーコートへのアジャストも必要ですし、ラリーが長く続くので体力的な部分も重要です。また、最も忍耐力が求められるサーフェスなので、我慢強さと同時にメンタルの持久力も必要だと思います。そこはやはり、じっくり取り組む必要があるでしょう。

 それでも、どちらかというと芝(グラスコート)よりもクレーの方に、私は彼の可能性を感じます。芝は、ビッグサーバーがさらに脅威的なサーブを手に入れてしまうサーフェスです。サーフェスの特性で、リターンの得意な錦織選手にしても、どうしたって届かないサーブというのが出てきてしまうのです。

 一方、クレーなら彼の身体能力、特に瞬発力と動体視力があれば、取れないサーブはないんじゃないかという気がします。

 クレーコートでは3次元=3Dのテニスが必要です。ループボールであったり、アングルショット、ドロップショットを駆使して立体的に組み立てていくのがクレーのテニスです。そういう「技」を一番持っているのが錦織選手ではないかと思うのです。

 もちろん、ナダル選手のフォアハンドのトップスピンはクレーでは特に脅威となりますが、錦織選手はこの“クレーコート・キング”にも、速い攻めと幅のあるテニスで対抗していくことができると思います。そのことを見せてくれたのが昨年のマドリードの決勝でした。ナダルの呆然としたような表情、そしてコートサイドで見守るコーチのトニ・ナダルさんの「これは厳しいな」という表情が私の脳裏に焼き付いています。

 去年のクレーコートシーズンの最中、「今まではなかなか成績を出せなかったけれど、今回はクレーでもできるという手応えを感じました」というコメントをもらいました。楽しんでいる様子も伝わってきたし、なによりクレーのテニスをものにしたんだなと感じました。

 それだけに、今年のクレーコートシーズンはさらに楽しみです。今からワクワクしますね。

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