早実・清宮幸太郎が見せつけた大物ぶり スターの資質十分、目標の80本塁打へ
公式戦デビュー3試合目で豪快な一発を放った清宮。対戦相手も「噂通りの怪物でした」と舌を巻く 【写真=斎藤豊】
球場ほぼ満員、春では異例のフィーバー
怪物を見るべく、神宮第二球場にはほぼ満員の観衆が詰め掛けた 【写真=斎藤豊】
「納得できるのは本塁打。やっぱりダメですね(苦笑)」
もちろん、チームの勝利に貢献することを大前提とした発言だが、15歳とは思えない風格がある。さらには「1年生だからといって物おじせず、上級生を引っ張っていきたい」と胸を張った。
王貞治が甲子園優勝投手となったのは2年の春(1957年・第29回選抜)。荒木大輔の“大ちゃんブーム”が巻き起こったのは1年の夏(80年・第62回選手権)。斎藤佑樹の“ハンカチ王子”が社会現象となったのは3年の夏(2006年・第88回選手権)。清宮はまだ1年春だ。超異例と言えるフィーバーにも「これからこういう環境でやっていかないといけない人間だと分かっているので、大丈夫です」と言った。脚光を浴びる現実を、宿命として受け止めているのだから、やはりタダ者ではない。
4月18日のデビュー3戦目(対関東一高・準々決勝)。ついにその時が来た。神宮第二球場は定員(5600人)に迫る5500人の大観衆。2階席もビッシリ埋まり、報道陣もテレビカメラ7台を含む約50人が詰め掛け、普段は開放しない三塁カメラ席も開けられる“清宮シフト”が敷かれた。
東京都高校野球連盟の関係者も「夏、秋はあっても春でこんなに入ることはない」と目を丸くさせれば、試合中、連盟ホームページのアクセスも集中しダウン寸前だったというから驚きだ。
重圧を楽しむ大物ぶり
「春の大会で1本出たのは大きい」とホッとした表情を見せる清宮 【写真=斎藤豊】
観衆のお目当てはもちろん清宮。第1打席、第2打席とライトフライ。2打席目はいい角度で上がると、柵越えを期待するスタンドは思わずどよめいた。
1対5で迎えた5回表。早実は2点をかえし、1死二、三塁で清宮が3打席目に向かう。過去2打席は2球目のファーストストライクを強振。1球目、変化球のボール球を見逃し「次は変化球はないかな」と、真っすぐ一本に絞る。狙い澄ました内角の直球をたたくと、打球はバックスクリーン右へ一直線。ドラフト候補でもある関東一高の中堅手・オコエ瑠偉(3年)も「噂通りの怪物でした」と、一歩動いたところで諦める推定130メートル弾だった。清宮の逆転3ランも早実投手陣が打ち込まれ、11対18で敗退。清宮は試合後に開口一番「負けたことが一番、悔しい」と言った。
ただ、13打席目に出た初本塁打に「春の大会で1本出たのは大きい」と白い歯を見せた。この日も一連のフィーバーについて問われたが「重圧? 意識しないこともないが、楽しい。付き物だと思っている」と大物ぶりを発揮。
「目標は高い方がいいので、(高校通算)80本くらいはいきたい」
新怪物には、スターの資質が詰まっている。
(文・岡本朋祐)
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