競泳・日本選手権に見た収穫と課題 共通するのは「本当のメンタルの強さ」
世界選手権カザン大会に臨む競泳日本代表は25人と、少数精鋭のメンバーが選ばれた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
大会終了の翌日、代表発表記者会見で発表されたロシア・カザンで行われる第16回世界水泳選手権の代表選手は、全部で25人。世界選手権初出場の選手が10人いるという、ベテランと若手が入り交じる少数精鋭の派遣メンバーとなった。
14年ぶりに中学生の代表選手が登場するという明るい話題もあったが、ベテランの勝負強さの裏に、本当のメンタルの強さとは何かが見えてくる大会でもあった。
少数精鋭で世界と戦えるメンバー
11年前、アテネ五輪の代表選手は男子は9人、女子が11人のたった20人だったが、結果は五輪で当時最多となる8個のメダルを獲得。そのときと状況は似ている。人数だけを見れば物足りない部分はあるかもしれないが、個々のレベルを見ると、少数精鋭という言葉が似合う代表メンバーだ。
池江と持田のライバル関係が他選手に刺激を与える
池江(左)と持田のライバル関係が、ほかの選手たちにも刺激を与えることになる 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
面白いエピソードがある。昨年、中学2年生だった池江は、全国中学校水泳競技大会の50メートル自由形で日本中学新記録25秒60を樹立し、持田は200メートル自由形で同じく日本中学新記録の1分59秒90を出していた。その状況で2人が対決する大会3日目の100メートル自由形決勝を迎え、中学記録となる55秒63で制したのが持田だった。
池江と持田は、その4日後に行われた第6回ジュニアパンパシフィック選手権(米国・マウイ)に出場。調子が上がらず結果が振るわなかった持田に対し、池江は全国中学で敗れた100メートル自由形で持田が持つ中学記録を塗り替える55秒60を記録した。
これが持田の負けん気に火をつけることになる。ジュニアパンパシフィック選手権からさらに2週間後の長崎国体で、調子が上がらないと話していたが、それでも「記録が塗り替えられたことがとにかく悔しかった」と持田が奮起。55秒54を記録し、再度池江の中学記録を塗り替えたのである。
お互いに刺激し合う姿は、まさに萩野と瀬戸の関係を見ているようだ。今大会でも200メートル自由形で2位に入ったのは持田。池江は中学新記録で3位だったにも関わらず「持田さんに負けて悔しい」と涙を流すと、それを笑顔で慰める持田の姿があった。反対に100メートルでは3位に入って笑顔を見せた池江に対し、8位だった持田は涙をこらえるような様子でミックスゾーンの取材に応えた。
勝負の楽しさ、負けることの悔しさ、勝つことのうれしさ。感情を素直に表現して切磋琢磨(せっさたくま)する2人の姿は、きっと多くの代表選手たちの「刺激」になることだろう。