競泳・日本選手権に見た収穫と課題 共通するのは「本当のメンタルの強さ」

田坂友暁

世界選手権カザン大会に臨む競泳日本代表は25人と、少数精鋭のメンバーが選ばれた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 リオデジャネイロ五輪を翌年に控えた今シーズン、世界と戦う選手たちを選考する第91回日本選手権水泳競技の競泳競技が東京辰巳国際水泳場で、4月7〜12日の6日間で行われた。

 大会終了の翌日、代表発表記者会見で発表されたロシア・カザンで行われる第16回世界水泳選手権の代表選手は、全部で25人。世界選手権初出場の選手が10人いるという、ベテランと若手が入り交じる少数精鋭の派遣メンバーとなった。

 14年ぶりに中学生の代表選手が登場するという明るい話題もあったが、ベテランの勝負強さの裏に、本当のメンタルの強さとは何かが見えてくる大会でもあった。

少数精鋭で世界と戦えるメンバー

 全体的に見れば、個人種目での派遣標準記録を突破した選手は男子が9人、女子が4人という状況。数字的には物足りないかもしれないが、男子の萩野公介(東洋大)や瀬戸大也(JSS毛呂山)、入江陵介(イトマン東進)、小関也朱篤(ミキハウス)に、ヒジの手術から復帰を果たした立石諒(ミキハウス)を加えた選手たちは、世界選手権でも十分にメダル争いができる実力を持っている。また、女子の渡部香生子(JSS立石)や金藤理絵(Jaked)、星奈津美(ミズノ)らも、世界大会の経験は豊富で、メダル争いを十分期待できる選手たちである。

 11年前、アテネ五輪の代表選手は男子は9人、女子が11人のたった20人だったが、結果は五輪で当時最多となる8個のメダルを獲得。そのときと状況は似ている。人数だけを見れば物足りない部分はあるかもしれないが、個々のレベルを見ると、少数精鋭という言葉が似合う代表メンバーだ。

池江と持田のライバル関係が他選手に刺激を与える

池江(左)と持田のライバル関係が、ほかの選手たちにも刺激を与えることになる 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 メダル争いができる代表メンバーの勢いを後押ししそうなのが、世界選手権に初出場する10人のメンバー。なかでも、2001年の世界選手権福岡大会で代表となった春口沙緒里以来となる、中学生で日本代表入りを果たした、池江璃花子(ルネサンス亀戸)や、池江のライバルで今年高校1年生になった持田早智(ルネサンス幕張)の2人には注目したい。

 面白いエピソードがある。昨年、中学2年生だった池江は、全国中学校水泳競技大会の50メートル自由形で日本中学新記録25秒60を樹立し、持田は200メートル自由形で同じく日本中学新記録の1分59秒90を出していた。その状況で2人が対決する大会3日目の100メートル自由形決勝を迎え、中学記録となる55秒63で制したのが持田だった。

 池江と持田は、その4日後に行われた第6回ジュニアパンパシフィック選手権(米国・マウイ)に出場。調子が上がらず結果が振るわなかった持田に対し、池江は全国中学で敗れた100メートル自由形で持田が持つ中学記録を塗り替える55秒60を記録した。

 これが持田の負けん気に火をつけることになる。ジュニアパンパシフィック選手権からさらに2週間後の長崎国体で、調子が上がらないと話していたが、それでも「記録が塗り替えられたことがとにかく悔しかった」と持田が奮起。55秒54を記録し、再度池江の中学記録を塗り替えたのである。

 お互いに刺激し合う姿は、まさに萩野と瀬戸の関係を見ているようだ。今大会でも200メートル自由形で2位に入ったのは持田。池江は中学新記録で3位だったにも関わらず「持田さんに負けて悔しい」と涙を流すと、それを笑顔で慰める持田の姿があった。反対に100メートルでは3位に入って笑顔を見せた池江に対し、8位だった持田は涙をこらえるような様子でミックスゾーンの取材に応えた。

 勝負の楽しさ、負けることの悔しさ、勝つことのうれしさ。感情を素直に表現して切磋琢磨(せっさたくま)する2人の姿は、きっと多くの代表選手たちの「刺激」になることだろう。

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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