スタンダールで出場機会が増えた小野裕二 結果が求められる状況を「楽しんでいる」

中田徹

先制ゴールにつながるクロス

ヘント戦に先発出場した小野裕二、先制ゴールにつながるクロスを上げた 【VI-Images via Getty Images】

 21日のベルギーリーグ第20節、アウェーでヘントと戦ったスタンダールは、アディショナルタイム4分にジェフリー・ムジャンギ・ビアが決勝ゴールを奪い、2−1の粘り勝ち。この日の勝利で7位スタンダールは6位ヘントとの勝ち点差を1まで詰めた。ベルギーリーグは上位6クラブがプレーオフ1に進出し優勝を争う。

 川島永嗣は左ひざの負傷で招集外となったが、小野裕二は右MFとして先発し、80分間プレーした。開始24分までに、小野のクロスは4本を数えた。そのうち12分に上げたクロスは相手GKマッツ・セルスのキャッチミスを誘い、イゴール・デ・カマルゴの先制ゴールにつながった。

「イゴーには『最初のタイミングで上げるから入って来て』という話しをしていた。相手のキーパーとDFの間に巧くクロスを上げることができた。相手のミスですけれど、そのミスを誘えたのはすごく良かった」(小野)

 しかし、36分にMFエヨング・エノーが危険なタックルで退場し、スタンダールが10人になると小野も守備に追われるようになり、サイドで起点になる機会が減っていった。最後は股関節辺りがつってしまい、自ら交代を申し出たという。

「個人的にはぜんぜん良くなかった。難しい試合だったし、守備の時間が長かったから攻撃の良い部分は出せなかった。でもチームとしての守備には貢献できたと思う。チームも勝てた」(小野)

「日々、手応えを感じている」

 昨季、膝のじん帯断裂でシーズンを棒に振った小野は、今季もけがで出遅れ、9月を除けば出場機会が乏しかった。しかし12月に入ると公式戦全5試合に出場している。うち4試合がスタメンだ。3日のロケレン戦ではアシストも決めた。小野は「日々、手応えを感じている」と言う。

「(横浜F・)マリノスの時はずっと試合に出ることができたから、自分が成長できたと思う。こっちに来て、試合に絡めなかった時期があって、すごく悔しい思いをした」(小野)

 ユース時代はもちろんのこと、高3でデビューしたトップチームでも2シーズンの間、小野はほとんどの試合に出続けた。

「僕がたまたまプリンスリーグで退場になったことで、次のユースの試合に出られなくなった。トップチームはけが人が多くて、僕が練習試合に呼ばれた。相手は横浜FC。そしたら僕が2ゴール決めた」

 当時の木村和司監督は試合後、「来週はもう学校を休んで練習に来い」と小野に告げ、2010年7月17日のサンフレッチェ広島戦で途中出場を果たすと、「次のガンバ(大阪)戦で先発し、それからずっと使ってもらいました」(小野)。

 往年の名プレイヤーでもある木村監督から、小野はシュートを撃つときのGKの外し方などを伝授されたという。

 マリノスの2年目は公式戦で10試合勝ちなしという時期があったが、一つの勝利をきっかけにチームが上昇していったことを小野は経験している。現在のスタンダールも、悪かった頃のマリノスに状況が似ているが、しみじみと小野は「負けないことが大事。0−0のまま試合が終盤に入ったら、しっかり引き分けることも重要。チームとしても個々としてもメンタルを強くしないといけない」とチームの低迷打破を思いながら語るのである。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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