スタンダールで出場機会が増えた小野裕二 結果が求められる状況を「楽しんでいる」

中田徹

マリノス時代にもらったアドバイス

けがの影響もあり、出場機会に恵まれなかった小野だが、調子は上がってきている 【VI-Images via Getty Images】

 小野はもの言うフットボーラーである。こうしてほしい、ああしてほしい、俺がこうするから……とチームメートとプレーの詳細を詰めると同時に、フェイエノールト戦で致命的なミスを犯した19歳のDFコランタン・フィオーレに試合後、こうアドバイスしたという。

「チャレンジしてミスしてやられたら、次にどうすればいいか考えればいい。それも経験だから。今日のプレーは良かったし、ミスしたからといって躊躇(ちゅうちょ)しないで、しっかり自分のプレーをしたら良い」

 そんな小野もまだ21歳。フィオーレへの言葉は、彼もまたマリノス時代に良質なアドバイスをもらっていたことを感じさせる。やはり、そうだった。小野の口から樋口靖洋(今季いっぱいで退任)、中村俊輔、中澤佑二、中町公祐、大黒将志(現京都サンガF.C.)、ドゥトラ(現役引退)、マルキーニョス(現ヴィッセル神戸)といった名前がスラスラと出てきた。

「マリノスの時は本当にいろんな選手に助けられた。やっぱり自分もまだ若かったから、試合中にカッとなることもあった。コーチにだって、監督にだって、チームメートにだってそう。言い合いもしていた。ただ、試合は試合。終わったら終わったでしっかりコミュニケーションを取れていた。僕は自分の意見というのを持っていたから、『こう思います』と言ったらしっかり聞いてくれた上で『でも、こういう選択肢もあるんだよ』とか、そう言ってくれる先輩が多かった」(小野)

「結果にこだわってやっていきたい」

 あっという間に駆け抜けたマリノスのトップチームでの2シーズン。スタンダールは若手を積極的に抜てきするチームだった。そこが小野のビジョンと合い、しかもベルギーが今サッカー界で注目されていることもあって、移籍を決めたのだと小野は言う。

「迷いはなかった」

 しかし、実際にベルギーに来てみると出場機会に恵まれなかった。1年目は試合に出た後、ベンチ外となったこともあったから、けがだけが理由ではなかったのだろう。プロとして、小野は初めて大きな壁にぶつかったのだろうか?

「今は体の調子がどんどん上がって来ているから、自分の中でも100パーセントに近づいていると思う。壁というより、そういった状況をうまく楽しんでいる」(小野)

 スタンダールはビッグクラブだから、まだノーゴールの小野に対して「力不足」(現地紙)という厳しい批評もある。チーム内のライバルであるポール=ジョゼ・ムポクやメフディ・カルセラ・ゴンサレスはゴールに直結するプレーが得意なだけに、小野も結果が大事なことは自覚している。

「ゴールやアシストという結果を残してスタメンに定着していくことが大事。いくら良いプレーをして見ている人が評価してくれても、結果だけ見た人はそうではない。そういうところにこだわってやっていきたい」(小野)

 2015年の小野が、そうであってほしいと願っている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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