バレー界の方向性を示す『Team CORE』 男女両監督に聞く育成年代の課題

田中夕子

アジアの中に新たな勢力図

今年6月に発表された『Team CORE』のメンバーとなる石川祐希 【写真:ロイター/アフロ】

 1年1年、目の前にある目標だけでなく、さらに先、2020年やその先の五輪、国際大会へと続くバレーボールの強化を、現場ではどのように実践しているのか。
『Project CORE』と題した強化プログラムの発足経緯や、今後の展望については荒木田裕子・日本バレーボール協会強化事業本部長に語ってもらった(※9月16日掲載「バレーボール界、悲願の金メダルへ=強化の核となる『Project CORE』とは?」)が、実際の現場ではどんな理念を持って活動しているのか。6月の記者会見で発表された18名の強化指定選手によって構成される『Team CORE』の男子監督の酒井新悟氏、女子監督の安保澄氏に話を聞いた。

 昨シーズンまで堺ブレイザーズの監督を務めた酒井氏は、8月にカザフスタンで行われたアジアカップ、10月のアジアジュニア(U−20)選手権で監督を務めた。結果はアジアカップが6位、アジアジュニア選手権が5位。経験値を重ねるということも大きな意味を持つ世代が中心になっており、結果だけがすべてというわけではないが「アジアの中でも勝つことが難しいことを実感させられた」と述べる。

 かつては中国、韓国、日本がアジアの三強として鎬(しのぎ)を削ってきたが、近年は世界選手権でも6位になったイランを筆頭に、インド、カタールなど強豪国が増え、新たな勢力図ができつつある。ジュニア世代の強化も早くから専任の指導者を置き、10代の選手でも各国のシニア代表に選出され、出場の機会を得ており、全日本代表が目指す「縦横のつながり」がまさに実現され、少しずつ形として構築され始めている。

基礎技術も劣っている

「基礎技術が足りない」と語る酒井新悟男子監督 【スポーツナビ】

 V・プレミアリーグのチームの監督という立場で育成年代と接してきた酒井氏は、これまでもアジア各国や世界と比べて個々の能力で差が開きつつあると感じていたが、実際にチームを率いて国際大会に出場したことでハッキリ露呈した差があると言う。
「高さやパワーといった面ばかりが目立って伝えられがちですが、パスやスパイクの基本技術、試合運びといったゲームスキル、どちらも残念ながら現時点では日本の選手が劣っているのは明らか。まずはボールコントロールの正確性から築き上げなければならない、と実感しました」

 高校生、大学生になっても「基礎技術が足りない」という現状。これは、極端に言えば小学生の頃から1つのポジションしか経験せず、攻撃ばかりが重視された結果「打つことはできても守備は苦手」と言っても許されてしまう環境が一因とも言える。

 こうした課題を打開すべく、近年ではアジア大会でも活躍した石川祐希(中央大)が在籍した星城高で、スパイカーとしてだけでなくセッターの練習にも取り組んでいた。加えてインターハイ、国体を制した東福岡高や、インターハイ準優勝の東洋高でも1、2年時はエースだった選手がセッターに転向するなど、選手個々や日本の男子バレーボール界の将来を見据え、積極的に複数のポジションに挑戦させるなど変化の兆しは見られつつある。

 しかし男子に関して、最大の問題は部員数の減少。特に中学生年代は顕著で、堺市では40校を超える中学校がある中、男子バレーボール部があるのはわずかに4つ、というのが現実でもある。各学校との連携、他競技まで視野を広げた育成、発掘。課題は数えきれないほど山積しているが、酒井氏は「2020年、さらに先へと続くシステムを構築して、世界と戦える選手を育てることが自分たちに課せられた使命」と意気込んでいる。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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