バレー界の方向性を示す『Team CORE』 男女両監督に聞く育成年代の課題
求められる「マルチプレーヤー」
男子よりも女子のほうがマルチな技術が求められる。写真はアジア大会にも出場した『Team CORE』メンバーの大竹里歩 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
「1984年のロス五輪以来、バレーボールは非常に専門性が求められるようになりました。ですが、最終的に私は、6人が全員セッターをできて、6人がどこからでもアタックを打てる。6人がすべてのプレーをできるというのが一番理想とする形です。たとえば守備専門のリベロを入れなければ、その代わりにアタッカーを入れ、攻撃に参加する枚数が増える。セッターだからこの練習、スパイカーだからこの練習、と区切ることなく、いつ誰がどこに入ってもプレーできるように、ポジションにこだわらず、マルチなプレーができる選手がこれからはキーになるはずです」
全日本でも眞鍋政義監督が従来のポジションの概念を外し、ミドルブロッカーの位置にウィングスパイカーの選手を入れ、セッターがミドルの位置でブロックに跳ぶなど、選手にはマルチな役割が求められた。安保監督も同様で、自らが率いたアジア大会では所属チームではミドルブロッカーに入る選手を3名同時にコートへ入れるなど、全日本シニア代表と同じく、ポジションを固定することなく「いつ、誰が、どこに入ってもプレーできる」ことを重視してきた。
日々の反復練習が不可欠要素
技術を高めるために「まずは反復練習が不可欠要素」と話す安保澄女子監督 【スポーツナビ】
だがそれでも、世界で勝つために足りないものは男子と同様に「技術」と「スキル」だと安保氏は言う。
「国際大会で、日本の選手は確かに身体的なリスクは存在します。そのせいで常に『高さやパワーに負けた』と見られることが多いのかもしれませんが、実際はそれだけではありません。むしろ勝敗の差になるのは、戦術を遂行する技術、スキルの差というのが非常に大きく存在している、と考えています」
たとえば、ブラジルに全日本代表が敗れれば翌日の新聞には「高さとパワーで圧倒された」と文字が躍る。確かにそれも1つではあるが、ブラジル代表選手たちのパス、セット、ブロックから次のプレーにつなげるフォローなど、1つ1つの技術力や、相手が嫌がる展開に持ち込むスキルに圧倒され、それが勝敗の差につながることが多い、と安保氏は言う。
「特に育成年代、ジュニア、ユースなどのアンダーカテゴリーから技術力、スキルを高めることが絶対的にクリアしなければならない課題であるのは間違いありません」
高校生年代は試合も多く、当然ながら授業もある。学校を離れ、『Team CORE』として合宿時間を作ることも難しい現状ではあるが「技術力を高めるために、まずは反復練習が不可欠要素」(安保氏)と言うように、今後は試合のない時期や、学期末のテスト後など、時間を有効活用する予定が組まれていくと言う。
選手だけでなく指導者の育成も
「男子のバレーボール人口減少ばかりに目を向けられがちですが、女子にとってもそれは大問題。将来、指導者を志す人間が減ってしまう可能性も非常に高くなります。非常に大きな範囲に及ぶ課題かもしれませんが、指導者を育成する、というのはまず一番に取り組むべき課題だと感じています」
指導者育成、競技人口の増加、有望選手の育成、発掘、各学校との連携。数えきれないほどの課題を現場で、さらには協会としてどうクリアしていくのか。バレーボール界の未来を担う『Project CORE』、今後の活動にも注目したい。