ブラインドサッカーを「体感」しよう! 「松原渓のスポーツ百景」
【松原渓】
アジア最大のスポーツの祭典に注目!
特に注目していたのは、私が所属する南葛シューターズの練習にもよく参加してくれる、寺本進選手がプレーするセパタクロー日本代表。「空中の格闘技」とも言われ、高い打点からオーバーヘッドキックの形で振り下ろされるスパイクは、鋭く、美しい。寺本選手は、日本初のプロ選手としてタイでプレーするなど、20年近くも第一線で活躍し続けてきたが、今大会での引退を表明。事実上の「世界一」への最後の挑戦となった。結果は、男子ダブルで銅メダルを獲得。最高の結果で終わることはできなかったが、すべてを出し切ったような表情と涙が印象的だった。現役生活、お疲れ様でした!
フットサルと共通点の多いブラインドサッカー
ブラインドサッカーは、視力に障害を持つ選手によって行われ、パラリンピックの公式種目でもある。4年前に参加させていただいたトークショーで、日本代表キャプテンの落合啓士さんとお知り合いになる機会があり、それをきっかけに注目するようになった。
ブラインドサッカー フィアット カルチョ2013 プロモーションビデオ - YouTube
プレーヤーの人数は5人で、コートの大きさなど、フットサルと共通点の多い競技だ。一方で独特のルールもある。公式戦は前後半各25分の計50分間。使用するボールには鉛を使った特殊な鈴が入っていて、転がるとシャカシャカという音がする。プレーヤーはこの鈴の音を頼りに両足の内側でボールを操り、ドリブル、パス、シュートをする。
ピッチにはフィールドプレーヤー4人とGK、監督、プレー中にゴールの真後ろからフィールドプレイヤーに指示を出して方向や距離を伝える「コーラー」と呼ばれる7人が立つことができる。コーラーの指示は、「ゴールまで◯メートル! 角度は△度!」といった具合で、声のコミュニケーションが非常に重要なのだ。
また、ディフェンスをするプレイヤーは、ボール保持者に対し、「ボイ!」と声を出さなければいけない。「ボイ」はスペイン語で「行くぞ」の意味。ボールを持った選手の位置はボールに入った鈴の音で分かるけれど、ディフェンダーの位置は把握できないため、危険な接触を防ぐための特殊なルールだ。言わずにボールを取りにいくと、「ノースピーク」というファウルになり、PKを与えてしまう。
フィールドプレーヤーは視力をの差をなくすためにアイマスクをつけてプレーするが、GK、コーチ、コーラーは晴眼者(目が見える人)が務めることができるため、アイマスクをつけない。障害者と健常者が選手として同じピッチでプレーできるのはブラインドサッカーならではだ。
難しさと奥の深さに魅了
見えている時と、こんなに世界が違うなんて……びっくり! 【松原渓】
私も、ブラインドサッカーの体験会に参加したことがある。日本代表選手のプレーを目の前で見たり、一緒にプレーできる貴重な機会だった。そして、実際にアイマスクをつけてボールを蹴ってみると、予想を凌ぐ難しさと、奥の深さに魅了されてしまった。
選手の皆さんはかなりのスピードでプレーしていたし、シュートも強烈。日本代表選手ともなると、テクニックやスピードも晴眼者に劣らない。トラップの精度やシュートの威力、1対1の駆け引きも迫力満点で、「絶対に見えてる!」と思ってしまう。世界選手権のレベルになるとコンタクトもかなり激しくなるので、衝突のケガを防ぐためのヘッドギア(防具)もつけるという。 「イメージ」も鍵になるそうだ。話をうかがった選手の中には、視力があった幼少期に読んだサッカー漫画『キャプテン翼』のイメージを今も大切にしながらプレーしているというエピソードを持つ選手もいた。