スポーツライフに欠かせない登山 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

【Getty Images】

渓流・渓谷に由来する「渓」という名前

マイナスイオンを浴びてリフレッシュ! 【松原渓】

 今回のテーマは「登山」。
 近年ブームとなっている“山ガール”の中でも、特に20代〜30代の登山を楽しむ女性が増えていると聞く。実は、私もその1人。1年を通じて山に登る回数こそ多くはないが、登山は私のスポーツライフに欠かせないものだ。
 登山を始めたきっかけは、ちょっと変わっているかもしれない。私の父は山の雑誌や本の執筆・編集をしながら、全国の山を歩く登山家だった。渓流・渓谷に由来する私の「渓」という名前も父がつけてくれたものだ。

 小さいころは自分の名前に「子」がついていないのが嫌だった。「渓」だけだと、男の子に間違われることが多かったからだ。ただ、間違えられるのも無理はない。ショートカットにボーイッシュな服。同い年の女の子たちが着ている花柄のブラウスやフリルのついたスカートなどとは無縁で、私は見た目も完全に男の子だった。

 間違えた相手に母が「この子、女の子なんですよ」と笑いながら慣れた口調で説明すると、大人たちは必ずと言っていいほど驚いた表情を見せた。それは「なんでもっと女の子らしい格好をしないの?」という非難にも見えて、『「渓子」だったら男の子と間違われることも少なくなるのに!』と名前のせいにしていた。

 小さいころからそんな格好ばかりしていたのも、父の影響が大きい。父はアウトドアのアイテムに目がなく、狭い家の中は常にリュックサックや寝袋、ウエアなどが山積み。そんなわけで、自然と私が着るものはアウトドアウエアばかりになったのだ。

小さな私の好奇心や想像力を刺激してくれた山

小さいころ、父と一緒に山へ。自分の足で歩くことに意味がある! 【松原渓】

 週末は父と登山を楽しんだ。山には、テントを持って泊まりで行くことも多く、夏休みや冬休みには3000メートル超級の山の縦走も経験し、ハードな冬山にも挑戦した。6歳の時に、台風の大雨の中、槍ヶ岳(北アルプス、3,180m)の頂上付近を歩いていたら、父がすれ違いの登山者から「これは幼児虐待ですよ」と非難されたこともある。

 でも、それを苦痛だと思ったことはなかった。そのころ、私にとって山は「好き・嫌い」の対象ではなく、「登らなければならないもの」だった。足元を一歩一歩確かめながら、父の背中についていくので精いっぱいだった。
 時々、山が嫌になってもおかしくないような経験をした。濃霧の中で迷って同じ道をグルグルと何時間も回ったり、腰まである深い雪の中を歩いている時にヘッドランプの電池が切れてしまい、真っ暗な中を深夜まで手探りで歩いたり……。

 冬の雲取山(奥多摩、2,017m)を登っていた時に、子供用の手袋が薄く、凍傷になりかけたこともある。その時は、感覚を失った私の手を父が口の中に入れて暖め、九死に一生を得た。そのようにして、アクシデントの中で生きるための知恵を学ぶことも多かった。山の中ではトイレに行きたくてもすぐには行けないし、虫もいっぱいいる。

 でも、山を嫌いになるどころか、それらの経験は小さな私の好奇心や想像力を刺激してくれた。どんなに辛い状況に陥っても、「これは冒険なんだ」と思うと、前に進むことができた。

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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