克服しつつある水泳への苦手意識 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

【松原渓】

マット運動と水泳への苦手意識

【Getty Images】

 小学校のころ、体育の授業が楽しみで仕方がなかった。特に、サッカーやバスケットボールなど球技の日は、前日からウキウキしていたのを覚えている。ただ、そんな体育の授業も稀に憂鬱(ゆううつ)になる時があり、それがマット運動と水泳の日だった。

 マット運動は前転(でんぐり返し)と後転まではできるのだけれど、側転となるとお手上げ。身体が硬かったので、ロボットのようなぎこちない動きになっていた。大人になっても変わらなかったが、身体が硬いとどんなスポーツでもケガに直結するため、ここ数年は朝やお風呂上がりのストレッチをするようにしている。その成果もあって、関節の可動域はかなり広がった。
 一方、もう1つの水泳は苦手意識を克服する機会がないまま、今まできてしまった。夏に海やプールに行く時も、雰囲気を楽しむだけで泳ぐことは避けてきた。ところが、そんな水泳に対する苦手意識が、ここ1年ほどで変わりつつあるのだ。

 そもそも水泳が苦手になったのは、4歳の夏に伊豆の海で水遊びをしていて溺れたことがきっかけだった。そして、その意識を決定的なものにしたのは、小学校時代のある「事件」。体育の授業中にその事件は起こった。

 25メートルをクロールで泳いでいたら、こんな声が聞こえてきたのだ。「変な顔、 アハハハハ!」。クラスの男の子が、私の泳ぎを見て笑っていた。どうやら、必死で顔を上げて息継ぎをする表情がおかしかったらしい。つられて周りの男の子たちも笑った。そして、その中には私が淡い恋心を抱いていた男の子もいた……。それは、自分に「泳げない」と自己暗示をかけるのに十分すぎる事件だった。

「区民プール」のおかげで徐々に水泳好きに

区民プールへ行く時の3点セット 【松原渓】

 そんな苦手意識が最近変わりつつあるのは、「区民プール」の存在を知ったからだ。ある時、フットサルで肋骨を折ってしまい、3週間絶対安静にした後、筋肉をほぐすために水中ウォーキングを薦められた。そこで私は、近所の区民プールに行ったのだ。

 区民プールでは幼稚園児から小中学生、家族連れやご年配の方など、老若男女がそれぞれのやり方で水との関わりを楽しんでいた。シェイプアップや筋力強化、リハビリなど目的もさまざまで、ゆったりウォーキングをする人もいれば、1キロ以上泳ぎ続ける本格派もいる。そんな中では、うまく泳げなくても恥ずかしさを感じることがなかった。それに、利用は1回300円とリーズナブル。

 それを機に区民プールへ行く機会が増え、泳ぐことへの抵抗感が次第に薄れていった。最近では、楽しいとすら思えるようになってきた。行く時は、50メートルプールを4往復ほどウォーキングし、8往復(400メートル)をゆっくりと泳ぐ。全身が心地よい疲労感に包まれる。
 ある企業の2013年度のアンケートでは、小さいころにやっていた習い事ランキングの1位が「スイミング」だという。また、子供にさせてあげたい習い事でも、英会話と並んで毎年上位に入る。理由は「体力作り」「泳げるようになるため」「健康のため」といった理由が多いそうだ。

 そういえば、女子サッカーの澤穂希選手も、幼稚園から小学校低学年のころまでは水泳をやっていたという。子供の基礎体力作りにも、大人の健康維持やダイエットにも、水泳って理想的なスポーツなのだなぁ。そう考えると、私は小さいころに苦手意識を持ってしまったことが、つくづく惜しく感じられる。これからは水泳も私のスポーツライフにうまく取り入れていきたいと思う。

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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