女子王者・宮尾綾香が難敵下して涙のV3=大橋会長「魅せられるボクシングだった」

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スピードで上回った宮尾に判定3−0で軍配

V3に成功した宮尾。右目下の腫れが激闘を物語る 【t.SAKUMA】

 WBA女子世界ライトミニマム級タイトルマッチが28日、東京・後楽園ホールで行われ、王者・宮尾綾香(大橋ジム)が96−94、97−93、97−93の判定3−0で同級1位の挑戦者・グレッチェン・アバニエル(フィリピン)を下して、3度目の防衛を果たした。
 判定を聞いた瞬間、宮尾の目は真っ赤だった。「きつい試合で感極まりました」と振り返る、その右目下の青い腫れが、緊迫感のあった激闘を物語っていた。

 宮尾の鋭いワンツーで幕を開けたタイトルマッチ。立ち上がりは宮尾がプレッシャーをかけるも、アバニエルのカウンターをもらい、大橋秀行会長も「やべえな」と思った1ラウンドは9−10と取られた。しかし、2R以降は持ち味であるスピードのあるフットワークで前後左右に動き回り、キレのある左でけん制、スキあらば右ボディ、右フックで飛び込んでいった。相手もカウンター狙いから、折を見て前にプレッシャーをかけてくるが、スピードで上回る宮尾は決定打を許さない。お互いが距離を詰めたところの打ち合いでは、力強いパンチをもらうこともあったが、佐久間史郎トレーナーの下きついトレーニングをやってきて威力がついたというパワフルなパンチで応戦した。最終10ラウンドでも宮尾のスピードは衰えず、右ボディ、右ストレートでアバニエルをKO寸前まで追い詰めた。

大橋会長「女子ボクシングは宮尾にかかっている」

難敵だったが、スピードで上回った宮尾に軍配が上がった 【t.SAKUMA】

 控え室では「カウンターの怖さは戦いながら常にあった」とアバニエルのプレッシャーがあったことを口にし、「最終ラウンドは(KOへの)欲が出た。そういうことをやっているときに考えちゃいけない。そういう弱さが出た」と反省。指名試合を乗り越えて勝利を手に入れたものの、「まだまだ納得できるボクシングには程遠い」と自身に及第点を与えることはなかった。

 一方、何とか宮尾をアイコンに女子ボクシングを広めたいと考えている大橋会長はこの試合を振り返って、「綾香の動きは良かった。相手も強かったね。防衛戦の中で一番良かった。大分魅せられるボクシングになってきた」と合格点。「いい試合だった」と宮尾に声をかけると、宮尾の頬からは認められたうれしさで涙がこぼれた。そして、「女子ボクシングは宮尾にかかっている。責任感をもってやってもらわないといけない」という大橋会長の言葉には、間髪いれず大きな声で「はい、がんばります」とこたえた。

 まだまだ世間に届いているとは言い難い女子ボクシング。今後について「今できることをやっていきたい」と謙虚に語る宮尾だが、“ボクシング界の上戸彩”とも言われる愛くるしいルックスと強さを兼ね備えた宮尾が女子ボクシングの魅力をどこまで世間に訴えていけるか――今後のさらなる活躍が期待される。
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