1部復帰を目指すリーベルに図られる数々の便宜

リーベル3連勝で順当なスタートに見えるが……

プレーオフで警官隊と衝突するリーベルファン。最終的には5試合のホーム使用禁止と無観客試合の処分が下された 【写真:AP/アフロ】

 全38節のうち3試合を終えた現在、アルゼンチン2部リーグに当たるナシオナルBは、サッカー的観点からして至って順当なスタートとなっている。まだ先が長いとはいえ、唯一の3連勝で単独首位に立った同カテゴリー初挑戦のリーベル・プレートが、2012−13シーズンの1部復帰に近づいていることは明らかだ。

 しかしながら、純粋にピッチの上だけで勝負を決めるべきリーベルの昇格への道のりには、さまざまな介入が見られる。スポーツ界や政界の要人たちがあらゆる手段を講じ、リーベルの1部復帰に便宜を図ろうとしているからだ。彼らは初の顔合わせとなるチームとの対戦が大半を占め、多数の長距離遠征によるタフな戦いを強いられる2部リーグを戦わずして、リーベルを1部の舞台に戻そうとまでしている。

 110年の歴史上、初めて2部降格が決まった6月、最も暴力的なリーベルファンの一部は、アルゼンチンサッカー協会(AFA)の規律委員会が厳重な処分を科すべき2つの事件を起こした。だが、この件については処分の検討が繰り返され、いまだに具体的な決定が下されていない。

 ベルグラノ・デ・コルドバとのプレーオフに回ったリーベルは、6月22日の第1戦をアウエー、4日後の第2戦をホームで戦った。
 第1戦で0−2とリードを許し、プレーに迷いが見え始めた際、不意に10数人のリーベルファンがフェンスを破ってピッチに乱入し、選手たちに戦う意思を見せるよう要求した。この試合の主審、地元の警察、そしてAFAのいずれも、この試合を無効にしたり、リーベルを敗戦扱いにしたりすることはなかった。ただ数分間の協議を行った後、何事もなかったかのように試合は再開されたのだった。

リーベルファンがプレーオフで起こした2つの事件

 1978年ワールドカップ決勝の舞台であり、今年のコパ・アメリカ(南米選手権)ではウルグアイが優勝を成し遂げた舞台であるブエノスアイレスのエル・モヌメンタルで行われた第2戦は、さらに緊迫した空気の中で行われた。

 2点差以上の勝利が1部残留の条件となったリーベルが1−0とリードして迎えたハーフタイムには、またもラディカルなファンが関係者専用の入口からスタジアム内部に侵入。レフェリーの控室に入り、セルヒオ・ペソッタ主審らにリーベルに有利な笛を吹くよう脅迫したことが、後に地元スポーツ紙の報道によって明らかになった。

 ペソッタが提出した試合の報告書の中に、この報道を裏付ける記述があったため、この件はリーグの審議会やレフェリー協会のギジェルモ・マルコーニ弁護士によって審議にかけられた。この試合でペソッタは、62分にベルグラノが1点を返した後に疑わしいPKをリーベルに与えたのだが、それはマリアーノ・パボーネの失敗により台無しになった。1−1で迎えた終了間際にはピッチになだれ込んだたくさんの暴徒が破壊行為を行い始め、試合はそのまま終了となっている。

 しかしながら、それから40日以上が経過した今季の前期リーグ開幕時点で、これらの深刻な事件に対する処分は何も科せられていなかった。その間、ベルグラノ戦でレフェリーを脅迫した男たちが、リーベルの役員から結構な額の見返りを受け取っていたことが新たに発覚し、関与したと見られる一部の役員が法廷で裁きを受けているにもかかわらずだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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