小さい体を、最大の武器に。ラグビーはサイズや才能だけで決まるスポーツではない

【©ジャパンラグビーリーグワン】

ラグビーにおいて、フィジカルの差は絶対的なハンデになる。ならば、169.3cm、83.2kgのフランカーがリーグワンで生き残る術はあるのか。井上大志郎は、それを証明しつつある。昨年、福岡大学からルリーロ福岡(以下、LR福岡)に加入し、前節の第9節まで2試合連続で先発出場。小さな体を武器に変えるディフェンス力が評価され、指揮官からの信頼を勝ち取った。

地元は福岡県。チームの拠点となるうきは市の浮羽究真館高校出身。地元でのプレーということもあり、高校時代の恩師や後輩たちが試合に駆け付け、声援を送る。その姿は力になるが、選手としての評価は未知数だった。「地元だからといって、特別な期待を懸けられていたわけではなかったと思います。だからこそ、自分で居場所を勝ち取らなければならなかった」と井上大志郎は振り返る。

当初はラグビーを辞めるつもりだった。だが、高校時代の監督の一言が井上大志郎を引き戻した。「LR福岡でやってみないか?」。迷いはあったが、結局、ラグビーへの思いが勝った。日中は車の部品を作る会社で事務作業をこなし、仕事が終わるとすぐに練習場へ向かう。夜9時まで汗を流し、翌朝はまた仕事に向かう。そんな日々を重ねながらも、プロ顔負けのフィジカルコンディションを維持し、チャンスを待った。

しかし、加入当初は厳しい現実が待っていた。練習環境が変わり、肉離れを繰り返す。一時はチームを離れたが、復帰後の紅白戦で結果を残し、再び評価を得ることになる。年明けごろからは、周囲の見る目も変わった。「井上、いいな」。そんな声が聞こえ始めたのは、このころだった。

井上大志郎の武器は、低い姿勢から繰り出す鋭いタックルだ。「小さいからこそ相手の下に入りやすい。足下に素早くタックルを入れ、一発で止める。それが僕の仕事」。その手ごたえを初めて感じたのは第8節のデビュー戦。そして第9節の試合でも、同じように成功させた。

第9節の試合では、立ち上がりのディフェンスは完璧だったが、後半にかけて精度が落ちた。「最初から最後まで高いレベルのディフェンスを続けたい」。課題は明確だ。

ラグビーはサイズや才能だけで決まるスポーツではない。努力と工夫次第で、自分の武器を作り出せる。井上大志郎は、その体現者の一人だ。彼の魂のタックルが、これからのLR福岡を支えていく。今節でも、彼の熱いプレーに注目したい。

(柚野真也)
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