【スキー】キング・オブ・スキーを目指すノルディック複合の若手が集結 白馬の一等地に構える天然温泉付き「なかっぱら寮」ってどんなところ?
「なかっぱら寮」と呼ばれるかつて民宿だった施設には夏から秋の約4か月、学生を中心に若い選手が泊まり込み日々練習に励んでいます。
寮のはじまりは、未来の五輪メダリストやワールドカップ総合王者を育てるため、選抜した若手の長期的な育成を目指す「エリートアカデミー」構想。高校を卒業すると都内周辺の大学に進学する選手が多く、十分な練習環境の確保は大きな課題です。伸び盛りの選手を学業と両立させながら鍛えるべく、2020年8月に複合チームが河野孝典ヘッドコーチ(現・競技本部長)らを中心に、大学生と高校生の男女6選手を集めて約4週間「エリートアカデミー」を試験的に実施。その時に宿舎となったのが「なかっぱら寮」でした。
1998年冬季五輪の会場でナショナルトレーニングセンター強化拠点にもなっている白馬は、ジャンプ台とクロスカントリーコースが整備され、理想的な練習環境。寮には週末になれば授業を終えた選手が集まり、全日本の強化合宿でも使われています。
昼食の支度をする畔上祥吾選手(左)と久保田選手 【全日本スキー連盟ノルディックコンバインドチーム】
開発進む白馬の天然温泉付き一等地
2階建ての建物の1階は厨房に食堂、浴室、お手洗いなどの共用スペースと、コーチらが滞在する部屋があります。コーチングスタッフは大きなテーブルの置かれたミーティングルームと広めの和室で生活しながら選手の指導にあたっています。
2階が選手用エリアで、6畳の1人部屋2室、8畳の2人部屋4室。大会や合宿で選手が増える時は2人部屋を3人で使うことや、コーチらと一緒に1階で雑魚寝することもあるそう。
白馬での大会を控えた8月下旬に滞在していたのは、畔上沙那、畔上祥吾(岐阜日野自動車SC)、成田絆(ガリウムスキークラブ)、久保田康太郎(中央大学)、菊池楼紗(下川ジャンプ少年団)の5選手と、久保貴寛ヘッドコーチ、北村隆コーチ。
寮にはコーチが交代で滞在しており、畔上祥吾選手は「コーチも常駐なので選手としてはありがたい環境。全日本のコーチなので、何をやったかということも共有していただける。意思疎通もしやすい」と話していました。
コーチだけでなく管理人さんも常駐しており何かと安心。備品の補充や館内清掃などは管理人さんがやってくれます。WiFiも完備しており、練習はもちろん住環境も至れり尽くせりですが、極めつきは天然温泉!お風呂の蛇口をひねれば温泉が湧き出します。
快適そのものの寮には今も語り継がれるエピソードが。当初は2階にある選手部屋6室に冷房がついておらず、避暑地とはいえ「暑くて寝られないこともあった…」(畔上祥吾選手)。そこで河野本部長が文字通り頭を働かせて冷房設置へと動きます。稼働2年目の夏に寮を管理している不動産会社に相談し、その会社の広告をヘッドスポンサーに入れて冬のシーズンを転戦することで冷房完備にこじつけたのです。
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冷房完備実現へ、スポンサー広告の入ったニット帽をかぶる木村幸大選手 【全日本スキー連盟ノルディックコンバインドチーム】
練習に明け暮れる寮での生活とは
06:30 起床、支度をして各自朝食
07:40 ジャンプ台に出発
11:30 寮に戻り昼食の準備
昼食を取り、つかの間の自由時間
14:00 クロスカントリー(ローラースキー)の練習へ
17:30 練習を終え、寮に戻り夕食の準備
食堂に集まって夕食を取り、「お風呂に入った後は動画を見ながらストレッチをして、ゆっくり過ごして22時半頃に寝ます」。早寝早起き、練習に明け暮れた一日はあっという間に過ぎていきます。
また、寮則には『学生は、必ず学習時間を設けること』とあり、学生の本分も決しておろそかにすることなく競技に打ち込むことが求められるのです。
久保田選手(左)と成田選手の相部屋を拝見 【全日本スキー連盟ノルディックコンバインドチーム】
できることを分担しながら自炊…料理の腕も上がる!
昼食の支度をのぞいてみると、畔上祥吾選手と久保田選手が慣れた手つきでテキパキと調理。成田選手のように「もともと親に教えられていたので、料理は一応できるほうだった」という選手もいれば、ほとんど料理をしたことがない選手も。5人の中で最年少、中学3年の菊池選手は寮に来て最初に思ったことが「ごはん作れない…」だったそうで、いまは「皿洗いです…(笑)」。それでも、各自できることを分担して効率よく回せるのは共同生活ならでは。同じく「最初は皿洗いだった」ところからスタートした久保田選手、「少しずつ手伝いながら自分で一品を作るようになった」と言い、この日は実家で採れたビーツのオリーブオイル焼きをふるまっていました。
1日2回の自炊、「試合後だと疲れているのでそこはちょっと大変」(成田選手)と、やはり料理疲れがたまに訪れるようですが、それでも「自炊だと自分の好きなものが作れるのがいい」。自炊は好評のようです。
チーム内で「めちゃくちゃ上手い。何を作ってもハズレがない」と絶賛されているのが、畔上沙那選手と祥吾選手。双子でもある2人の実家は野沢温泉で料理宿を経営していると聞いて納得です。
久保田選手の得意料理は、“沙那選手直伝”の煮びたし。料理ビギナーもあっという間におふくろの味をマスターです。そして、「結構料理するけど、分量とか適当なんですよ」と料理上級者のみに許される一言をサラッと放ってくれた祥吾選手がランチに用意したのは、「お肉が固くならないよう弱火でやりました」という親子丼。長野みやげの定番・七味を振りかけて完成。お味の方は…冷めてもとても美味しい。ごちそうさまでした!
チーム満場一致の料理上手、畔上沙那選手 【全日本スキー連盟ノルディックコンバインドチーム】
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