移籍の背景に「やってみなはれ」の精神。退路を断ったフルバックの挑戦

花園近鉄ライナーズ 雲山選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

前節、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)に勝ち切り、今季初の連勝を飾った花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)とのビジターゲームに挑む。

GR東葛戦の勝利は、チームにとっては今季2勝目だが、期待の新戦力として加入した雲山弘貴にとっては、移籍後の出場4試合目にして初めて味わった勝利の美酒だった。

「GR東葛戦はちょっと手ごたえがありましたが、開幕からの3試合は何もできませんでした。でも徐々に調子は上がっています」

明治大学卒業後、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)に加入。2シーズンを過ごしたが、層の厚いチームの中で、出場試合数はわずか2試合にとどまった。

そんな雲山が新天地に選んだのは花園Lだった。D1/D2入替戦の前に向井昭吾ヘッドコーチらから誘いを受け、D2に降格が決まったあと、花園Lでの挑戦を決意したという。

東京SGでは社員選手だったが、花園Lではプロ契約。退路を絶った形での移籍だったが、後押ししたのは東京SGに受け継がれるサントリーグループの創業者・鳥井信治郎が信条とした「やってみなはれ」の精神だった。

「何事にもチャレンジすることを掲げているチームだったので僕も影響をだいぶ受けています」と雲山は言う。

あえてD2からのリスタートを決意したのは出場機会に対する渇望である。「一番は自分の価値を上げること。試合に出ないと日本代表のヘッドコーチの目にも留まりませんから」。

GR東葛戦の勝利は、巧みなキックを持ち、エリアマネジメントに長けた雲山の持ち味が存分に出た結果だった。
派手なランで自らトライに絡む日本代表7キャップのセミシ・マシレワとは対照的なスタイルだが、向井ヘッドコーチも絶大な信頼を寄せている。

「あれだけ正確にロングキックを蹴ることができる選手はなかなかいないし、彼は自分がつぶれてウイングを生かすプレーが得意」(向井ヘッドコーチ)。

雲山がルーキーイヤーの2023年1月22日、東京SGの一員として記念すべきリーグワンデビューを飾った試合の相手が奇しくも花園Lだった。

「そういう(縁を持つ)チームでやれているのはうれしいですね」

所属チームは変わったが「やってみなはれ」の思いがこれからも雲山を突き動かす。

(下薗昌記)
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