九里亜蓮の“進化”にデータで迫る 2021年の最多勝右腕は新天地でも輝くか
主力投手として広島のリーグ3連覇に貢献した右腕がオリックスの一員に
今回は、九里投手がプロ入り後に残してきた各種の数字や指標をもとに、投手としての特徴について紹介。30歳を超えてからも進化を続ける鉄腕が備える強みや、直近2シーズンにおいて顕著に向上を見せている数字を掘り下げつつ、新天地での活躍にも期待を寄せたい。
2023年には両リーグ最多の投球回を記録した、無尽蔵のスタミナを持つ
また、プロ入りから2019年までの6年間で通算6ホールドを記録した事実が示す通り、キャリアの前半においては先発とリリーフを兼任していた点も特徴的だ。ロングリリーフも含めたさまざまな役割に適応できる点も、九里投手がマルチな才能と豊富なスタミナを持つことを証明している。
ただし、プロ入りから2018年までの5年間で防御率3点台以下を記録したのは一度だけだったのに対し、先発に専念した2020年以降は6年連続で全て3点台以下の防御率を記録。2020年と2023年にはいずれも規定投球回に到達したうえで防御率2点台と好成績を残しているだけに、先発という役割に対して高い適性を持っていることがうかがえる。
多彩な変化球と安定した制球力を武器に、打たせて取る投球を展開してきた
与四球率に目を向けると、11年のキャリアで与四球率が4点台以上となったシーズンは1度のみ。キャリア平均の与四球率も3.05と一定の水準にあり、安定した制球力が九里投手の打たせて取るピッチングを下支えしていることがわかる。
2017年以降は8年連続で与四球率3.40以下と安定した水準を維持しているが、2023年以降はさらなる向上が示されている。同年はキャリア最多の174.1イニングを消化しながら、与四球率は2.53とキャリア初の2点台を記録。そして、続く2024年の与四球率は1.98と極めて優れた水準に到達しており、33歳にして制球力が劇的に改善している点は特筆ものだ。
それに伴い、奪三振を与四球率で割って求める、制球力や投手としての能力を示す「K/BB」という指標にも変化が見られる。プロ入りから3年間のK/BBはいずれも1点台、プロ4年目の2017年から2022年までの6年間は全て2.00~2.41の間にとどまっていた。
しかし、2023年のK/BBは2.63と過去10年間で最高の水準に達し、2024年にはK/BB3.28とキャリア初の3点台に到達。非常に優秀とされる3.50という水準にも近づきつつあるだけに、来季以降も指標面における進化を続けていくかどうかに注目したいところだ。
打たせて取る投球を支える制球力の向上が、投手としての安定感に直結している
1イニングごとに出した走者数の平均を示す指標である「WHIP」に関しても、他の指標と同じく直近2年間においては顕著な向上が見られる。2023年のWHIPは1.10、2024年は同1.09といずれも非常に優れた水準に達しており、走者を出す機会そのものが減少していることが示されている。
新天地でもさらなる進化を続け、チームをV字回復へと導くことができるか
主力投手の一人として広島のセ・リーグ3連覇を支えた右腕が、パ・リーグ3連覇を成し遂げたオリックスをV字回復に導くか。七色の変化球を操る長身右腕が新天地で見せる投球が、チームの浮沈を左右する重要なファクターとなる可能性は十分だ。
文・望月遼太
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