イチロー流 球児へ「メンタル編」

バーチャル高校野球

【バーチャル高校野球】

 プロ野球オリックスや大リーグ・マリナーズで活躍したイチローさんが高校球児を指導しています。

 日米通算4367安打を積み上げ、走攻守のすべてで名日米のファンを魅了したイチローさんは、一流の技術をどのように伝えているのでしょう。

 2024年11月にあった大冠(大阪)、岐阜(岐阜)と母校の愛工大名電(愛知)での指導の詳細を紹介します。

 4回目は「メンタル編」です(全4回)。

「頭を使わなきゃね。それが野球の面白さの一つ」

球児の質問に一つ一つ丁寧に答えた 【バーチャル高校野球】

 球児の質問 「強豪校に対してパワーで挑むのは間違っていますか」

「強豪校のパワーに対してパワー」、そこで勝負してちゃなかなか勝てないだろうね。野球にはそうじゃない勝ち方がある。どうすれば相手よりも1点多く取れて、1点を守れるか。頭を使わなきゃね。それが野球の面白さ、の一つでもある。

自らが感じてきた野球の醍醐味を語った 【バーチャル高校野球】

「平常心なんて保てない」

 球児の質問 「緊迫した場面で平常心を保つためにはどうしたらいいですか」

 平常心なんて保てないし、保たなくていい。心がけることは、普段から緊張しておくこと。普段から8割くらい緊張していられれば、緊迫した場面で「あと2割、使えるな」 と思える。

 練習で試合を想定することはほとんどの人がしている大事なアプローチの一つだけど、試合が練習の一部だと思える感覚も持てたら、次のレベルに進めるかもね。

「緊張」との向き合い方のコツを伝えた 【バーチャル高校野球】

「瞬間的に雰囲気をかえる魔法のような言葉なんて無い」

 球児の質問 「チームの一体感を出すにはどうしたらいいですか」

 リーダーに求められることは、その人自身が周囲に指摘したり、言わなければならないことを、実践できているか。それができていないのに、言葉だけで周りを巻き込もうとしても人はついてこない。今の世代なら、まずは今取り組んでいることを認めてあげること。

指導は言葉だけでなく、自らが手本を見せることを大事にしてきた 【バーチャル高校野球】

 しばらく観察した上で、こうなんじゃないかと伝える。相手も見られていると思うと気が抜けなくなるでしょ? まずはその子が信じているものを見守る。瞬間的に雰囲気をかえる魔法のような言葉なんて無いから。

リーダーに求められる姿勢は「相手が信じているものを見守ること」 【バーチャル高校野球】

「データに縛られすぎず、感性を大事に」

 球児の質問 「高校野球でもデータを重視する傾向があります。どう思われますか」

 僕が言うことは、データにないことが多いと思う。データに縛られすぎず、感性を大事にしてほしい。ゲームでは強豪校のいいピッチャーは甘い球をなかなか投げてくれない。どんな形でもいいから厳しい球をどうやってヒットにするか、その能力がなければ勝ち上がれない。

 甘い球を強く振って打ち返すだけの単純作業は、格上が相手の試合では使えない。

打席のなかで、「データに縛られすぎず、感性も大事にしてほしい」と訴えた 【バーチャル高校野球】

 何とかバットに当てて、ランナーをかえす。そういうことが必要になってくるからね。データは有効に活用できるところもあるけれど、野球には目に見えないところに大切なことがたくさんあるよ。(構成・山口裕起)

イチローさんと高校野球

 イチローさんは2019年3月に現役を引退し、20年に高校生や大学生への指導に必要な「学生野球資格」を回復しました。
 20年秋に行った講演では、次のように語っています。
 「高校野球は『野球』をやっている。大リーグは『コンテスト』なんです。どこまで飛ばせるかとか。野球とは言えない。高校野球にはそれが詰まっているんです。めちゃくちゃ面白い」
 「僕はプロ入り前の野球にすごい興味がある。高校野球とか学生野球の指導者には、そんなにプロ経験者はいません。野球人としてこれから(野球界に)何かお返しできたらと思っています」
 球児への指導は、20年12月の智弁和歌山を皮切りに、21年は国学院久我山(東京)、千葉明徳、高松商(香川)、22年は新宿(東京)、富士(静岡)、23年は旭川東(北海道)、宮古(沖縄)、24年の大冠(大阪)、岐阜、母校の愛工大名電(愛知)と、これまでに11校を訪れました。
 訪問先は学校側の要望や部員からの手紙をきっかけに、決めていました。
 22年の新宿と富士については、ともに地域の小学生らを対象に野球の普及にも熱心に取り組んでおり、その活動に関心を持ったイチローさん自ら、訪問を決めました。
 イチローさんは「今後もそれぞれのスタンスで野球に取り組んでいる高校生たちと一緒に野球をやってみたい」と話しています。

イチローさんの歩み

 イチロー(本名:鈴木一朗=すずき・いちろう)
 1973年10月22日、愛知県生まれ。愛工大名電高(愛知)から91年秋のドラフト4位でオリックスに入団し、94年から7年連続で首位打者を獲得した。
 1月に阪神大震災が起きた95年は「がんばろうKOBE」を合言葉にリーグ優勝、翌96年は日本一に大きく貢献した。
 2000年オフにポスティングシステムを利用して大リーグのマリナーズに移籍し、01年に首位打者、盗塁王を獲得してア・リーグMVPに。04年に262安打で大リーグのシーズン最多安打記録を84年ぶりに更新。01年から10年連続シーズン200安打。
 12年途中からヤンキース、15年からマーリンズでプレーした。16年には大リーグ史上30人目、日本選手では初となる通算3000安打を達成した。18年にマリナーズに復帰し、19年3月に引退。25年、資格初年度での日本の野球殿堂入りに続き、日本人初の米野球殿堂入り。右投げ左打ち。
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著者プロフィール

高校野球を動画やニュースでいつでもどこでも楽しめるサービスとして、2015 年に朝日新聞社と朝日放送株式会社(現朝日放送テレビ株式会社)が共同で開始。全国高校野球選手権大会をはじめ、全国高校女子硬式野球選手権大会や明治神宮野球大会などのライブ配信を実施しています。

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