トライを決めても「申し訳ない」と「みんなのおかげ」。“ミスターヒート”が呼び込んだ劇的な逆転勝利

【©ジャパンラグビーリーグワン】

「彼には申し訳ないな…と思いながら見ていました」

意外な感想を口にしたのは、三重ホンダヒート(以下、三重H)大逆転勝利の立役者となった小林亮太。試合終了間際に1点差へと詰め寄るトライを決めたあと、右サイドからコンバージョンゴールを狙う呉洸太に視線を向けながら、彼はそんなことを思っていたのだという。

「とても申し訳なかったです。昨季まで同僚だった李承爀も最後まで僕を追い掛けてきていたんですけど、それでももう少し中にトライできたはず…と感じていました。だから、洸太には『ありがとう』という気持ちでいっぱいなんです」

小林が見つめる中、呉のキックはゴールポストの間を抜けた。地面にボールがはずみ、アシスタントレフリーが旗を掲げる。これでスコアは38対37となり、その瞬間に試合終了の笛が鳴り響いた。逆転に導いた小林と呉の周りにチームメートが集まり、ファンとともに勝利の喜びを爆発させた。

2025年に入ってから5連敗を喫していた三重H。その悪い流れを断ち切るような劇的結末であった。プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた小林は、殊勲のトライの場面を感謝の言葉で振り返る。

「ラッキーでした。リザーブの選手たちがチームの勢いを作ってくれましたし、(逆転の)チャンスはあるなと感じました。中央でハードワークしてくれたメンバーにも、最後につないでくれたラリー(スルンガ)にも感謝したいです。僕はボールを置くだけでした。『みんなが取らせてくれたトライ』なんです。

われわれが『HEATER(ヒーター)』と呼ばせていただいているファンの方々が、いつも最初から最後まで熱い声援をくれています。ファンのみなさんが背中を押してくれることが大きな力になっていますし、勝利はそのおかげです」

今年で三重H加入から11年目を迎える“ミスターヒート・小林亮太”。感謝の思いを原動力にした全力プレーが、見る者すべての心を動かすドラマチックな試合を作り出したのだ。彼は今週末の横浜キヤノンイーグルス戦に向けて以下のようにインタビューを締めくくった。

「次もヒートらしい粘り強いラグビーをして、ファンのみなさんを熱くさせるようなプレーを見せて、また一緒に喜びたいです。今日は本当に最高でした!」

なお、この日の会場では、試合前とハーフタイムに三重高校ダンス部『SERIOUS FLAVOR』によるパフォーマンスが行われた。そして出番を終えたメンバーはスタンドに移って大きな声援を送っており、そのパワフルな姿がファンの間で話題を呼んだ。

劇的な試合を見た高校生に「今日はどうだった?」と聞くと、圧倒されるほど大きな声で答えが返ってきた。「たくさんの人にダンスを見てもらえて幸せでした。応援もとても楽しいです。また見に来たいです!」。

ラグビー初観戦の方も多かった『SERIOUS FLAVOR』の心もつかんだ三重Hは、23日も三重交通G スポーツの杜 鈴鹿でのホストゲームに挑む。ファンは再び「歓喜のドラマ」を期待しているはずだ。

(籠信明)
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