ロッテ国吉 苦しんだ2年を乗り越え22試合連続無失点の球団新記録樹立。長いトンネルの先に待っていた栄光

千葉ロッテマリーンズ
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契約更改後のメディア対応で色紙に「万事徹底」と書き込んだ国吉佑樹投手 【千葉ロッテマリーンズ提供】

 苦しみ抜いた先に光があった。国吉佑樹投手が12月24日、契約更改を終え会見を行った。その表情には笑みがあった。41試合に投げて防御率1・51。22試合連続無失点の球団新記録も樹立した充実した一年だった。

 地獄からの生還だった。一昨年は6試合の登板。昨年はわずか3試合の登板に終わった。ある時をキッカケに突然、投げ方を忘れたかのようになった。ボールが指にかからず、コントロールがきかない。二軍でもストレートがホームベース手前で大きくワンバウンドするなどボールが乱れる痛々しいシーンも見られた。

 「思うように投げられなくなった。最初、投げるのにちょっと違和感があって、それがどんどん大きくなった。谷底に転げ落ちるような感覚。コントロールがきかなくなった。いわゆるイップスのような状態。投げられたのに投げられない。もどかしい。怪我をしていない。身体は元気。だけど指にかかる感じがほとんどない。今まではあった感覚がない。思うように投げることができないから投げるのが気持ち悪い。昔、軽いのはあったけど・・・。ハマってしまった。小さいことを気にしてそれを直そうとしたら他のところまで崩れて、投げ方全て崩れた」と当時を振り返る。

 立ち直るキッカケは、わずか6試合の登板が終わった22年のオフだった。開き直った。もう一から治すしかない。すべてを忘れ、フォームを一から作り直す。始めたのはピッチングフォームではなく、もっと前。身体の動かし方からだった。

 「立っている時の姿勢。バランス。そこから見直した。歩き方。一歩目。走る時もまず立って歩いてそこから走る。だから立つことから考えた。一回、身体の動きのすべて分解して、一から組み立てた。オフから毎日、身体の動かし方をチェックしてメカニックを整えて。それくらい抜本的なことをしないといけないと思った。一つを治すのではなく、ピッチングでもなく、もう身体の動かし方、全部だった」(国吉)

 最初にピッチングへの違和感をかんじてから1年半ぐらい。昨年、夏前くらいにある程度投げられる手ごたえを掴むことができた。9月19日に一軍昇格をすると3試合、3回3分の2を投げて無失点。気がつけば自慢のストレートは威力を取り戻しゾーン内に押し込むことができるようになった。その後、インフルエンザに感染する不運もあり抹消となったが京セラドーム大阪で行われたバファローズとのクライマックスシリーズファイナルステージ第3戦の大舞台で登板。五回から投げて2イニングを無失点に抑えてシーズンオフを迎えた。確かな手ごたえを取り戻した。

 「最後の最後で一軍に上がって結果を出すことが出来て、自分にとって自信になった。来年はやれるという手ごたえを掴むことが出来た」と国吉は思い返した。

 そして迎えた24年シーズン。悩み抜いた男は華麗に復活を果たす。9月5日のイーグルス戦(ZOZOマリンスタジアム)。2点リードで七回にマウンドに上がると1回を無失点。3アウト目を浅いサードフライに打ち取るとグラブに右手を荒々しく叩いて喜びを表現した。クールな大男にしては珍しいガッツポーズだった。それもそのはず。これで球団新記録となる22試合連続無失点を達成したのだ。

 国吉にとってこの2年間、投げ方を忘れたような状況に苦しんだからこそ、その喜びもひとしおだった。悩みに打ち勝った男への神様からのご褒美のようなシーンだった。どこかを治すのではなくすべてをリセットする。悲壮な決意で日々の身体の動かし方も含めてすべて治すと決めたあの日。まさか、その後、球団史に名前を残す偉業を達成できる日が来るなんて想像も出来なかった。周囲の誰も想像できなかったはずだ。人生とは本当にわからないものである。陰極まり陽に転じた。行くべきところまで行って、開き直って人生が再び開けていった。

 「記録を達成して本当に色々な人から連絡がきた。同級生、先輩、後輩。ベイスターズの人。昔からの友達。こうやって連絡をもらって改めて色々な人がボクのピッチングを見てくれていることを実感した。自分のピッチングに凄いリアクションがある。応援してくれる人がいる。本当に幸せだと思った」。

 球団新記録達成の翌日。球場に姿を現した国吉は嬉しそうにしみじみと口にした。苦労人だからこそ感じることが出来た幸せがそこにはあった。国吉はオフも連日、ZOZOマリンスタジアムで身体を動かしている。悩み抜き、新しい自分を見つけた右腕が2025年、目指すことはただ一つだ。

 「優勝を経験したことがない。優勝がしたいです。古巣のベイスターズの日本一は刺激になった。胴上げとかビールかけを見て、次は自分たちがやるぞとイメージしました」と国吉。マリーンズの生きる伝説となった身長196センチの長身ピッチャーは2025年も優勝のためブルペンを支える。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章

千葉ロッテマリーンズ国吉佑樹投手 【千葉ロッテマリーンズ提供】

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