【Inside Story】コベルコ神戸スティーラーズ 営業マーケティンググループ 市来 大典
【コベルコ神戸スティーラーズ】
現役時代からファンの皆様と近い場所にいた
京都府出身。2005-2006シーズン、立命館大学から神戸製鋼コベルコスティーラース(当時)へ。同期は平島 久照スクラムコーチ、Jスポーツでの解説でもお馴染みの後藤 翔太氏ら。同期入団の仲間が次々公式戦デビューを果たす中で、入団4年目にようやくチャンスを掴んだ。2010-2011シーズンには自身最多となる5試合に出場。飄々とした空気を纏い、同期のみならず先輩からも愛された存在は、2011-2012シーズンで現役を退くことに。7シーズンの現役時代の間には、先輩の野澤 武史氏らとともに「コベルコ神戸スティーラーズフェスタ」の前身である「コベルコラグビーフェスティバル」において選手らで作る実行委員会のメンバーとなり、練習後、クラブハウスに集まってイベントを企画。野澤氏の引退後には、フェスタ実行委員長を務めた。
「試合に出られていないのにフェスタの実行委員をしていていいのかなという気持ちもありましたが、ファンの皆様に楽しんでいただこうと選手間で意見を出し合って企画を考えて、なかなかできない経験をさせてもらいました。それに今考えたら現役時代からファンの皆様と近い場所にいたんだなと思うと感慨深いですね」
2005-2006シーズンから7年間プレー。トップリーグデビューは、2008-2009シーズン第2節日本IBMビッグブルー戦。「大畑(大介)さんが試合前に怪我をし、急遽、ウイングで出場することになりました。現役時代で一番印象に残っている試合です」と市来氏。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
OBとして陰からチームをサポート
見る方に関しては、同期や後輩たちのプレーを見に年に数回は必ずスタジアムに足を運んだ。思い入れのある試合は、2018-2019シーズンのサントリーサンゴリアス(当時)との決勝戦。
当時、神戸製鉄所(現・神戸線条工場)総務室で勤務していた市来氏は、そのシーズンからはじまったレガシー活動の一環でチームが神戸製鉄所の第3高炉を見学した際、総務室長であるOBの清水 秀司氏とともに受入れ対応を行った。
「チームが会社や従業員のことを考えてくれていることがわかって嬉しかったですね」
東大阪市花園ラグビー場で行われた準決勝トヨタ自動車ヴェルブリッツ(当時)との一戦も現地で観戦した。当時チームディレクターを務めていた福本 正幸氏から清水氏へ「決勝戦の時に選手が作業服を着てグラウンドへ入場したいと言っているので協力してくれないか」と連絡が入ったのは、準決勝の翌日。
「清水さんから言われて、僕を含めたOBや体の大きな社員が作業服を提供し、なんとか23枚集めました。決勝戦は秩父宮ラグビー場で開催されましたが、チケットを取って見に行きましたね。フィールドコートを脱いで選手が作業服姿になったのを見た時は胸が熱くなりました」
市来氏の作業服は現在、クボタスピアーズ船橋・東京ベイで育成担当の鹿田 翔平氏が着用したそうだ。15年ぶりの優勝の瞬間を目に焼き付けた後、都内で行われたチームの祝勝会にも参加し、現役でプレーしていた平島や3学年後輩の山下 裕史と喜びを分かち合った。また、2021-22シーズンからは部署の上司で、現在チームディレクターを務める弘津 英司氏から勧められて、OB会の理事となり、試合会場で応援パンフレットの配布をサポートした。
初めての業務に悪戦苦闘した昨シーズン
「トップリーグからリーグワンとなり、ラグビー界が大きく変化する中でチームの力になりたいという思いがありました」
現役時代からフェスタ実行委員会のメンバーとして活動するなど、FOR THE STEELERSを体現していた市来氏は、ラグビーセンターへの異動を希望した。それが叶い、2023年7月からフロントスタッフに。担当するのは、応援パンフレット、試合告知ポスターやチラシといった印刷物およびPVや震災ムービーといった動画の制作、ホストゲームの演出といったプロモーション業務だ。
「これまでまったく経験のない業務内容で、どうやって進めていけばいいのかわからない。ちんぶんかんぷんの状態で…(苦笑)。ポスターやチラシの制作も印刷会社に丸投げしているわけではないので、こういう方針でいこうとある程度案を固めて、コンセプトを伝えないといけません。コンセプトを決めることにも苦労しました」
印刷物の制作では、文字の校正に四苦八苦。納品された後に誤植が見つかり、刷り直しになったこともあったとか。
ホストゲームではスタジアム内で行う演出を担当。イベントを企画し、1日のスケジューリングや台本の作成、試合当日は試合が滞りなく行われるように進行役を務めた。
「昨シーズン、ノエビアスタジアム神戸で行われた三重ホンダヒートとの開幕戦は、初めて演出を担当するということで緊張の連続でした。前日から設営や音響、映像のチェック、当日は早朝から会場に入り、なんとかイベントも試合も滞りなく終わって、すべての業務が終わったのが夜10時過ぎでした。翌日どっと疲れが出ましたね」と苦笑い。
開幕戦では神戸スティーラーズの勝利後、場内で花火の打ち上げを行ったが、昼間ということもあり見えづらく、あまり効果的ではなかったと反省も。
また、ホストゲームが2週続けて行われた第10節埼玉パナソニックワイルドナイツ戦、第11節花園近鉄ライナーズ戦では、同時進行で準備を進めるため、一体どの試合のことを進めているのか頭が混乱したと話す。
時間に追われながら目の前のことに無我夢中で取り組んで、なんとか完走した昨シーズン。印象に残るホストゲームを尋ねると、3月3日、東大阪市花園ラグビー場で開催の第8節トヨタヴェルブリッツ戦だと教えてくれた。
「この日はひな祭りにちなんで、『ガールズデー』というテーマでイベントや演出を考えました。場内で流す音楽は女性アーティストの楽曲にして、試合前のトークショーには女性をゲストに呼ぼうと思い、女性レフリーでパイロットとしても活躍する神村 英理さんに来ていただきました。オファーのメールをして、やり取りした結果、多くの方々に神村さんのことを知っていただきたいという熱意が伝わり、快諾していただけて嬉しかったですね。トークショーも盛り上がりましたし、やって良かったと思える企画の1つです」
ホストゲームでは試合終了後に選手がグラウンドを1周してファンサービスを行う。市来氏は選手の誘導役として選手の側にいるため、スタンドにいるスティールメイツの笑顔を間近で見られることも頑張る原動力になったという。
「ミスをしてしまって落ち込むこともありましたが、街やお店で自分が制作に携わったポスターやチラシを見ると嬉しかったですし、チームの役に立っているのかなと思いました」
今シーズンのポスターは共同キャプテンを中心に昨シーズン活躍した選手や代表選手で構成。また、シーズンテーマ「RISE」に合わせて、視線が上を向いている写真を使用するこだわりも。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
お客様基点でより楽しい演出を
「フロントスタッフ一人ひとりが『もし自分がお客様だったら…』を想像しながら、スティールメイツやパートナー、会社といったすべてのステークホルダーの目線で取り組んでいます。印刷物も、ホストゲームの演出も、お客様第一を意識し進めています」
お客様がどんな情報を求めているのかを考えて、試合告知チラシにはホストゲームで行われる“KOBE SMILE PARK”の情報を盛り込んだ。
試合会場で配布する応援パンフレットはこれまでのA4サイズからカバンにも入れやすく、持ち運びが便利なようにと、横10cm×縦21cmのコンパクトなものに。
印刷物はビジュアルだけでなく、使い勝手の良さや情報にもこだわった。
ホストゲームの演出では、昨シーズン実施したアンケートをもとに内容を検討し、より楽しんでいただけるイベントを行うと力を込める。
「昨シーズンと同じく、今シーズンも試合ごとにテーマを決めて、それに添った演出を考えています。また、昨シーズンのホストゲーム最終戦で実施し、アンケートでも高評価を得ていたABCテレビの伊藤 史隆アナウンサーによる場内実況も行います。ほかにも、スティールメイツや対戦相手のファンの皆様が喜んでもらえたり、チームと一体となれるような演出だったりを考えています」
さらに現時点ではまだ発表できないというが、
「チーム初の試みもありますので、発表を楽しみにしていてください!」
と、いつものふわっとした表情から一転し、強い決意を感じさせる顔つきを見せた。
今シーズン、市来氏が手がけるホストゲームの演出をぜひ期待していて欲しい。
取材・文/山本 暁子(チームライター)
応援パンフレットなどの制作と同時に、開幕に向けてPVや震災ムービー、ホストゲームのイベント企画などの業務に追われる。「どうしても案件が重なるので大変ですが、『SMILE TOGETHER』のチームビジョンに則って、笑顔を絶やさず業務を行います!」 【コベルコ神戸スティーラーズ】
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25 第2節
12月29日(日)14:30KICK OFF
コベルコ神戸スティーラーズVS横浜キヤノンイーグルス
@ノエビアスタジアム神戸
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