【柏レイソル】残留争いからの光明を「2024Reysol Report Vol.21」

柏レイソル
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「一桁順位・7位以内」。これが開幕前に掲げたチームの目標だった。ただ、準優勝に終わった昨季の天皇杯決勝では、内容的には川崎フロンターレを上回ったという自負があったのだろう。選手たちに目標について話を聞いてみると、開幕前には「タイトル」というワードも飛び出していた。

天皇杯の苦杯を糧に2024シーズンも大車輪だったサヴィオ 【©️KASHIWA REYSOL】

 シーズンの始動後からチームは上積みをめざして取り組んだ。主な内容が、昨年の守備を継続しながら、いかに自分たちが相手を押し込んで敵陣でプレーできるか。昨季の終盤戦は勝ちきれない試合が原因で最終節まで残留を決めることができなかった。その反省点からも、得点力の向上は必須事項だった。

 しかし昨季の総得点33に対し、今季は36試合を終えての総得点が38と、劇的に得点数が増えたわけではない。それでも、リーグ全体のデータを見ると、シュート数5位、クロス本数5位、敵陣ペナルティエリア侵入回数2位など、非常に高い数値が出ており、相手の守備を崩しきる攻撃の形や、決めきる最後の精度という課題があったにせよ、上積みがなかったわけではない。

 実際に開幕直後から4月までの試合では、今季から新たに取り組んできた攻撃面の変化を感じさせるシーンは見られていた。第2節ヴィッセル神戸戦(○1−0)、第3節ジュビロ磐田戦(○1−0)、第6節セレッソ大阪戦(△1−1)、第9節浦和レッズ戦(○1−0)などは内容的にも評価でき、開幕10戦で喫した敗戦はわずかに1敗だけだった。

第2節、新加入FW木下康介の初ゴールで前年王者に土をつけた 【©️KASHIWA REYSOL】

 チームにとって大きく響いたのは、4月下旬から約3カ月間も続いた連戦だろう。中2日、中3日の連戦のさなかでは、選手の疲労回復やコンディション調整が優先されるため、戦術的なトレーニングがほとんどできない。戦術というものは、結局は日々の反復練習の積み重ねの結果である。連戦に関してはどのチームも同じ条件ではあるが、今季から攻撃面の新たなトライへ着手したレイソルにとっては、3カ月間もチーム全体で十分な戦術トレーニングの時間がとれなかったことは、得点力不足という攻撃面の課題が解消されなかった原因の一つでもあった。

 さらに、シーズンの途中には細谷真大と関根大輝がAFC U23アジアカップとパリ五輪でチームを離れ、5月以降は主力選手にケガ人が出た時期でもあった。こうした主力不在の事態では、チームの総合力が問われるのだが、レギュラーメンバーを脅かすような若手の台頭をはじめ、チーム戦力の底上げという点でも物足りなさが残った。

レイソルと五輪代表とA代表。細谷真大は多忙を極めた 【©️KASHIWA REYSOL】

 2月の開幕から4月までの1敗に対し、5月から7月までに8敗を喫し、そこで大きく順位を下げた。
 また、チームの守備面に関して、古賀太陽は「失点こそしているが、守備の組織自体は大きく崩れていない」と話す。チームが抱えていた守備面の課題は、戦術以前に、切り替え、集中力、球際、予測、判断といった選手個々の部分ではないだろうか。
 というのも、試合開始15分以内の失点が11、そして後半アディショナルタイムの失点が7と、総失点の4割近い失点が立ち上がり、もしくは終盤に喫しているのだ。90分全体を見れば、やろうとすることができている時間の方が長い。しかし試合開始、あるいはラストの数分間で隙を作り、そこを突かれて失点を許す試合が非常に多かった。

前節新潟戦も追加タイムでの失点でドロー、J1残留を決めきれなかった 【©️KASHIWA REYSOL】

 今季クリアできなかったこれら多くの課題は、来季へ持ち越すことになった。これらを一つひとつクリアできなければ、強いチームにはなれない。その課題克服に再度挑戦するためにも、今節のホーム最終戦に勝ってJ1残留を決める。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤
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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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