ふたたびの箱根路へ総合力で挑む 2025箱根駅伝予選会で本戦出場権を獲得

日本大学SPORTS
チーム・協会

昨年の予選会に続き個人1位となった#65シャドラック・キップケメイ選手(文理学部・2年) 【共同通信社】

2024年10月19日(土)、第101回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)予選会が東京・立川市(陸上自衛隊立川駐屯地スタート~立川市街地~国営昭和記念公園ゴール=21.0975km)で開催された。出走した12名のうち上位10名の合計タイムで順位を競うハーフマラソンのレースで、日本大学陸上競技部特別長距離部門の選手たちは、逆境を跳ね除けるチーム一丸の力走を見せて総合7位。見事に2年連続91回目となる箱根駅伝本戦の出場権を獲得した。

過酷なレースを “団結力” で乗り切る

気温23.2度、10月中旬とは思えない強い日差しが降り注ぐ中、午前9時35分、箱根駅伝本戦出場の10枚の切符を賭けて43校509名のランナーが一斉にスタート。その3時間前、レース会場に到着したチームバス内で発表された12名の出走選手たちも、2大会連続出場という目標に向けて力強く走り出した。

立川駐屯地内の周回コースを集団走で走る#66高田眞朋選手(スポーツ科学部・2年)・#69長澤辰朗選手(文理学部・1年)・#67山口彰太選手(スポーツ科学部・2年)・#59岡田祐太選手(法学部・4年)・#68山口聡太選手(文理学部・2年) 【共同通信社】

立川駐屯地内滑走路を3周する序盤は、昨年の予選会で個人トップだった本学のシャドラック・キップケメイ選手(文理学部・2年)を中心とした各校の留学生選手15名が先行し、その後を日本人選手の大集団が追いかけるという例年通りの展開となる。

やがて、選手たちは立川市街地のコースへと出ていったが、距離を追うごとに先頭グループからも1人2人と遅れ始め、残り約7kmとなる昭和記念公園に入ってきた時には、キップケメイ選手ほか5名の集団になっていた。

一方、各校の日本人選手たちも、時間と共に増していく暑さとも戦いながら、通常よりややペースの遅い慎重な走りで前を追う。本学は2グループに分かれての集団走というレースプランで臨み、10km地点では10人通過順で13番目ながら、合計タイムでは総合8位。公園内に入った15km地点でもその順位を維持したまま、起伏に富んだ後半の勝負所に入っていった。

「中盤まで集団走で交代しながら引っ張っていき、予定通りのペースで行けました」と話す副主将の大仲竜平選手(スポーツ科学部・3年)は、「市街地では日除けがなく暑さを感じていましたが、公園内は木陰もあって少しは涼しく感じたので、最後までしっかり上げていきたいと思っていました」と、チームプラン通りに15km過ぎから徐々にペースを上げて前へ出ていった。

先頭集団を引っ張る#65キップケメイ選手 【日本大学】

公園内で集団走をする#60大仲選手・#57安藤選手・#64山口月暉選手 【日本大学】

今年の箱根駅伝3区で区間4位の好走を見せた安藤風羽選手(文理学部・4年)は、「日本人エース」としての自負を持って予選会に臨んだが、「集団で走っていて、前のペースが上がった時についていくのが厳しくなった」という。しかし、「無理してついて行くよりも、一旦、後ろにいる他校の集団について立て直そう」と切り替えたことが奏功し、「1秒でも自分のタイムを上げられるような走りに変えたことで、最後まで粘りの走りができました」。

先頭集団から抜け出し、山梨学院大のキビエゴ選手と20km過ぎまで競り合ったキップケメイ選手は、最後のスパートで相手を振り切り、2年連続の全体トップでフィニッシュ(1時間00分59秒)。レース後は上達した日本語で「暑い。とても疲れた。でも一番になってうれしい」と話し、「タイム?まぁまぁ」と、はにかむような笑顔を見せた。新雅弘監督も「リラックスして走れていたし、自分が1番を獲ると言っていて、その通りになったので良かった。立派でした」と、その快走を讃えた。

後続の選手たちが次々とフィニッシュラインを駆け抜ける中、本学の日本人トップ(全体34位)でゴールしたのは大仲選手。「目標タイムよりはちょっと遅かったのですが、チームプラン通りに最低限の走りができたことは良かったと思います」と納得の表情で振り返った。

個人2連覇を果たした#65キップケメイ選手 【日本大学】

日本人トップでフィニッシュした#60大仲選手 【日本大学】

日本人2番手の#57安藤選手 【日本大学】

またラスト1kmで意地を見せて盛り返した安藤選手は、当日変更で今年の箱根路を走れなかった冨田悠晟選手(法学部・3年)と同タイムで個人57位・58位。以下、110位・高田眞朋選手(スポーツ科学部・2年)、147位・大橋優選手(法学部・4年)、156位・山口彰太選手(スポーツ科学部・2年)、176位・岡田祐太選手(法学部・4年)、182位・鈴木孔士選手(法学部・3年)、183位・長澤辰朗選手(文理学部・1年)、241位・山口聡太選手(文理学部・2年)と続いた。山口月暉選手(法学部・3年)は、残り1㎞付近で熱中症により転倒したが、電波障害による携帯電話の不通でチーム関係者に情報が入って来なかったため、棄権の判断がされず非常に危険な状況にあった。しかし、山口選手は何度も立ち上がってはゴールをめざして歩き続け、気力で完走を果たした(480位)

力走する#62冨田選手 【日本大学】

粘りの走りを見せた#61鈴木選手 【日本大学】

力走する#58大橋選手 【日本大学】

レース終了からおよそ30分後、運命の結果発表が始まった。上位校の名前が読み上げられるたびに会場内にどよめきと歓喜の声が湧き起こる。
果たして「第7位、日本大学、10時間56分53秒」というアナウンスが会場に響き渡った。その瞬間、整列して発表を聞いていた選手たちは、歓喜に湧くこともなく揃って一礼をすると、安堵の表情を浮かべながら手を叩き、何人かは隣に並ぶ選手の肩を抱えて喜びを分かち合い、また目に浮かんだものを拭う選手もいた。

その後、選手控えブース前で行われた報告会で、新監督は「皆さんからの応援が選手の追い風になりました。選手の団結力、総合力で箱根駅伝に出場する権利を取ることができました」と、応援に駆けつけた家族や関係者、ファンに謝辞を述べた。また、怪我のためエントリー外となった中澤星音主将(経済学部・3年)は、「自分は選手として貢献できませんでしたが、選手12人を含むエントリーメンバー14人が全員頑張ってくれた結果、箱根駅伝に出場することができます。今後も本戦に向けて全員で頑張っていきます」と力強く決意を述べ、その言葉を聞く選手たちの表情も、少し引き締まったように見えた。

2年連続での箱根駅伝出場決定を関係者やファンに報告する選手たち 【日本大学】

レース前の不安も強い思いで払拭

「正直ホッとしています」と、いつもの柔和な笑顔でマスコミの取材に答える新監督は、「9、10、11番目あたりで、もしかしたら2・3秒の差で負けるかも」という不安もあったと話す。「3年計画の2年目ですが、今年は危ないかなと思っていました。故障者も多く、昨年度のチームに比べて選手が力不足なので」

練習は予選会を見据えて集団走を徹底的に行ってきたが、夏合宿以降は左足を疲労骨折した中澤主将のほか、10000mで29分台の記録を持つ天野啓太選手(文理学部・2年)が離脱するなど故障者が相次いだ。さらに、「2週間前には選手たちが体調を崩していた」と明かした新監督。だが、短い期間での再調整と選手ミーティングによって立ち直ったチームに、「4年生を中心に、選手たちがよくまとまってやってくれました」と成長を感じているようだった。

この日の予選会は、気温が30度近くまで上がり、湿度も80%近くあったことから体感温度は相当なものだったはず。そうした中でもしっかり結果を出したことに、新監督からは「昨年より集団走はバラバラになったけれど、これだけ暑かったら仕方ない。厳しい気象状況の中でよくみんな粘り抜いてくれました。100点満点です」「選手が箱根に行きたいという気持ちが強かったんだと思います」「不安もあったと思いますが、それを跳ね除けてやってくれたので、自信になったと思います」と、選手たちを讃える言葉が相次いだ。

また主力選手2人が欠けての総合7位という結果に驚きを語った記者に対しては、「チームの総合力の結果ですね。日本大学は総合力しかありませんし、応援してくれる人も含めてみんなが家族、1つのファミリーです」と語り、笑いを誘った。

選手たちの努力を間近で見てきた早見英晃学生コーチ(経済学部・4年)も、「ギリギリまで選手たちは切羽詰まっていましたが、みんなが最後の最後まであきらめずに走った結果だと思います」と胸を張る。
「中澤主将の怪我などがあっても、早い段階から方向転換できたのでチームの雰囲気としては悪くなかった。4年生や大仲副主将がしっかりチームをまとめて、引っ張ってくれていたので、こうして最後にまとめられたのかなと思います」と、本戦出場を決めた喜びを噛みしめていた。

本戦に向け、さらなる団結と底上げが必要

来年1月2日・3日の箱根駅伝本戦まであと2ヶ月。それぞれに次なる目標への思いを聞いた。

選手・関係者の笑顔があふれる中にあって、暑さの影響で思うような走りができなかった鈴木選手は、「チームを引っ張る立場だったのに、逆にチームに迷惑をかけてしまい、申し訳ないという気持ちでいっぱいです」と表情は固いままだった。それでも「本戦では、シード権獲得に貢献できるような走りをしたい。そのために、もう一度練習からチームを引っ張っていき、自分も強くなる。山登りを走りたいのでスタミナとメンタル面の強化とともに、トラックで勝負する力も鍛えてスピードも身につけたい」と、2度目の箱根路への課題を口にした。

「本当は、シャドラックの次に日本人トップでゴールしたかった」と笑う安藤選手は、「前回大会以上の走りを求められると思いますが、それをプレッシャーではなく力に変えて挑みたい」と意気込む。「あと2ヶ月、今度は主要区間で区間賞を狙うつもりで練習し、賞を狙えるような走りをしたいと思います」

「今年は10区を走っただけで終わってしまった」という大仲選手も、「今度は上位の大学と勝負できるようにしたい」と力強く話す。「残りの月日でしっかりチームをいい状態に持って行って、今年以上の結果を求めていきたいと思います」と、副主将として前回大会とは違う思いも胸に抱き、本戦に挑んでいく。

「今度も2区を走りたい。ライバルはケニアの留学生のみんな」と、今年はエース区間の2区を任されるも最後に失速したキップケメイ選手は、リベンジに燃えている。

予選会は裏方としてチームを支えた中澤主将は、「みんなが自分にチームへ貢献できるチャンスをくれた。もっと練習を積み、万全な状態で箱根を走りたい」とチームメイトへの感謝を語り、主将としてレースの中でチームを牽引すべく、さらなるレベルアップをめざしている。

本戦でのチームの躍進と自身の活躍を誓う中澤主将 【日本大学】

「チームが一体となるよう意識しながら取り組んできた」と話す大仲副主将 【日本大学】

早見学生コーチも本戦に向けて「チームの底上げが一番」と話す。「上にいる選手が安心しないように、下からどんどん上がってきて、予選会を走った選手も自分が安泰ではないんだという認識を持ってもらい、全体としてチーム力が上がっていけばいいなと思います」

箱根駅伝本戦での目標を聞かれるたび、「今年は15位だったので、1つでもそれを上回りたい」と繰り返す新監督。「目標タイムなどは一切決めません。故障していた選手も復帰できたらプラスになりますし、本戦を走るメンバーも予選会の12人から10人になるのでまた変わってきます」と、選手の成長に期待を寄せる。そして、「予選会でみんながまとまって結果を残してくれたように、箱根駅伝もまた総合力で戦っていきたいと思います」と力を込めて語った。

本戦出場を決めた今、今度はチーム内での熾烈な戦いが始まる。12月中旬の本戦エントリー発表時に、チームはどう変わっているのか。誰がエントリーメンバーに入るのか。その戦いこそ、新春の箱根路217.1kmをピンクのタスキをつなぐための大きな力になっていくはずだ。

チームを支えた4年生たち(左から安藤選手、大橋選手、岡田選手、早見学生コーチ) 【日本大学】

「箱根駅伝に向けていいステップを踏めたと思います」と話す新監督 【日本大学】

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著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

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