【柏レイソル】新たな選手がもたらす活力「2024Reysol Report Vol.18」

柏レイソル
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 今から10年前の2014年。レイソルはJ1リーグ第14節のヴァンフォーレ甲府戦を0−3で落とし、続くベガルタ仙台戦こそ0−0で引き分けたものの、第16節サンフレッチェ広島戦(●2−5)、第17節清水エスパルス戦(●0−3)と、大敗が続いた時期があった。そして迎えた第18節の相手がリーグ戦で3位に付け、4連勝と絶好調にしてリーグ最多の30得点を記録する川崎フロンターレだった。直近4試合で1分3敗、2得点11失点のレイソルとは対照的であり、客観的な見方ではレイソルの不利は明白だった。

 なぜ、こんな昔話から始めたかというと、当時と今のレイソルの置かれている状況に共通点があると感じたからだ。簡単に失点を許してしまう守備面と、FWには工藤壮人とレアンドロというストライカーを擁しながら、ネットを揺らすことができない攻撃面。当時のレイソルも苦しい状況に置かれていた。

【©️KASHIWA REYSOL】

 ただ、重要なのはここからである。迎えたホームのフロンターレ戦では、大幅にメンバーが入れ替わった。しばらく試合から遠ざかっていた現ヘッドコーチの栗澤僚一がボランチに入り、当時プロ2年目で経験の浅い秋野央樹が3バックの左を務めた。また、右のウィングバックで起用された現U-18監督の藤田優人は、前年のヤマザキナビスコカップ決勝で負った膝の大ケガから復帰初戦となった。

 そして、栗澤は中盤の守備と球際で存在感を示し、秋野が最終ラインから秀逸な配球を見せ、藤田は復帰戦にして劇的な決勝弾を決めた。レイソルは、それまでの不調が嘘のようなハイパフォーマンスを見せ、4−1とフロンターレを力でねじ伏せた。それまで出場機会の少なかった選手が、それぞれの特長を存分に発揮することで新たな活力をもたらし、チームは劇的な変化を見せたのである。

【©️KASHIWA REYSOL】

 今節、レイソルは犬飼智也、手塚康平、戸嶋祥郎の3選手を出場停止で欠く。ゲームをコントロールするダブルボランチと、最終ラインで守備陣を統率するセンターバックの不在は、間違いなく痛手である。しかも5試合未勝利が続き、直近2試合こそ無失点に抑えているものの、5試合で2得点と攻撃面にも課題を抱えている。そして今節迎える相手が、リーグ2位の破壊力を誇る横浜F・マリノスだ。

【©️KASHIWA REYSOL】

 出場停止が3人いる以上、メンバーは確実に入れ替わる。井原正巳監督は、そこで新たに試合に出る選手たちに期待を寄せる。
「そういう時のためにチームの全員が試合に出る準備をしてここまでやってきています。代わって出場する選手がチャンスだと思って、役割を全うしてくれると思っています」

 これまで出場機会が限られていた選手たちは、いつか来るチャンスのために、気持ちを切らさずに準備を続けてきた。その一人、立田悠悟は「自分の良さは自分が一番分かっています。それをやる状況か、やらない状況かをコントロールして意識してやりたい」とモチベーションの高さを公言している。土屋巧もまた、夏以降は出場機会が限られた中でも「局面で絶対に負けないということは変えずにやってきたので、そこは存分に発揮していきたいですし、味方を誘導して自分のところで奪うことも意識してやってきました」と、常に自分自身に矢印を向けてトレーニングに励んできた。

 過去には、出場停止やケガ人が出た非常事態において、新たにチャンスを得た選手がチームに活力をもたらす例は少なくはなかった。今節のF・マリノス戦も、そんな選手たちの活躍で、数年後の語り草になる一戦になることを望む。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤

【©️KASHIWA REYSOL】

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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