世界で戦うために転向したボッチャで見せる"生き様" | 火ノ玉JAPANインタビュー #2:有田正行(BC3)/有田千穂(ランプオペレーター)
【©︎日本ボッチャ協会】
第2回となる今回は、電動車椅子サッカーからボッチャに転向し、初のパラリンピックへの切符を掴んだ有田正行選手(BC3/株式会社電通デジタル)。初回でご紹介した一戸彩音選手との26歳差ペアで、昨年末ポルトガル・コインブラで開催されたパラリンピック最終予選会を準優勝し、パリへの切符を獲得。ランプオペレーター(RO)を務めるのは妻・千穂さん。一戸選手の父子に負けず、夫婦二人三脚、こちらも息の合ったインタビューをどうぞ。
世界で戦える力のあるアスリートになる、そうあり続けるために始めたボッチャ
僕は2017年の4月からボッチャを始めたのですが、きっかけになったのは高橋和樹選手の講演会と体験会を見に行ったことです。その頃から自分が出来るパラ競技を探していました。その時には実際に自分でリリースが出来たわけではないのですが、これは自分の力でも出来る競技だというのがわかって、それがきっかけになりました。
そもそも自分がボッチャを始めようと思ったのは「世界で戦える力のあるアスリートになること、そうあり続けること」というのがあって、今でもずっと自分のモットーになっています。そのためには、国際大会に出ないといけないですし、その大会がなければならないので、パラリンピック競技であるボッチャに転向して、今に至ることが出来て、すごくよかったなと思っています。
ー 有田選手が描くパラリンピックへのロードマップとは?
2017年に(ボッチャを)始めたということで、もちろんこの間、東京大会もあったわけです。自分の目標、ずっとロードマップを書いているんですけど、以前の競技(電動車椅子サッカー)も含めて、3年やそこらではパラに出ることは出来ないだろうなと。そんなに甘いものではないだろうなというのもよくわかっていたので、この2024年のパリ大会を目指してずっと取り組んできて、それが実ってすごくよかったなと思っています。それを一番側で支えてくれて、ランプオペレーター(RO)として頑張ってくれている妻にはすごく感謝しています。
ー ROの千穂さんは電動車椅子サッカーをしていた時代からのサポート?
(千穂)そうですね。私たちの出会いは2009年なので、ボッチャを始めるまでの約8年間は、彼が電動車椅子サッカーの選手で私はチームスタッフとして活動していました。
ー より勝敗への影響度も大きいROというポジションについてはどう感じていますか?
(千穂)私はあまり表に出るのは得意なタイプではないので、最初は自分が選手という立場でコートに立つというのは想像は出来なかったですし、ランプオペレーターという役割はどういったものなのか、どれくらいの役割を占めるのかっていうこともわからなかったので、最初から今の状況が想像出来ていたら反対したかもしれないですね(笑)。
(正行)うまいこと引きずり込みました(笑)。
(千穂)やっぱり練習の成果が試合で出たり、作戦を普段から練っていたことが試合で発揮出来たり、強い選手と対戦をして負けることももちろん自分たちにとっていい刺激になりますし、負けても次への希望を持てるというか、まだまだ成長出来るって自分たちで思える試合も経験してきました。自分たちはまだまだ発展途上の二人だなとは思っています。
ー パリに向けて東京からの3年間でターニングポイントになった大会/試合があれば教えてください。
いくつかターニングポイントがあったと思うんですけど、その中でも2023年のアジア大会ですね。杭州(中国)で行われた大会なんですけど、自分の中では浮上のきっかけがつかめた大会かなと思っています。2021年の日本選手権で優勝して、その後何回か国際大会にも出させてもらったのですが、2022年の日本選手権では一回負けているんです。その頃はすごく調子が悪くて、自分の中でちょっとスランプなのかなぁと、伸び悩んでいる時期だったのですが、それをうまく去年のアジア大会で修正してきたことは大きかったです。自分としてはちょっとプレースタイルを変えてやってきたことが通用するということが確認出来て、そこからは自分のボッチャがしっかりと出来ているので、この調子でいきたいなと思っています。
【©︎日本ボッチャ協会】
有田選手のこだわり「アリタイム」とは?
一球で状況を打開するプレーを観てもらいたいです。かなり劣勢だなと思われる場面でも一球で形勢逆転するようなプレーが僕は得意というか好みなので、そういうプレーが出ると勢いもつきますし、そういう練習もずっとしています。そういうところをよく見てもらえたら嬉しいなと思います。
ー 有田選手にはルーティンはありますか?
「アリタイム」です。人に迷惑がかかるくらい早く準備をします。それはふざけているわけではなくて、やっぱり忘れ物があったり、試合のコールルームであったり、アップであったり、しっかり準備をして、自分の中でその一つ一つのイメージを固めて入っていきたいので。無駄に早く行くのではなくて、行ったところでちゃんとイメージを固めて、いくつかのパターンを頭の中に描いて入ろうと。そういう時間です。
ー 「アリタイム」はしっかりと千穂さんにも共有されているのですね?
(千穂)「アリタイム」は、私はだいたい集合時間は嘘を伝えられます・・・。実際のチーム集合時間より30分くらい早い時間が私に伝えられるんです。それが「アリタイム」です。
有田選手はどんな人?
タイヤがついているものは大体好きなんですけど、自家用車はアメ車に乗ってます。シボレーのエクスプレスという車で、子供の時から乗りたいなと思っていて、実際に買って乗ってるんですけど、すごい不便です。デカすぎて(笑)。
あと車椅子にもこだわりがだいぶあるので、上下左右前後、色々動きます。それも全部ボッチャのためですけどね。良いプレーが出来るように、日々車椅子を進化させてます。
ー 好きな食べ物について。サーモンが好物だということですが?
そうですね。週5はサーモン食べてます(笑)。脂の乗ったサーモンです。(僕の身体は)ほぼサーモンで出来てます。刺身が一番好きですけど、炙っても焼いても、なんでも食べます。
ー 尊敬する人物は?
うちで飼ってるチワワにもアイルっていう名前を付けるほど、アイルトン・セナが好きで。彼の人柄に結構影響を受けたことがあって。ただ走るのが上手いとか、速いとかいうことではなくて、技術者への尊敬の念とか、そういうものがすごくあるドライバーで、当時ホンダのエンジンを積んでいたんですけど、わざわざ日本に来てすごく良いエンジンだっていうのを感謝をして会社を訪問するとか、スタッフを褒めるとか、そういうことを忘れないドライバーだったので。僕もそういう尊敬している部分を取り入れて、火ノ玉JAPANチームのスタッフとか、トレーナーとか、監督とか、みんなに感謝しながらプレーしたいなって思っています。
ー 有田選手が人生を通して実現したいことは?
僕は目標を絶やさないことだと思っています。日々過ごす中で、ダラっと過ごすのがあまり好きではなくて、何か目的があって、目標があって、そのために日々積み上げていくことが好きなので、たとえボッチャを辞めたとしても何か目標を立てて、しっかりとそこに向けて進みたいなと思っています。
ー ずばり、パリでの目標は?
パリパラリンピックは目標にしてきたものでもあり、ただそこはゴールではなくて。でも観て下さる人には「この人の生き様やな」って言うぐらい、自分の足跡を残せるぐらい、しっかりやってきたものを、自信を持ってそこで表現したいなと思っています。
【©︎日本ボッチャ協会】
プロフィール
生年月日:1980年3月24日
出身地:兵庫県
クラス:BC3
所属:株式会社電通デジタル
過去の戦績
【国際大会】
BISFed 2019 Guanzhou Boccia Regional Open - 優勝(個人・BC3男子)
Dubai 2021 World Boccia Asia-Oceania Regional Championships - 4位(個人・BC3男子)
Bahrain 2022 World Boccia Cup - 準優勝(個人・BC3男子)/6位(BC3ペア)
Rio de Janeiro 2022 World Boccia Championships - 5位(個人・BC3男子)/4位(BC3ペア)
杭州2022アジアパラ競技大会 - 3位(個人・BC3男子)
Hong Kong 2023 World Boccia Asia-Oceania Regional Championships - 5位(個人・BC3男子)
Coimbra 2024 World Boccia Paralympic Qualifier - 準優勝(BC3ペア)
Montreal 2024 World Boccia Cup - 優勝(BC3ペア)
【国内大会】
第19回日本ボッチャ選手権(2017) - 3位(個人・BC3男子)
第20回日本ボッチャ選手権(2018) - 3位(個人・BC3男子)
第21回日本ボッチャ選手権(2019) - 準優勝(個人・BC3男子)
第23回日本ボッチャ選手権(2022) - 優勝(個人・BC3男子)
第24回日本ボッチャ選手権(2023) - 準優勝(個人・BC3男子)
第25回日本ボッチャ選手権(2024) - 優勝(個人・BC3男子)
ランプオペレーター
有田 千穂(ありた・ちほ)
生年月日:1982年11月12日
出身地:兵庫県
クラス:BC3
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