「俺がNJPWのリーダーとしてベストだし、俺ほどプレッシャーに耐えながら結果を出し続けられる選手はいないんじゃないか?」『G1』初優勝へ向け決意表明! ザック・セイバーJr.選手インタビュー!!

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いよいよ開幕目前の『G1 CLIMAX 34』。その中でも優勝候補の一角として注目を集めているのが、Aブロックのザック・セイバーJr.。変幻自在のサブミッションマスターが、並々ならぬ決意を持って挑む今年の『G1』、その心境を直撃!

撮影/中原義史

■俺の考えでは、『G1』で優勝することはIWGP世界ヘビー級王者になるための“最短ルート”なんだ。

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――『G1 CLIMAX 34』の話に入る前に、ザック選手にとってここ最近は非常に忙しいスケジュールだったようですね。

ザック ああ、相変わらずだよ。

――メキシコでのエチセロ選手との試合から、『Forbidden Door』でのオレンジ・キャシディ選手まで、すべてが『G1』の前に行われました。休息を取って次の大会までの準備をすることを好む選手もいますが、それはあなたのスタイルではない?

ザック そうだな。体力的にも、自分を追い込んでいるときの方が身体の調子がいいんだ。休養は俺にとって邪魔なんだよ。もちろん『G1』のためにできるだけハードなトレーニングをしたいとは考えているよ。それに、去年防衛をし続けてきたNJPW WORLD認定TV王座戦は、『G1』の予行演習のようなつもりで戦っていたんだ。

――それはどういう意味でしょうか?

ザック 俺の考えでは、『G1』で優勝することはIWGP世界ヘビー級王者になるための“最短ルート”なんだ。すでに自分が王者であるつもりで試合には臨むようにしている。TV王者として、できるだけ多くの国や、さまざまな環境の下でもNJPWを代表するレスラーでありたかったし、この夏も、もちろんNJPWの代表であるつもりで世界中を回っている。

――『Forbidden Door』で戦ったオレンジ・キャシディ選手とは対照的な感じがします。第1回の『Forbidden Door』では、ウィル・オスプレイ選手がシングルマッチでキャシディ選手を破り、その後で『G1』の決勝まで勝ち進みました。あなたの今回の勝利も良いジンクスになるかもしれません。

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ザック ファンがオレンジ・キャシディをどう見ているのかということに関しては、さまざまな考え方があると思うんだ。彼はAEWのトップレスラーの一人であることは間違いないし、昨年1年間の実績だけでも目を見張るものがある。俺が彼と戦ったのには理由があるんだ。ウィルができなかったことを俺は成し遂げる、そしてもちろん『G1』では必ず優勝するつもりさ。
 
――あなたは今まで行われた『Forbidden Door』のすべてに参戦していますが、この大会の役割に関してはどのような感想をお持ちでしょうか?

ザック 『Forbidden Door』には、ファンの心の中には必然的に沸き上がる……より感情移入がしやすい大会なのではと思うよ。AEWでは定期的にNJPWのレスラーを見かけるようになってきたし、たとえ扉が禁断のものではなくなったとしても、それは悪いことではないと思うんだ。

今年はCMLLとSTARDOMが大会の目玉になっていたよな。MJFとエチセロの試合は『Forbidden Door』でしか見られない試合だった。NJPWのレスラーたちは、自分たちをより際立った存在として見せつけなければならないプレッシャーがあるように感じたよ。年明けにある『WRESTLE DYNASTY』は、東京ドームでの開催ということで、AEWが主体じゃなくNJPWが主催者としてさまざまな団体とクロスオーバーする感じがとてもフレッシュだよな。非常に楽しみにしているよ。

■オーカーンがもう一つブレイクできない理由は、彼があまりにも万能であるということだと思うんだ

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――今回の『G1』は、2ブロック10人制という以前の形式に戻りましたが、同時に棚橋弘至選手、矢野通選手、石井智宏選手などベテラン勢がトーナメントで敗退したため出場しません。とても新しい方向性を感じる大会になる気がします。

ザック 今回採用された予選制度は凄くいいと思うし、今後も引き続き、残すべき制度だとも思っているよ。ここ数年の試合で勝ち越しをしてないのであれば“予選”を通過しなければならないということさ。タナハシやイシイがいないのは、とても不思議な感覚だけど、そのぶん若いレスラーたちが大きな舞台に出る権利を手中にすることになったよな。

――では、『G1』の話題へと進みましょう。大阪でのグレート-O-カーン選手との試合からあなたの『G1』での戦いは始まります。オーカーン選手は勢いがある時とない時の差があるようにも感じますが、大阪の地では何度か大きなインパクトを残しています。

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ザック 彼がもう一つブレイクできない理由は、彼があまりにも万能であるということだと思うんだ。格闘技をバックボーンに持ちつつ、プロレスのさまざまな側面を受け入れることができている。彼の集中力を引き出すには俺と戦うのが一番だと思うし、あれだけ熟練した技術を持つ相手と対戦するということは、俺自身のテクニックを確かめることにもつながるんだ。彼は最初の相手として「とてもふさわしい」と思ってるよ。

■俺ができる最高にインパクトがあることは、テツヤ・ナイトーを倒してあのIWGP世界ヘビー級王座を獲得することに他ならない。

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――第2戦の相手は内藤哲也選手です。3年前の『G1』開幕戦ではザックvs内藤という同じカードが行われましたが、内藤選手はその後、ヒザの負傷で全試合を欠場することになってしまいました。今回、王者で出場する彼の心境をどう想像していますか?

ザック 今の時点でナイトーを考慮の対象外にするわけにはいかないよな。俺も大人になったよ(笑)。彼がIWGP 世界ヘビー級王座に返り咲いたことは個人的にはとても嬉しかったんだ。もちろん、俺が『G1』で優勝した後に対戦するのはIWGP 世界ヘビー級王者だし、ジョン・モクスリーとの対戦も熱望しているんだが、俺ができる最高にインパクトがあることは、テツヤ・ナイトーを倒してあのIWGP世界ヘビー級王座を獲得することに他ならない。

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――なるほど。

ザック まあ、彼は俺と同じブロックにいるので、短いスパンで俺と何度も闘わなければならないことになるのが残念だがな。

――あなたたちが2人ともブロックで3位以内に入れば、再度あなたたちは戦うことになる可能性もあります。その後、ザック選手はIWGP世界ヘビー級王座を獲得できる可能性もありますよね。

ザック ナイトーの運がよければ、俺がまたケガをさせてやり、しばらくの間少し休めるようになるかもしれないけどな(ニヤリ)。

■カラム・ニューマンにはその若さゆえのプライドもあるだろうし、一緒にNJPWのリングでモダン・ブリティッシュ・プロレスの試合をファンのみんなに見せるのが楽しみだよ。

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――第3戦の対戦相手はカラム・ニューマン選手です。彼は2011年の『G1』に出場したラ・ソンブラ選手以来となる最年少の『G1』出場選手で、若いイギリス人選手の肩にはかなり重圧がのしかかっているのではと思います。同じイギリス出身として、あなたもそうした責任感を感じながら試合をすることはありますか?

ザック まあ、そういったプレッシャーがあることに関しては共感できる部分もあるよな(笑)。俺が彼くらいの歳の頃には、まだ『G1』には出ていないんだが、すでに来日は果たしていて、19歳でプロレスを始めたんだ。彼にはその若さゆえのプライドもあるだろうし、一緒にNJPWのリングでモダン・ブリティッシュ・プロレスの試合をファンのみんなに見せるのが楽しみだよ。

――下馬評を覆して『G1』に出場することになったカラム選手にとっての指標は何になるでしょうか?

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ザック 彼にとって重要なのは、自分のアイデンティティを確立することだ。明らかに彼はウィル・オスプレイの影に隠れていて、常に比較されてきている。普通であれば、このシリーズ『G1』は学びの場ではないんだが、彼にとってレスラーとしての自分を確認するチャンスなんだ。その結果に対しての考え方は恣意的なものになってしまう可能性もあるが、彼はこの『G1』で自分の成長の度合いを計ることができるんだ。

――カラム選手の存在は、オスプレイ選手とのライバル関係の延長線上にあるのではないかと思われるくらい、彼はオスプレイ選手との繋がりがありますよね。ザック選手はカラム選手から新しい何かを引き出してみたいですか?

ザック 意図的であろうとなかろうと、師匠から学ぶことは常にいくらでもあるものなんだ。ウィルがカラムにとって大きなファクターであることは知っているが、もし彼が俺にオスカッターを決めようとしてきたら、いったいどうなるか? 俺は彼が今までに食べたラーメンの数よりも多くオスカッターを食らってきたからな(苦笑)。彼がオスプレイに教わったことを使えないようにしたうえで、彼を成長させてやるのが俺の役割だと思っているよ。

■ジェイク・リーは俺たちのような、NJPWでメインイベンターとして活躍しているレスラーとは異なるスタイルの試合を見せてくれるだろう。彼の持っているような多様性は非常に重要だと考えている。

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――長崎では、ジェイク・リー選手との初シングルが待ち受けています。

ザック 彼とは2022年のフジナミ(藤波辰爾選手)のアニバーサリーマッチで一回タッグを組んだんだが、そのタイミングで全日本プロレスを離れることを発表したんだよな。その時俺は、彼にはNJPWに来てほしいと熱望していたんだが、彼はNOAHに行って大成功を収めた。

――たしかにそうでした。

ザック 元三冠ヘビー級王者で、元GHC王者。俺は彼の大ファンだし、彼はこのトーナメントで大きな足跡を残すと思うよ。彼は俺たちのような、NJPWでメインイベンターとして活躍しているレスラーとは異なるスタイルの試合を見せてくれるだろう。彼の持っているような多様性は非常に重要だと考えている。

■ショウタには素晴らしいところもいくつかあるが、エースを名乗ることにはまだ問題があるんだ。

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――福岡大会では海野翔太選手と対戦します。

ザック 腰を負傷している彼にとって、俺は最悪の相手になるだろうな。だが、試合をすることによって自分の本当のコンディションを理解できるというメリットもある。

――『NEW JAPAN CUP』に臨む際、海野選手に対しては、批判的な言葉もおっしゃっていましたね。

ザック “レイワ”の時代の選手たちは……いまや、“レイワ4人衆”とは呼べないよな。だったら、ゲイブ、ボルチン、カラムもそこに入れなきゃいけないと思う。ショウタには素晴らしいところもいくつかあるが、エースを名乗ることにはまだ問題があるんだ。もし彼がエースを目指すのであれば、それはそれで構わない。俺は主人公であるよりも敵役であることに満足しているんだが、もし彼がそのことだけに集中しているのであれば、彼の考えを変えることはできないだろう。

――海野選手がどんなレスラーから影響を受けているのか、その影響を受けている選手が多岐にわたりすぎているのでは、という指摘もあります。

ザック そうだな。若いレスラーが、自分自身が何者であるかの答えを見つけようとしているのであれば、まあ、それはそれでいいんだが、それとリング上から直接ファンに影響を与えようとすることとは、また別物なんだ。リングの外で自分をアピールしようとするときは、何でも壁に投げつけることができて、何が実際に刺さるかを確認することができるんだが、ひとたび試合のゴングが鳴ったら、自分が何をしようとしているのかという明確なビジョンを持たなければうまくはいかないんだよ。

■俺が見てみたいのは……。俺は“試合に勝とうとしているEVIL”が見たいんだ。

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――戦いの場は再び大阪に戻ります、そこでは鷹木信悟選手との対戦となります。

ザック ああ、シンゴと同じブロックになることができてうれしいよ。彼はリーグ戦を勝ち抜けば優勝は自分のもの、というレベルの選手だからね。彼がチャンピオンだった2021年に一度勝ったことがあるんだが、その時は『G1』開幕からあまりにも激しい試合をしてしまい、後半に入ってからは調子を落としてしまったんだ。

――8月6日には、後楽園でEVIL選手との対戦になります。今年、HOUSE OF TORTUREは非常にファンの興味を惹く存在となりました。特に今は、ファンの間では乱入&介入に関して多く議論されています。EVIL選手や成田蓮選手はどのような方向性に進むと考えていますか? 

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ザック HOUSE OF TORTUREには楽しませてもらったよ(笑)。俺のEVILについての認識は、俺がやってしまってもいいのであれば、ヤツを“どうにでもしてしまう”ことは可能だよ。でも、俺が見てみたいのは……。

――昔のスタイルのEVIL選手を見てみたい、ということでしょうか?

ザック いや、そういうわけじゃない。俺は“試合に勝とうとしているEVIL”が見たいんだ。NJPWでどうやったらトップになれるかについては、描くべき真っ白なキャンバスがある。そしてみんながトップを目指さなくてはならない。例年EVILには楽しませてもらっているんだが、今回はバチバチの戦いになるように仕掛けていきたいね。

■皮肉なことに、(ゲイブ・キッドとは)NJPWの純粋なエッセンスを象徴するような試合を、イギリス人2人が観客に見せつけるようなことになるのではと思うよ。

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――横浜大会、8月8日は、ゲイブ・キッド選手との試合になります。『G1』の同じブロックにはじつは3人の英国人レスラーが揃っていますね。

ザック それは頭の中にはなかったな!

――ゲイブ選手はイギリスのプロレスについてあまり肯定的に語る選手ではないのですが、逆にあなたはそれを大きなアイデンティティとしている選手です。

ザック ゲイブと俺は、お互い日本人ではないけれど、ある意味、とてもオーセンティックに(正真正銘の、本物の)NJPWを代表している選手たちであると思うんだ。ゲイブはNEVER無差別級王座の戦いと同じようなスタイルで、一方俺はストロングスタイルの原型を受け継いで戦っていると言えるかもしれない。皮肉なことに、NJPWの純粋なエッセンスを象徴するような試合を、イギリス人2人が観客に見せつけるようなことになるのではと思うよ。

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――ゲイブ選手はいつもアグレッシブで、ファンの賛否両論を招くような発言をしています。ですがそれでも「彼が本当にNJPWを愛しているのがわかる」というファンは大勢います。

ザック ファンは彼がNJPWの道場出身であることを知っているし、それがどれだけ大変なことなのかを理解している。彼にはチャンスがあると思うよ。昨年初めて参戦した『G1』では、彼はそのシステムを破壊しようとしていたんだ。今、彼は結果を出しながら、それでいて破壊的であり続けなければならない。DQやカウントアウトを繰り返していては、彼の成長はないんだ。彼にはその攻撃性を生産的なものに変えてほしいし、俺はそれを引き出す立場にいると考えている。

■相手へのリスペクトをベースにしながらも、感情の溢れる、時には怒りに満ちた状態となったSANADAを見てみたいんだ。

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――ブロック最終戦は長岡でSANADA選手と対戦します。SANADA選手については今大会に出場するどの選手よりも知っているかもしれませんが、そのあたりについては?

ザック 俺たちには暗黙の絆みたいなものがあって、それは試合を通じてどんどん深まっていくんだ。常にクールな振る舞いをし続けなければならなかったスズキグンにいた頃でさえ、俺のSANADAへの憧れを隠し通すことは不可能だった。おたがいの良さを引き出し合う戦いができるのではと思うよ。

――2018年の後楽園での試合では、SANADA選手のバックステージでのコメントが「頭から落とすだけがプロレスじゃねえんだよ」でしたよね。

ザック ロープを使わず、ほとんど殴り合わず、ひたすらテクニカルな試合だった。SANADAはモダンな要素を持っている選手なんだが、同時に非常にテクニカルなスタイルを保とうともしている。彼は最近欠場もしているので、今こそ基本的な技術を大いに生かした試合スタイルへと自身を変革させるべき時期なんじゃないかな。昨年の今頃は、彼はチャンピオンだったんだが、ファンからはNJPWのトップになったいう認識は得られてはいなかった気がするよ。

――彼は周囲から公平に扱われていなかったと思いますか、それともそれは彼の責任なのでしょうか?

ザック その両方だね。彼が魅力的なのは、自分に対して正直なところだ。でも、ナイトーのような選手と対戦するときは、ナイトーに締めの大合唱を言わせてはいけないんだ。俺は遠くから彼のことを見ていて、彼がもう少し自分の殻を破ってくれるんじゃないかと期待していた。相手へのリスペクトをベースにしながらも、感情の溢れる、時には怒りに満ちた状態となったSANADAを見てみたいんだ。

――なるほど。

ザック 彼は「Cold Skull」の名を払拭したわけではないし、もちろんそれ以上のものも持っている。彼が俺と同い年だからといって見下すつもりもない。とにかく、ナガオカにはいつもお世話になっているし、俺が養子縁組をしたいくらい魅力的な“ホームタウン”だから、そのホームタウンで試合をすることができて嬉しく思うよ。

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――今年の『G1』はプレーオフ方式で、得点が多い選手が準決勝に進出することができます。2位と3位の選手は、1位の選手よりも1試合多く試合をすることになりますが、それは1位の選手にとって決定的に重要なアドバンテージになると考えていますか?

ザック ブロックのトップには立ちたいし、ベストの成績を残したいとも考えてはいるが、もしブロック1位になることによって他の選手よりもこなした試合数が1試合少なくなる分有利になると思っている人がいるのであれば、その考え方は間違っていると思うよ。ところで、プレーオフ(トーナメント)の試合には時間制限はあるのかい?

――いいえ、時間制限はないと思います。

ザック 時間制限はあった方がいいな。ある程度、小さなゴールを決めておいた方がいいよ(笑)。

――時間制限があることはイギリス人の選手には不向きかもしれませんが(笑)。Bブロックにいる選手たちを見て、特に優勝決定戦で戦ってみたい選手はいますか?

ザック HENAREがNEVER無差別級王座のベルトを獲ることができたのはとてもうれしかったんだ。彼もまたNJPWの魂を持った選手の1人だし、彼がベルトを獲ることはずっと待ち望んでいたことだったんだ。だから彼には是非ブロックを勝ち上がってきてほしいね。

――HENARE選手は、あなたとは異なる真っ向勝負スタイルの選手ですよね。

ザック 俺は常に自分に忠実なレスリングをするよう心がけているが、対戦相手にはできるだけ個性的なスタイルを求めたいタイプなんだ。精神面のことを言えば、ブロック内総当たり戦によるストレスは全く気にならない。一緒にリングに上がる相手には、自分と同じようにトップに立ちたいという熱意を持っていてもらいたいし、HENAREはその熱意を持っている選手だと思う。

――あなたは「この『G1』で優勝しなければならない、今年優勝しなければ自分のキャリアは失敗だと考えている」とまで話していました。そのような考え方は大きなプレッシャーにはなりませんか?

ザック 『G1』優勝は、俺のキャリアに欠けている大きなものの1つなんだ。『NEW JAPAN CUP』では、俺は2度優勝しているし、好成績も残している。NJPWを引っ張っていくのは俺でなければいけないと口で言うのは簡単だが、特に今年の『G1』で優勝するということは、今まで以上に意味があることだと考えているよ。

――『G1』で優勝することイコール新日本をリードすることだ、と考えているのですね。

ザック それが俺の役目である必要はないとも思うし、NJPWの所属選手をはじめとする定期参戦している選手たちの中にはとても才能のあるヤツがたくさんいるんだ。でも、その選択肢の中で俺がリーダーとしてベストだし、俺ほどプレッシャーに耐えながら結果を出し続けられる選手はいないんじゃないかな? 

俺はもう20年もの間レスリングをし続けてきて、それでもケガをしたことは一度たりともないんだ。俺は誰よりもNJPWの過去・現在・未来を代表している存在なんだ。だから……今年の『G1』で優勝することができなかったら、たとえこの後『G1』で優勝できたとしても、俺のこれまでのキャリアは失敗だったことになると思っているよ。

■王座に就いたら、日本で行われるどの大会にも、どの街での試合にも出場するよ。

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――あなたは今年、IWGP世界ヘビー級王座について、自分のキャリアに欠けているもう1つのピースであるとよく言っていましたよね。

ザック IWGP世界ヘビー級王座がまだ比較的新しいベルトであることは明らかだが、“IWGP”の文字には他のどのタイトルよりも多くの遺産と威信が付随している。もちろん、多くの外国人レスラーがこのタイトルを保持してきたけども、日本に住みながらこのタイトルを獲得したことがある外国人選手はいない。俺が初めてになるだろう。

だから王座に就いたら、日本で行われるどの大会にも、どの街での試合にも出場するよ。これは海外に住んでいる他のチャンピオンたちを侮辱しているわけではないが、そういう意味で自分を外国人だとは思っていないんだ。外国人がやっていないことをやるだけではなく、どの日本人レスラーよりもタイトルの価値を高めていきたい、そのぐらいの意気込みで闘っているんだ。

――あなたは自分の立場やイギリス人としてのアイデンティティについてこれまで語られてきました。なぜあなたにとってイギリス人としてのアイデンティティは重要なのでしょうか?

ザック 俺にとって日本は常に目標とする場所だった。多くのレスラーは日本を、自分がなりたい場所にたどり着くまでに経験する道のりの中の1つだと考えている。だが、俺は14歳の頃から「日本に行きたい」と考えていた。これまで3度、IWGP世界ヘビー級の王座に挑戦してきたが、次こそは絶対に獲らなければいけないと思っているし、本当にトップとして見てもらうためには、できる限り高いハードルを自分に対して設定しなければいけないとも思っている。

記録に残ることはそれほど重要ではないけど、重要なのは、「何か重要なことを俺が達成した」と自分自身で断言できる直感的な感覚を得ることなんだ。これは俺が20年間、ずっと達成したいと考え続けていたことなんだよ。(了)

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著者プロフィール

1972年3月6日に創業者のアントニオ猪木が旗揚げ。「キング・オブ・スポーツ」を旗頭にストロングスタイルを掲げ、1980年代-1990年代と一大ブームを巻き起こして、数多くの名選手を輩出した。2010年代以降は、棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカらの台頭で再び隆盛を迎えて、現在は日本だけでなく海外からも多くのファンの支持を集めている。

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