【柏レイソル】野田裕喜を救ったチーム力「2024Reysol Report Vol.13」

柏レイソル
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ミスの捉え方

今季山形から加入した26歳のDF野田裕喜 【©️J.LEAGUE】

「ホッとしました。得点を重ねてくれたみんなに感謝しています」
 前節のサガン鳥栖戦について野田裕喜に話を聞くと、彼は安堵した表情でそう答えた。

 サガン戦は20分過ぎから徐々にレイソルがペースを掴み始め、敵陣に侵入する回数が増えていき、細谷真大のポスト直撃の決定機もあった。しかし37分、相手のロングボール一発から、警戒していたマルセロ・ヒアンに先制点を決められてしまう。
「最初のジエゴの競り合いのところで、自分がもう一つ良いポジショニングを取れていれば落とさずに済んだかもしれない」
 野田は自身のその時の対応を“判断ミス”と言った。
 DFやGKといった守備の選手であれば、一つのミスが失点につながるとあって、そのミスが目に付きやすい。ただ、サッカーにはミスはつきものであり、どんなに世界的なスーパースターであろうとも、ミスをしたことのない選手など誰一人としていない。もちろんミスが多ければ、勝つ確率は大きく下がるため、日々のトレーニングで、選手一人ひとりの取り組みや、チーム全体でのミスを減らす作業は必要になる。

 しかし前述のとおり、サッカーでは必ずミスが起こる。重要なのは、ミスが起きたその後。周りの選手が迅速にカバーできれば、ミスの影響を最小限に抑えられるケースもあるが、失点に直結したときは、チームでそれを取り返せるか。

獅子奮迅のプレーで逆転勝利を引き寄せたサヴィオ 【©️J.LEAGUE】

 その点においては、サガン戦は後半に4得点を奪い、先制点を与えた野田の判断ミスをチーム全体でカバーすることができた。確かにミスをしたという事実は変わらないが、ミスが原因で負けるのと、試合に勝って、ミスをした選手が同じことを繰り返さないように改善に努めるというのは、似て非なるもの。間違いなく後者の方が前向きである。
 同時に、ミスをした選手がその試合の中で、パフォーマンスが落ちてしまわないように、気持ちを切り替えることも試合で問われる大きなポイントとなる。

 サガン戦では、2−1と逆転した直後の69分、敵陣深くまで攻め込んだレイソルがボールを失い、サガンのクリア気味のボールをマルセロ・ヒアンが拾った。その際に後方から激しいマークで潰しにかかったのは野田だった。もしここでマルセロ・ヒアンにボールを収められ、前を向かれていたなら、攻撃の手を強めていたレイソルの背後には広大なスペースがあり、サガンのカウンターの餌食になっていた可能性が高い。その時点でのスコアは2−1。カウンターから同点に追いつかれでもしていたら、まだまだ勝敗の行方は分からなかっただろう。ファウルになったとはいえ、相手のカウンターの芽を摘んだ野田のファインプレーだった。

「あそこは最低限ファウルで止めなければいけないところ。先制された後、絶対に2失点目はしてはいけないと考えていました。絶対にやられてはいけないと思って踏ん張りました」(野田)

失点後はしっかり立て直し勝利に繋げた野田 【©️J.LEAGUE】

 また、今季のレイソルが抱える課題に決定力不足がある。そこでも、攻撃陣が得点を挙げるために日々のトレーニングで精度向上に努めることは重要だが、試合においては守備陣が無失点に抑えて得点力不足の影響を最小限に抑えることで勝点を積み上げたり、時にはDFがセットプレーから決勝点を決めて試合に勝てたりすれば、攻撃陣の決定力を味方がカバーしたことになる。
 それぞれのミスを、チーム全体でカバーし合える、レイソルはそんなチームでありたい。
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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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