「下手くそすぎて……」。師岡柊生が5万人の前で初めて味わった悔恨。結果への焦りを救った”プロの鏡”からの言葉とは。
【@KASHIMA ANTLERS】
6月1日、国立競技場。52,860人が集まったJ1第17節横浜F・マリノス戦の前半のことだ。
「かなりショックだった。自分が下手くそすぎて……。普段はやらないミスばかり。結構、メンタルやられました。あんなに悔しい思いをしたのは初めてかもしれない」
東京国際大から加入2年目、初めての大舞台で味わった悔恨だった。J1第12節柏レイソル戦からスタメンのポジションを奪い、先発での出場に慣れ始めた、そんな矢先だった。
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「これまでFWしかやったことがなかった。ボールを受ける側から、出す側になって、見える景色がまったく違いました。初めて考えてプレーした。今まではとにかく感覚。初めて難しいと感じました。ボランチでは自分の特徴を生かせないと思っていたので、とにかく体を張って、1対1で負けない、球際で絶対に負けない、体を張って奪い切ることだけを意識していました」
練習では力を出し切り、紅白戦では主力組をプレーで脅かし、日々の積み重ねの成果が、柏戦でチャンスとなって現れた。
「もうこの試合で何かを残せなければ、もう後はない。柏戦はそう思って試合に臨みました。個人的にはまずまずの出来。1年目はあまり試合に出ることができなかったので、出たら何かやってやろうと、とにかく100%を出していました」
5月以降、チームはリーグ戦6勝1分。その間、18得点と好調を保つ攻撃陣の1人として、存在感を示し続けた。
途中出場の場合、短い時間で「100%」を出し切ればよかった。ただ、キックオフからピッチに立つ立場になると体力が持たない。師岡も先発を重ねるごとにそれを実感していた。
何かを変えないといけないかもしれない。
ヒントはともに戦う「プロの鏡」としたう先輩の姿にあった。
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「隼斗くんは僕が目指すべき存在。僕はいつも考えすぎるとミスが出てしまうことが多くあって。そうなると、そっと話しかけてくれて、『こういうときは、こんなんでいいんだよ!』と、いつも気持ちを楽にさせてくれるんです」
体格はほぼ同じ。身長が高いわけでもなく、スピードがあるわけでもない。それでも高い強度のプレーを続け、チームに流れを引き寄せる。フィニッシュにも顔を出し、試合を決める力もある。そんな背番号33は、常に背中が大きく見えた。
「ふと隼斗くんが教えてくれたんです」。昨シーズンまで途中出場が多く、スタメンでの試合出場を続ける中でリズムをつかめないなと感じ始めたときだった。
「相手がボールを持っているとき、行くぞ、行くぞっていう感じを出して休むみたいな。それをやると力をかけるメリハリがついていいよと教えてくれたんです。振りというと、悪い意味に捉えられてしまうかもしれないけど、相手にはちゃんと圧をかける。だけど、それによって相手が気になって動かないことがあるんだよ、と。動いてなければ、休めることになる。それはステップ一つもそうなんです。これまでは戻らなきゃと思って必死にダッシュしていたけど、その場所に行けばいいと肩の力を抜いてフワッと戻ってみると、そんなに遅れることなくポジションを取ることができたんです。これは使えると思いました」
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横浜FM戦、結果としてチームは3対2で勝利した。前半だけで途中交代した師岡は個人的な悔しさを感じながらも、試合後は晴れやかな気持ちでいっぱいになっていたという。
「本当に悔しかった。けど、チームが後半に逆転してくれて、なんかすごくうれしかったんです。まだまだ自分に足りない部分も見つけられたし、課題がまだたくさんあるんだなって気づかされた試合でした。まだ自分自身、結果を残せてないので、まずは得点やアシストを増やしていきたい。ただ、やっぱりチーム一丸となってタイトルを獲りたい。そのためにプレーしたいと思っています」
『サッカー人生でもっとも悔しい」(師岡)とした試合は、自分の力をチームのために使うことで、みんなで勝利を味わいたい。そう思える試合になった。
6月16日、カシマスタジアムで行われるJ1第18節アルビレックス新潟戦。やることは決まっている。「チームのためにできることを精一杯やる」。背番号36の躍動に、注目だ。
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