【柏レイソル】要求し合うことの重要性「2024Reysol Report Vol.11」

柏レイソル
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 6月2日に行われたJ1第17節のアビスパ福岡戦は、非常に良い試合の入りをして、前半20分までは圧倒的にレイソルのペースだった。開始早々の失点でリズムを壊した横浜F・マリノス戦の反省から、序盤は長いボールを相手の背後へ入れて、敵陣の深い位置でプレーをする。その狙いを実行したチームは、序盤からいくつかのチャンスも作り出した。

【©️KASHIWA REYSOL】

 そのチャンスで仕留めてさえおけば、おそらくレイソルが主導権を握り、優勢に試合を進める展開に持ち込めただろう。だが、26分にアクシデントから失点を許すと、それまでレイソルが見せていた勢いが一気に萎んだ。その時間帯までアビスパはほぼノーチャンスだっただけに、オウンゴールでの失点はショックだったのかもしれないが、サッカーをやっていれば、アクシデントで先制されることなど、いくらでもある。まだまだ時間が十分残されている前半の1失点で焦り、自信を失い、トーンダウンしているようでは、絶対に強いチームにはなれない。

 さらに、アビスパ戦で気になったのは、1失点した後にチームが共通意識を持って戦えていなかったことである。
「つなぎたい人と、ピッチ状況もあるから背後を狙おうという人のズレが出てしまい、リズムが噛み合わなくなった」(戸嶋祥郎)

 今季のレイソルは、昨季までの反省を踏まえて、ビルドアップで前進していくことや、自分たちがボールを保持して主導権を握るということをテーマに掲げて、新たな取り組みにチャレンジしてきた。それでも、井原正巳監督をはじめ、コーチングスタッフや選手たちは「優先順は背後」と話す。ただそれは、あくまで相手の守備バランスが崩れているときや相手の背後に広大なスペースがあり、細谷真大、サヴィオの突破力を活かせる状況下であって、リードした相手が守備を固めてスペースを消して待ち構えているところに放り込んでも、相手が大きなミスでもしない限り得点に結びつけるのは難しい。

 F・マリノス戦の反省から「序盤はリスクを冒さずに背後にボールを入れる」という狙いがあったのは分かるが、アビスパ戦では失点した後に、それがうまくいっていないにもかかわらず、頑なに続けてしまい、よりリズムを悪くした感があった。選手たちは決してサボっているわけではない。むしろレイソルの選手たちは真摯にサッカーと向き合い、真面目である。真面目なだけに、準備してきたことがハマっていない状況でも、それを頑なにやり続けようとする傾向がある。

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「最初のある程度割り切るところと、じゃあ動かせるよねというタイミングのつなぎ目はもう少しはっきりさせていかないと、放り込まれることを前提で準備している選手もいれば、動かしたい選手もいる。そのズレをなくさなければいけない」
 古賀太陽はそう言い、「自分がもっと発信するべきだった」と反省の弁を発したが、試合中にチームにやるべきことを促すのはキャプテンや年長者だけの仕事ではない。

 拙書『バンディエラ』の中に、大谷秀和コーチの言葉として以下のものがある。
「選手全員がチームの責任を背負っているという思いを持って、戦ってほしい」
 自分の考えや、こうしてほしいということがあるなら、キャプテンという立場や年齢に関係なく、それを周囲の選手に発信する。これはチームを良くするための要求であり、その要求によって選手同士が考えを擦り合わせ、チームの意思統一を生む。意思の統一ができず、各選手のやりたいことが乖離したままが、一番良くない。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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