【柏レイソル】工藤壮人から細谷真大へ繋がった"背番号19のエース"「2024Reysol Report Vol.8」

柏レイソル
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待ちに待った今季初ゴールでサポーターに笑顔を届けた 【©️KASHIWA REYSOL】

 湘南ベルマーレ戦では、細谷真大のシーズン初得点が生まれた。待望のエースの一撃に、多くの人が歓喜した。

 昨季はチーム最多の14得点を記録し、細谷自身、今季は得点王を視野に入れてシーズンをスタートさせたはずだった。ただ、今季のスタートが例年と大きく異なっていたのは、昨季終了後にA 代表に招集され、AFCアジアカップを戦ったことだろう。日本代表の経験は彼にとって有意義であったとは思うが、その反面、レイソルに合流したのはちばぎんカップの直前だった。本来ならば前年の疲労を癒やし、体も頭もリセットするはずのシーズンオフがなく、ましてやチームが1年間を戦う骨格を作り上げるキャンプにも参加できなかった。

代表戦の過密日程のまま、2月のちばぎんカップを戦った 【©️KASHIWA REYSOL】

 細谷本人は「代表の疲れはない。体は動けている」と言っていたものの、シーズンオフがなく、そこにアジアカップの疲労が重なって開幕を迎えたことが少なからず影響したのは間違いない。開幕当初には、井原正巳監督が細谷のコンディションについて言及する機会も度々あった。

 そういった難しい期間を乗り越えての初得点である。ベルマーレ戦後に「待たせ過ぎてしまった」「逆転で勝てて嬉しいです」と本音を漏らす一方、やはり細谷が“エース”だと感じたのは、その後のコメントである。
「自分が点を決めないとチームは上にいけないと思っている」

 得点を取れずに苦しんでいた時期には、外部からの様々な声もきっと耳に入っていたことだろう。プレッシャーに押し潰されておかしくない状況であったにもかかわらず、「自分が点を決めないとチームは上にいけない」と、あえて自分自身にプレッシャーをかけるのだから、なんというメンタルの強さだろうか。「自分がチームを勝たせる」と本気で思っていなければ、発することができない言葉である。逆に言えば、こうしてチームの結果を背負う度量と勇気があるからこそ、“エース”と呼ばれるのだろう。

湘南戦1-1のアディショナルタイム、力強く右足を振り抜いた 【©️KASHIWA REYSOL】

 細谷の姿が、かつてのエース、工藤壮人と重なるのは、こうした部分に理由がある。
 そして工藤もまた、今季の細谷同様に得点から遠ざかったシーズンがあった。今から10年前の2014年のことである。

 そのシーズン、得点数の伸びなかった工藤が、第11節時点で首位に立つ鹿島アントラーズとの重要な一戦を迎えたときのコメントが実に印象的だった。当時の取材で得た工藤のコメントを以下に記す。
「首位相手に、チームがこれから上に食らい付いていけるのか、そういうときにチームの中で誰がゴールを決めるのかと自分に問い掛けて、そういうときこそ自分なんじゃないかと意識して今日の試合に臨みました」

 さらに「調子が良いのにゴールが決まらないもどかしさはありました。なんでこんなにプレーはうまくいっているのにゴールだけ取れないんだと、悔しい気持ちでした」と、それまで得点から遠ざかった期間の心境も語っている。

2014年、レイソルのエンブレムに思いを込める工藤壮人 【©️KASHIWA REYSOL】

「チームを勝たせる」という責任を背負った当時のエースは、45分に均衡を破る一撃を放った。この工藤の得点でレイソルは首位のアントラーズを1−0で下した。苦しい時期を乗り越えた工藤は、翌年にレイソルのJ1クラブ最多得点記録を樹立することになる。
 単に得点という結果を残すだけが“エース”ではない。チームの勝敗という責任を背負い、勝たせるためにどれだけ努力を積み、重くのしかかるプレッシャーに打ち勝った上で、結果を残せるか。細谷も工藤も、“エース”と呼ばれるからには理由がある。

同じ背番号19を背負ったユースの大先輩を追い続ける細谷 【©️KASHIWA REYSOL】

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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