【スキー】アルペンチーム2023-24シーズンの戦いを振り返る

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アルペンスキー2023-24シーズンSNOW JAPANの戦い

2023年10月に開幕したアルペンスキーW杯は、男子DH8、SG7、GS10、SL10戦の計35戦、女子はDH8、SG9、GS11、SL11戦、計39戦を戦い、3月に終幕しました。

加藤聖五はGSでは20年ぶりとなるW杯ポイントを獲得し、日本人最高位タイ20位の快挙を成し遂げました 【写真/Shinichiro Tanaka】

男子はマルコ・オーダーマットが3年連続での総合優勝に、DH・SG・GS種目別のタイトルも合わせ4冠を手にしました。(DH2勝、SG2勝、GS9勝)
また、総合2位にはロイック・メイラッド(GS1勝、SL1勝)、総合3位にマヌエル・フェラー(SL4勝)と今季W杯を沸かせた顔ぶれが最終戦の表彰台に並びました。

2023-24シーズンの総合優勝は3年連続でマルコ・オーダーマット(中央)が獲得し、DH、SG、GSの種目別優勝と合わせて4冠となりました 【写真/PENTAPHOTO】

「Snow Japan」日本チームは、加藤聖五(野沢温泉SC)、小山陽平(ベネフィット・ワンSC)、若月隼太(GALA湯沢SC)、相原史郎(小泉SC)の4選手がW杯で戦いましたが、加藤聖五選手が1月のスイス・ウェンゲンSLで29位、オーストリア・シュラトミングGSで日本人最高位タイ20位の成績を残すのみに終わりました。

河野恭介男子チーフコーチは、今シーズンの結果について、
「加藤聖五のGS20位は、その瞬間は満足できるものがありましたが、大局的に見ればそれほど(大きな)インパクトがあったわけではありません。彼の競技人生において自信になったとは思いますが、ものすごく飛躍したのかといえば、そうではなく(スタート順が大幅に上がるなどの)W杯での状況が大きく変わるわけではありません。引き続き、難易度が高いコースへの対応と、レース終盤でのミスを無くしていくためのフィジカルの向上が課題です。」といい意味で冷静に捉えていて、
「小山陽平は今季のW杯での成績はありませんでしたが、着実なステップが踏めているという評価をしています。(遅いスタート順でも)チャンスのあるレースが少なく、W杯の成績は悲観していません。それよりも、ヨーロッパカップでSLランキング18位で終われたことと、ファーイーストカップでの好成績を評価しています。」

小山陽平は今季、W杯での成績は皆無だったが、2月のFECでFISポイントを更新し、SLでは日本人トップの世界ランキング59位につけました 【写真/Shinichiro Tanaka】

「若月隼太はシーズンを通してマテリアルの調整に苦労していましたが、シーズン最後に良いポイントを取ることができたのは朗報です。相原史郎は段階を踏んでステップアップしていく途中で怪我をしてしまい、十分なサポートができなかったのが心残りです。」
「チーム全体としては、前年比40%減の予算内で節約に努め、なんとかやりくりはできたと考えていますが、十分な練習環境を用意できたかといえばそうではなく、満足していません。年間の雪上での練習量は強豪国に比べて半分くらいなので、それをなるべく同レベルまで近づけていきたいです。」
そして来季、2024-25シーズンについては、
「(現段階での構想では)加藤聖五と小山陽平をチームの中心として、加藤はGS主体、小山はSL専念でW杯を戦うと同時に、スタート順を上げるため、ヨーロッパカップでのミニマムポイント獲得を狙っていきます。来季のW杯出場権を獲得したそれぞれ、小山敬之(日本大学)、佐藤慎太郎(置環)、片山龍馬(東海大学)の各選手は、これから本人たちとミーティングを重ねて、シーズンの戦い方を決めたいと思いますが、他のレースがない日程で開催されるW杯開幕戦は出場していく予定です。」
「来季は2月にザールバッハ世界選手権を控えているのと、ミラノ・コルティナオリンピック1年前の重要なシーズンとなります。W杯スターティングリストで30位以内に加藤と小山を押し上げていくことと、SL、GS、SGの3種目で良いFISポイントを獲得して、オリンピックの出場枠を一つでも増やしていくことを目標において戦います。」と抱負を語ります。

2023-24シーズンの総合優勝はララ・グート・ベラミ(中央)が獲得し、SG、GSの種目別と合わせて3冠獲得となりました 【写真/PENTAPHOTO】

女子はララ・グート・ベラミが2016年以来、8年ぶり2度目の総合優勝に、SG・GS種目別のタイトルも合わせ3冠を手にしました。(DH1勝、SG3勝、GS4勝)
また、総合2位にはフェデリカ・ブリニョーネ(SG2勝、GS4勝)、総合3位にSL種目別タイトルを獲得したミカエラ・シフリン(DH1勝、GS1勝、SL7勝)でした。

女子チームの成績は安藤麻のキリントンSL27位のみでした 【写真/Alessandro Trovati】

「Snow Japan」日本女子チームは、安藤麻(日清医療食品)、前田知沙樹(株式会社村瀬組)、渡邉愛蓮(東海大学)の3選手がW杯に出場しましたが、成績は安藤麻の11月アメリカ・キリントンSLの27位のみに終わりました。

工藤昌巳チーフコーチは今シーズンを振り返って
「安藤麻はもう少し上位の成績を出したいところでしたが、正月に足首の骨折をして戦線離脱しました。それまではヨーロッパカップでは中間タイムでトップの時もあり、練習での良いパフォーマンスをW杯でどのように発揮していくかが、引き続きの課題です。」
「前田も同様で、今季はW杯主体の転戦で経験を積みましたが、気持ちの面で引けをとることもあり、本人が本来の力を発揮できるレベルで戦って自信をつけることで、W杯での成績も自ずと出てくると捉えています。」

前田知沙樹は今季、W杯8戦に出場するも2回目進出は果たせませんでした 【写真/Shinichiro Tanaka】

「来季は安藤麻はW杯の最終戦出場(ランキング25位以内)と世界選手権で10位以内を目標に戦い、前田と共にW杯出場権を獲得した横尾彩乃(日本大学)の2人はヨーロッパカップをしっかり戦ってレベルアップを図りつつ、W杯に臨んでいきたいと考えています。」
「今季、選手の練習環境を整えることは比較的スムーズに上手く進めたと考えていて、各選手の課題を克服すべく、個々のトレーニングがこれからさらに重要であると捉えています。引き続き予算の限られた中で、チームとしても体制強化を図っていきます。」

「SNOW JAPAN」、2024-25シーズンは男女とも、来月末から6月初旬にかけてのフィジカル体力測定から始動の予定です。
昨今の異常な円安、物価高の世界情勢の影響は、欧州を主体に活動する「SNOW JAPAN」アルペンチームにとっても非常に大きく響いていて、「過去最大の資金難」に追い込まれている現況ではありますが、男女ともW杯のランキング30位以内定着を第一の目標に、来季への戦いをスタートさせます。
GSで日本人選手20年ぶりのW杯順位20位と、SLでも29位の成績を残した加藤聖五のさらなる活躍と、W杯SL8位の実績がある小山陽平、世界選手権SL10位の安藤麻の実績ある2人の「復活」、そして佐藤、片山、横尾らのニューフェイスにも期待して、今秋10月末に開幕の2024-25シーズンW杯を待ちたいところです。
2023-24シーズン、多くの励まし、ご声援をいただき、感謝いたします。
「SNOW JAPAN」アルペンスキーチームは束の間のシーズンオフを過ごし、来るべき2024-25シーズンに備えます。また来季もどうぞよろしくお願いいたします。

文:田中慎一郎
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著者プロフィール

公益財団法人全日本スキー連盟は、日本におけるスキー・スノーボード競技を統括すると同時に、普及・振興の役割も担う競技団体。設立は1925年、2025年には設立100周年を迎える。スキージャンプ、ノルディック複合、クロスカントリー、アルペン、フリースタイル、スノーボードの6競技において、世界で戦う選手たち「SNOW JAPAN」の情報や、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップなどの大会情報をお届けします。

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