【スキー】来シーズンのワールドカップ出場権は誰の手に!?アルペンスキーファーイーストカップ閉幕

チーム・協会
 ワールドカップの下位カテゴリに位置するコンチネンタルカップ(大陸別選手権)。その中のひとつであるファーイーストカップは今シーズンの全てのレースを終えました。今シーズンは中国にてスピード系イベントが増えたものの韓国にて開催予定だった大回転2戦と日本で実施予定だった大回転1戦が悪天候やコースコンディションの影響でキャンセルとなり、ダウンヒル2戦、スーパーG2戦、大回転3戦、回転8戦の計15戦のシリーズとなりました。

 今シーズンのファーイーストカップ最終戦の地となったのがナショナルトレーニングセンターとしても認定されている菅平高原パインビークスキー場(長野県)です。2月26日〜2月29日の4日間で大回転と回転を男女各2戦ずつ行う予定でしたが、最初の2日間は強風のためレースを開催することができず、3日目に大回転を実施し、最終日は隣り合った2つのコースで男女の回転を2戦ずつ同時進行で行うという前例のないスケジュールで大会が行われ、男子はナショナルチームの小山陽平選手(ベネフィット・ワンスキークラブ)が回転で2連勝し今季のベストポイントを獲得。そのままの足で次戦ワールドカップの会場となるアメリカへ向かいました。

回転で2連勝した小山陽平選手 【写真:渡部晋】

 ここまでして大会を開催するのには2つの大きな理由があります。

 1つは「ワールドカップの個人出場権利につながるレースである」ということです。
 
 ファーイーストカップの総合チャンピオンと種目別チャンピオンには来シーズンのワールドカップの個人出場権利が当該種目に対し与えられます。(ただしエントリー時点でFISポイントランキング350位以内であることが条件)
 ここまで男女共に僅差での争いが繰り広げられており、1レースのキャンセルが総合争いに与える影響には大きなものがあります。

 2つ目はFISポイントの獲得です。(※FISポイントとは世界ランキングを決めるポイントのことです)

 ファーイーストカップを含むコンチネンタルカップは通常開催されるレースよりも上位のカテゴリとなるため、良いポイントを獲得できるチャンスでもあります。この機会が減ることでその地域の選手のポイントが悪くなり、世界ランキングを落としてしまうことにもつながります。また世界ランキングを落とすということは、海外レースでのスタート順も悪くなるだけでなく、巡り巡ってオリンピックの出場枠にも影響することになるため、アジア全体として良いポイントを獲得できる機会を増やすことが戦略としても重要です。

 そんな中で迎えた菅平高原パインビークスキー場での今大会。初日と2日目は強風によりキャンセルとなってしまいましたが、回転と比べるとレース数の少ない大回転種目を1レースでも多く実施したいとの思いから、3日目に大回転、最終日に回転競技を2レース開催することが決まりました。

 2月28日の大回転最終戦、前日までの強風の影響で倒木やコース内に膝まで隠れるほどの雪の吹き溜まりができるなどコースコンディションは過酷なものでした。しかし地元のスキークラブが主体となり早朝から各チームのコーチの方々も総出で排雪し、なんとかレースを成立させることができました。

安全でフェアなレースとなるよう膝まである雪をスタッフ総出で排雪し、硬いバーンを掘り出した 【写真:松本和也】

 その結果、女子では中国のレースでも優勝し大回転の種目別ランキングトップにつけていた横尾彩乃選手(日本大学)が水谷美穂選手(日本体育大学)や渡邉愛蓮選手(東海大学)の猛追を交わし、自身初の大回転での種目別優勝を果たしました

FEC女子大回転の種目別タイトルを獲得した横尾彩乃選手 【写真:渡部晋】

 続く男子では中国で全勝し大回転での種目別トップだったJUNG Donghyun選手(韓国)が怪我で欠場しているものの2位の選手とは80点もの差をつけており、次点につける佐藤慎太郎選手(置環)と塩入資選手(長橋商会)の今大会の順位に注目が集まりました。3位以内が絶対条件というプレッシャーのかかる中、佐藤慎太郎選手が2本目トップのタイムを叩き出し準優勝。逆転で大回転の種目別優勝を手にしました。

FEC男子大回転の種目別タイトルを獲得した佐藤慎太郎選手 【写真:渡部晋】

 最終日の回転は2つのコースに分かれて男女それぞれ2戦ずつが同時進行で行われました。2つの大会を同時に開催していると言っても過言ではない前代未聞の試みに対して、全ての競技役員やチームコーチ・関係者が一丸となりレースを成立させました。そんな歴史的な1日はレース展開も熾烈でした。

 回転1戦目を終えた時点で女子の回転種目別ランキングトップは渡邉愛蓮選手の410ポイント、それを前田知沙樹選手(株式会社村瀬組)が400ポイント、GIM Sohui選手(韓国)が390ポイントという僅差で追う展開に。
男子は374ポイントのPARK Je-yun選手(韓国)と320ポイントの小山敬之選手(日本大学)の戦いに絞られました。

 さらに全種目合計での総合優勝も女子は中国スピード系種目でポイントを重ねた大西美琴選手(足利大附属高校)の587ポイントを渡邉愛蓮選手が570ポイント、GIM Sohui選手が555ポイントで逆転を狙っていました。
 男子の総合争いはさらに熾烈で、片山龍馬選手(東海大学)が519ポイント、そのわずか3ポイント差に切久保仁朗選手(法政大学)、さらに8ポイント差に佐藤竜馬選手(札幌SS PRODUCTSスキーチーム)か付ける大接戦となっていました。

最後まで総合優勝争いを繰り広げた切久保仁朗選手 【写真:渡部晋】

今季ワールドカップデビューを果たした渡邉愛蓮選手 【写真:渡部晋】

 運命の最終戦、女子はSMYTH Mikayla選手(ニュージーランド)が優勝、2位に前田知沙樹選手が入り回転の種目別優勝を決め、3位のGIM Sohui選手が総合優勝となりました。

FEC女子回転の種目別タイトルを獲得した前田知沙樹選手 【写真:渡部晋】

FEC女子の総合タイトルを獲得したGIM Sohui選手(韓国) 【写真:渡部晋】

 男子は先述した通り小山陽平選手が優勝、2位に小山敬之選手が入り、兄弟でのワンツーフィニッシュと小山敬之選手の回転での種目別優勝が決まりました。そして片山龍馬選手が逃げ切り、男子の総合優勝を獲得しました。


 これにより来シーズンは今シーズンよりも多くの選手のワールドカップ参戦が可能となることが予想されます。

FEC男子回転の種目別タイトルを獲得した小山敬之選手 【写真:渡部晋】

FEC男子の総合タイトルを獲得した片山龍馬選手 【写真:渡部晋】

 今大会は自然相手のスポーツの難しさを改めて感じるレースとなりました。その中でも選手は全ての力を1本1本にぶつけ、素晴らしい勝負を繰り広げてくれました。
難しい状況にも関わらず大会の成立に向けてご尽力いただいた競技役員の皆様、そして各チームコーチの皆様には心より感謝いたします。
 
 シーズンも終盤となりました。国内では3月11日より全日本選手権が阿寒湖畔スキー場(北海道)にて行われます。引き続き頑張る全ての選手への応援、よろしくお願い致します。
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著者プロフィール

公益財団法人全日本スキー連盟は、日本におけるスキー・スノーボード競技を統括すると同時に、普及・振興の役割も担う競技団体。設立は1925年、2025年には設立100周年を迎える。スキージャンプ、ノルディック複合、クロスカントリー、アルペン、フリースタイル、スノーボードの6競技において、世界で戦う選手たち「SNOW JAPAN」の情報や、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップなどの大会情報をお届けします。

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