【ラグビー/NTTリーグワン】スコアゼロの後半40分間。 “兄弟”との一戦で得た教訓を糧に<RH大阪 vs 浦安DR>

浦安D-Rocks  飯沼 蓮選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
RH大阪 12-31 浦安DR


3月3日(日)、ヨドコウ桜スタジアムで行われたディビジョン2第7節で、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)と浦安D-Rocks(以下、浦安DR)が対戦。前半は浦安DRが大きくリードし、5対31で折り返した。RH大阪が粘り強さを見せた後半は、浦安DRにそれ以上の得点は許さず、12対31で試合終了。風上に立っていた前半に得点を重ねた浦安DRが、勝ち点5を積み上げた。

公式戦で初めての対戦だった第5節は、前半はRH大阪が、後半は浦安DRが優勢だった。両者とも、前回対戦での反省を踏まえた試合運びになったと言えるだろう。ホストのRH大阪は、“ラグビーは気持ちのスポーツであるということを証明したい”と公言していたとおり、多くのファンの前で素晴らしい戦いぶりを見せた後半だった。

浦安DRは、今季これまでのリーグ戦に限らず、新たなチームとして立ち上げられて初めてのシーズンだった昨季のリーグ戦においても、高い得点力を示している。悪天候により後半7分に中断となった今季の第4節(豊田自動織機シャトルズ愛知戦)を除いては、前後半いずれかの40分間で一度もトライがなかったことはない。辛酸を舐めることになった昨季の入替戦でも、80分をとおして1トライ1ゴール以上のスコアをつけていた。

試合後の会見場に、ビジターチームは予定していたよりも少しばかり遅れて入室した。ロッカールームでのハドルが長引いたのかと問うと、キャプテンの飯沼蓮は「ハドルが長引いたわけではない」と答え、「リーダー陣で真剣に話をしていた」と続けた。昨季、目的を果たせなかったことの大きな要因になっていた規律面は改善され、この日を迎えるまでは悪くなかった。前半にスコアを大きくリードしていても、後半さらにスコアを重ねていた。特にアタックに関しては、前節で手ごたえを感じていた。後半は、前半よりも風が強まっている様子だったが、風下に回ったことだけが得点を取れなかった理由にはならないだろう。飯沼の「これが入替戦だったら、終わり」という言葉は、キャプテンとしてこの後半の結果をいかに重く捉え、危機感をもっているかを十分過ぎるほどに感じさせた。

スタッフも含め、旧知の仲が多い両チーム。世間からは“ダービー”だと言われてはいるが、ゲーム中以外の時間では、まるで仲のいい兄弟のようにも映る。その“兄弟”からこの日、たとえトライを量産していても、チームとしてうまくいっていても、昨季の雪辱を果たすまでは決して気を緩めてはいけないと、あらためて学ぶ機会を与えられた浦安DR。さらに固く兜の緒を締め、ディビジョン1昇格へと向かいたい。

(前田カオリ)

レッドハリケーンズ大阪のマット・コベイン ヘッドコーチ(左)、射場大輔バイスキャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

レッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ
「前半は残念ながら負け、後半はしっかりやることをやって上回ることができたという印象をもっています。前半については、本当に残念な結果でした。向かい風ではありましたが、イグジットがしっかりできず、本来であればしっかりストラクチャーを作って冷静に蹴り出さないといけないような場面でしたが、パニックになって蹴ってしまい、相手にチャンスを与えてしまいました。相手には大きくて力強い選手たちがいます。1対1のタックルで外してしまい、ラインを抜かれてしまいました。立ち上がりのところでペナルティを取られてしまって、ゲームの流れにうまく乗ることができなかったのも理由の一つです。

ハーフタイムに選手たちに伝えたことは、しっかり信念をもって練習でやってきたものをこの試合で出し切ろうということです。後半は、選手たちはしっかり戦ってくれました。ただ、全体をとおして見てみれば、やはり結果は残念で、ミスが多過ぎると感じています。ミスをし続けてしまうことによって、全体のレベルを上げることができずにプレーしてしまっています。私たちはしっかり学び、改善していかなければなりません。そして、最後までしっかり遂行しなければなりません。そうでなければ、本当にこのレベルでずっとプレーしてしまうことになります。チームとして、本当にシンプルなことに集中してしっかりとやり続ける必要があります」

――後半のプレーの向上につながったハーフタイムでの指示について、もう少し聞かせてください。

「後半は風を利用できる状態ではありましたが、『風だけで問題を解決することはできない』と伝えました。『引き続き、オフ・ザ・ボールのところでハードワークし続け、しっかりチャンスを作ろう』と話しました。また、ボールキャリアーの姿勢が高かったせいで、相手にチョークタックルをされてしまうシーンが前半中にあったので、低くキャリーするようにも話しました。後半には同様のシーンはなかったので、良かったと感じています。ディフェンスに関しては、『ドミネートで止め切れなくても、しっかり抑え、ほかの選手がサポートをすることで止めよう』と伝えました。信念をもってやり切ろうと伝えた中で、後半の選手たちのプレーは誇りに思っています。前半に直そうと話したこともできていましたし、精度や集中力を保てていました。また、モールでトライを取れたことも良かったと感じています」

レッドハリケーンズ大阪
射場大輔 バイスキャプテン
「今日もたくさんのファンの方々がスタジアムに足を運んでくださったこと、本当にうれしく思っています。前半の早々、キックオフでペナルティを取られてしまい、そのままモールで得点を取られました。試合の入りとしては、まったく良くなかったです。相手のフィジカルプレーに勢いがあり、ブレイクダウンのところでプレッシャーを掛けられてしまいました。自分たちのテンポでアタックできない苦しい状況の中ではありましたが、前半の最後に得点が取れたことは良かったと思っています。

ハーフタイムでは、マット(・コベイン ヘッドコーチ)が話したとおり、まずはインディビジュアルなタックルの部分と、『自分たちがやってきたことを信じてやろう』と話し、後半に臨みました。後半からは風上になったので、しっかり陣地も取れるようになりましたが、22mに入ったところで何度かミスを重ねてしまい、自分たちで首を絞めてしまうような試合展開になってしまったと感じています。直近では、強いチームに対して良い試合ができても勝ち切れないことが続いています。チャンスのときにどれだけ集中してプレーできるかが大切だとあらためて感じました。次も強い相手との試合になりますが、今回の反省点を踏まえ、1週間、集中して取り組んでいきます」

――直近2試合は後半にスコアを動かせませんでしたが、今日はスコアもあり、相手にも得点させませんでした。

「後半の低調に関しては、選手たちからも声が上がり、ミーティングでコーチングスタッフからも話があった、課題の一つでした。控えメンバーも含め、今週はしっかりと自覚をもって準備できました。そのことが後半のゲーム内容の改善につながり、良い試合の締め方ができたのではないかと感じています」

浦安D-Rocksのローリー・ダンカン アシスタントコーチ(左)、飯沼蓮キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

浦安D-Rocks
ローリー・ダンカン アシスタントコーチ
「前半は良いスタートを切ることができました。風上だったこともあり、その風をうまく利用しながら、モールトライや、たくさんの良いタックルブレイクが生まれていたので、選手たちは緊急性(即座の対応力)をもって動けていました。

それに比べ、後半は乱れてしまいました。前半の終了間際にレッドハリケーンズ大阪さんにとても良いトライがあったので、そこからの勢いをうまく利用されたように感じました。私たちは規律の乱れもありましたし、セットピースにプレッシャーが掛かっていたということもあります。そうした重圧から、最終的に自分たちは後半を無得点で終えてしまいました」

――風下に入る後半に向けて、ハーフタイムにどのような話をされましたか。

「キック戦略の中で、風が強くてもキックが蹴れないわけではないので、コンテストキックを大きく蹴っていくことをうまく利用しようという話をしました。カウンターキックを相手が蹴ってきたときのカウンターアタックについては、攻めるマインドをもち、攻めてから蹴るところを判断しようと話しました」

――後半に乱れた要因となっていた規律とセットピースについて、早急に改善したいと感じた部分があれば教えてください。

「相手がペナルティをしたとき、自分たちがタッチに蹴り出し、ラインアウトスローを獲得することができていませんでした。特に、後半はできていません。その精度を改善する必要があります。また、簡単なペナルティをラインアウトとスクラムで繰り返してしまっていました。それらは早急に改善できるところだと思っています」

――今日の試合でトップリーグ・リーグワン通算50キャップを迎えた中島進護選手は、プレーヤー・オブ・ザ・マッチも獲得しました。

「彼は本当に一貫してフィジカルのところで体を張ってくれる選手であり、素晴らしいチームマンで、リーダーでもあります。さらにクラブキャプテンという役割も担っています。そうした選手であるということを示してくれる、素晴らしいパフォーマンスを今日も見せてくれたと感じています」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン
「今日はありがとうございました。前半は追い風をうまく使って良い流れで試合に入ることができました。後半は、ゲームに影響するような強い向かい風が吹いていたので、キックの使い方やゲームの組み立て方が難しかったこともありますが、自分たちで焦ってしまい、規律面など細かいところをこだわれませんでした。そこはかなり大きな反省点だと思っています」

――今日の試合で得た反省点について、どのように改善していきたいと考えていますか?

「今日の試合では、風があったこともありますが、それ以前に80分をとおして波が生まれてしまっていてはいけないのではないか、と感じました。前半はリードして始められたのに、後半はブレイクダウンやキックを蹴られたあとなど、リアクションスピードが少し落ちていました。それを入替戦でやったら終わりなので。そういう緩みは、危機感をもってなくしていかないといけません。それを試合後に、リーダー陣で真剣に話しました。一人ひとりの意識の問題でもありますが、キャプテンとして、試合中でも練習中でも伝えていくのは当たり前のこととしてやっていかなければいけないと考えています」

――規律面に関しては、昨季からも課題となっていました。

「昨シーズン(のペナルティ)は多かったです。けれど、今季は改善されていました。ただ、今日になって、明確に課題として挙がってきました。規律面は良くなってきていたので、今週の1週間をとおして、特に言い続けることはしていませんでした。細かい当たり前のところほど、みんな忘れてしまいがちなので、たとえ良くなってきていたとしても、常にリーダー陣が言い続ける必要があると感じる試合になりました」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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