【台湾プロ野球だより】今季一軍参入、台鋼ホークスが始動(2) 活躍誓う笠原祥太郎&小野寺賢人、モヤがチーム初の外国人野手に

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笠原祥太郎(左)、小野寺賢人(右)は共に声援が原動力だと述べ、台湾での活躍を誓った 【写真提供:CPBL】

 今季から一軍公式戦に参入する「第6の球団」台鋼ホークスの動きについて、前半では一軍参入記念セレモニーとキャンプ入り、王柏融の初代主将就任などの話題をお伝えした。後半は、日本人選手や元NPB勢を中心に、外国人選手の話題をお送りしよう。

 CPBL職員時代は日本側との折衝を行い、日本球界の各方面とのパイプをもつ劉東洋GM、そして日本スタイルの野球を好む洪一中監督が率いる台鋼ホークスには、昨年1月就任した横田久則一軍投手コーチに加え、昨年6月にチーム初の外国人選手として入団も、怪我の為現役引退、二軍投手コーチ補佐をつとめる福永春吾氏の2人の日本人指導者がいる。

 さらに、一軍参入初年度で、他チームよりも外国人枠が1枠多い(支配下登録5人、投手ないし野手は最多4人まで)中、早々と獲得が決まったのは、笠原祥太郎(元横浜DeNA)と、アジアウインターリーグで結果を残した小野寺賢人(元BC埼玉武蔵)の2人の日本人投手だった。

 笠原祥太郎と小野寺賢人は1月15日に台湾入り。17日のセレモニーに参加し、18日のキャンプ初日から練習に参加した。

 日本の独立リーグや社会人野球のオファーもあった中、異国台湾でのプレーを決めた理由について笠原は「『助っ人』という、結果を残せなければすぐにクビを切られてしまう、そんなプレッシャーのある立場で野球をやれることは中々ないという思いと、身体が動くうちは野球でしっかり稼ぎたいという両方の思いがあった」と説明してくれた。12球団合同トライアウトの前から台鋼が声をかけてくれていた事、「台湾、いいじゃない」という家族の後押しも決断の決め手となったという。

 笠原は2018年11月に行われた壮行試合「侍ジャパンシリーズ2018」の台湾戦で先発、2回を1安打、無失点の好投をみせたが、奇しくもこの時投げあった台湾の先発、当時統一の江辰晏(現在は江承諺に改名)と、2番手で勝ち投手になった当時統一の施子謙が、いずれもこのオフ、ホークスに移籍、3人はチームメイトとなった。この件を、マネージャーから聞いたという笠原は「運命みたいなものはあるんですね」と笑った。

 初めてブルペンに入った3日、高雄の気温は27度。「暑いと聞いていたけど、2月からここまでとは。故郷の新潟は今、雪が降っているっていうのが信じられない。蒸し暑い名古屋の経験はあるけど、いろんな人から台湾の夏は湿度が段違いと聞いているので、できるだけ早く慣れないと」と語った。

 今季の目標について問うと、「毎試合ゲームをつくり、一年間ローテーションを守って、チームの勝利に貢献すること」と語り、「台湾に来ても、なお応援してくれるファンの方の声援が励みになっている。日本にニュースが届くくらい活躍したい」と意気込みを示した。

 一方、アジアウインターリーグに「テスト外国人選手」の形で参加、決勝で好投、優勝に貢献するなど安定した投球で合格をつかんだ小野寺賢人は、「言葉を勉強してきます」という宣言通り、「新年快樂!好久不見!(あけましておめでとうございます!お久しぶりです!)」と、中国語(台湾華語)で挨拶、「戻ってきた、という感じです」と約1カ月ぶりの合流を喜んだ。

 一時帰国中には、前所属、埼玉武蔵のファン主催の壮行会に参加、知人や関係者からも激励されたといい、「BCリーグ、日本の独立リーグを代表して台湾で頑張って欲しい、というメッセージを受け取ったので頑張りたい。トップリーグの経験はなく、キャリアは浅いが、外国人争いで負けるつもりはない」と熱く語りつつも、「独立リーグに比べてシーズンが長いので、急いでやりすぎて怪我をしないこと、しっかりコンディションを整えて、一年間高いレベルでプレーしたい」と冷静さも忘れなかった。なお、埼玉武蔵時代のコーチで、昨夏、楽天モンキーズでプレーした由規からは、台湾のプレー環境、ボール、食事面などについてアドバイスを受けたという。

 2人の話からは、家族や友人、ファンの応援が、異国で頑張る原動力となっていることをひしひしと感じさせられた。朴訥ながら、いい意味でのマイペースさ、たくましさを感じる28歳の左腕、笠原と、溢れる闘志の中に冷静さも兼ね備えた25歳の右腕、小野寺。タイプの異なる二人の日本人投手だが、いずれも人間的に魅力のある選手だ。活躍を期待したい。

台鋼ホークス初の外国人野手、スティーブン・モヤ。主軸として活躍が期待される。登録名は「魔鷹」 【写真提供:CPBL】

 その後、台鋼はまず1月22日に、パドレスやマリナーズでメジャー昇格経験のあるアメリカ人左腕、ニック・マーゲビチウス、24日にはチーム初の外国人野手として、中日やオリックスで合計4シーズンプレーしたおなじみスティーブン・モヤを、さらに、26日にはクローザー候補としてドミニカ共和国出身の剛腕サウスポー、レイミン・グドゥアンを獲得した。

 台湾プロ野球では、漢字の名前をもたない外国人選手に、音訳や語呂合わせ、時には期待を込めた勇ましい字を用いて漢字の登録名をつけるが、今回、マーゲビチウスは「哈瑪星(ハーマーシン)」、モヤは「魔鷹(モーイン)」、グドゥアンは「雷公(レイゴン)」となった。

 ちなみに「哈瑪星」は、洪一中監督の出身地の高雄市内の地名で、元々は日本語で「濱線(はません)」と呼ばれていた港沿いを走る貨物線の愛称が由来となっている。球団は、マーゲビチウス本人に登録名の由来、意味を説明、来台後、実際に哈瑪星一帯を案内し、各種のグルメを味わったという。近年は怪我に苦しんだものの、台湾で結果を残し、MLB復帰を目指すマーゲビチウスは「プレーでも注目されたい。スターターでやれるところを見せたい」と意気込んでいる。

 「雷公」は、2リーグ分裂時代、現役時代の洪監督が所属した高雄、屏東エリアを本拠地としたTMLのチーム名だ。「鷹」をつけたモヤの「魔鷹」含め、三人はいずれも洪監督やチームと縁のある登録名となった。

 1月29日、グドゥアンと共にキャンプに合流したモヤは、中日時代のチームメイト、笠原祥太郎、そしてオリックス時代のチームメイト、現在「練習生」としてホークスで調整している張奕とまず挨拶をかわすと、「数年前まで日本で一緒にやっていた仲間だよ。また一緒に台湾でプレーできるとはね。しかも、一度に2人と会えるなんて本当に野球の世界は狭いね」と驚いた。

 劉東洋GMは、早い段階から外国人野手候補の一人としてモヤを検討していたという。実力はもちろん、性格面についても独自のルートを使って調査、いずれも素晴らしいという報告を受けていた中、最終的に複数の候補から、洪監督、スカウトの意見をもとに獲得を決断したという。

 長打力が課題の台鋼では主軸、一塁手での起用が濃厚だ。洪監督も「日本スタイルだ。やはりNPBを経験している事が大きい。ここまで大柄(201センチ)な選手は珍しいけれど、足も遅くないし肩もいい。運動能力が高いね」と期待、開幕時、王柏融、モヤと、クリーンアップに元NPB打者が並ぶことは濃厚だろう。

 今年7月の台湾プロ野球のドラフト会議で、二番目の指名権を手にしている台鋼。WBC台湾代表の4番、元レッドソックスの張育成の去就が未定であることもあり、指名選手を現時点で絞ることは困難だが、元埼玉西武の呉念庭、現在、「練習生」の張奕のドラフト参加は決まっており、元NPB勢が、さらにもう一人加わる可能性は十分にありそうだ。

 新球団ながら、日本のファンにおなじみのコーチ、選手が多い台鋼ホークス。X(旧ツイッター)の日本語アカウントを開設するなど、日本市場も重視しており、台湾プロ野球「入門」チームとしては最適だ。

 日本人選手はもちろん、王柏融はじめ元NPBの選手も皆、日本のファンへのメッセージを求めると、まず日本のファンに感謝の言葉を述べ、機会があったら台湾にも是非応援に来てくださいと口を揃える。秋にはプレミア12も開催される今年、台湾プロ野球「第6の球団」、台鋼ホークスをチェックしてみてはいかがだろうか。

文・駒田英
(情報は2月9日時点のもの)
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