【2023松本山雅】vs福島(7/16)H レビュー

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたいぬねこさんによる記事です。】

・福島戦

足りないものをまざまざと見せつけられた。そんな試合だった。
やりたいことの遂行という点では今季の中でも割といいチャレンジが出来ていた中で、相手に自分たちの時間を作らせてしまったこと。
そして、もったいないセットプレーからの失点によって報われることなく沈んでしまった。

・完璧な入りと設計図

序盤、完璧な形で先制する。
3-1-4-2のシステムで来た福島に対して、山雅は立ち上がりの不安定な時間を突くことに成功したが、その理由は序盤のプレスのかかり方にある。

【いぬねこ】

基本的には、2トップがアンカーを牽制しながら、3バックに対してプレスを伺う。
そして、大武が左右のCBに出したところからプレッシングをかけると、福島はCBの脇にFWないしIHを走らせて裏返しに行くというのが序盤の構図だった。

この点、大半が敵陣の深い位置からの守備を行うことが出来ていたため、蹴らせて回収という形が機能して、押し込み続けることができたと言える。

攻撃はいつものパターン。
先制点は1つ飛ばしたパスから生まれており、この辺り大きく素早く展開して、スペースを活用したところからのアタックという形は割と定番の形になってきている。

ともあれ、先制点までの流れは本当にパーフェクトと言ってよかった。

・全く自分たちのやりたいことが出来なかった時間

10分頃から訪れた魔の時間。
35分ぐらいまでのおよそ25分間まともに自分たちのサッカーを出来なかったのは痛かった。

福島は失点後から、ボールの受け手に工夫が出てきた。
特にWBが一旦のボールの引き出し手として有効だったと考えている。

WBが低い位置に顔を出すことで、山雅のSHのプレスを困らせる。
WBが受けた場合にはその周囲にほかの選手が選択肢を作りに行き、狭い局面でのパス交換から広いサイドに展開できるように抜け出すというパターンの打開を複数回実行できていた。
そこから取りどころが明確でなくなった山雅は、フィールド中央から自陣寄りの場所で守備を行うことになり、何度も大きな展開から30mライン侵入を許している。
この点ミドルプレスの回避自体は想定しうるもので、なるべくもう一度押し込んでプレスを行いたいのだが、それが叶わない。
何故かと言うと自陣からボールが繋がらず、前方へ運べないからである。
少し苦しい段階で頑張って小松に繋げようという意図が見えるボールも複数見られたが、ことごとく相手の足元へ。
状況的にも人数不利のところで、そこから回復することは難しかった。

また、山雅がボールを持っている時の福島の制限のかけ方もはっきりとしだした。
特に意識されていたのは同サイド圧縮。
特に常田が左足で右の野々村に戻すボールが狙われる(野々村からのパスが起点で限定のスイッチが入ることが多かった。)

【いぬねこ】

運んだ先をWBとIHが塞ぎ、近い位置でサポートにくる下川や喜山が食われた状態でプレーすることになり、そこからの前進が難しくなってしまった。

・改善策は人を変えることなのか

後半この点に修正が入る。
喜山に変えて米原を投入したことで、CBとのパス交換が増加。
相手を寄せてパスコースを空けるという意図のもと、繋いで探る時間が増えたことで、自分たちの時間を多くつくり、攻撃を活性化させることが出来た。
この点この程度の修正を属人化していいのかという疑問が出てくるだろう。
個人的な結論としては、長いサイクルの中で浸透させる前提ならまだしも、1シーズンの中でそれを実現することは難しいと考えている。
試合翌日に水戸から安永玲央の獲得が発表されたのも含めて、ある程度その認識はクラブが持っているものに近いのではないだろうか。

・勝負強さとは?

さて、諸々のコメントで出ている「勝負強さ」というワードについて触れていきたい。
厳しい言い方をすると、このワードはチーム内外の認識の齟齬を簡単に産んでしまう危険なワードだと言える。
この点、現状チームの中で「勝負強い」と言われる要素は、戦術的な要素に紐づく細かいプレーの徹底にあると私は考えている。
保持で言えば、後半始まって以降複数回ハーフスペースからの折り返しをなぜ決め切ることが出来なかったのか。
当初の設計図ではある程度どのエリアにどういう人間が入っていくかが設計されていたが、しばらくそのようなシーンから遠ざかり、周りを見てポジションすることをおざなりにしていないだろうか。
守備で言えばこぼれ球やセカンドボールの予測を判断してポジショニングできてるだろうか、プレスをかけることが目的にならず消すべきコースを消せているだろうか。
もちろん守りきっていた時以上に各局面で正確な思考と素早い判断が求められている中で、与えられた役割だけをこなしてないだろうか。
私自身この問いを投げかけるに至ったのは、サッカーを見ているだけでなく、仕事で同じような体験をしたことにある。
結果的に勝負強いのと、意図を持った動きを経て勝負強いのとは根本が異なる。
より細部の、行動原理としての本質を捉えることこそが、チーム内で共有されている「勝負強さ」ということになるのでは無かろうか。

・継続すること

基本的に大枠は変えない。その中で細かい要素をクリアしていくという意味では、ようやく目指す場所に向けた継続・改善のサイクルへと踏み出したと捉えて良いだろう。
霜田監督がコメントで口にしたマイナーチェンジの解釈としても、現状負のサイクルに入った時の打開策として、選手の得意なことをやるというところに限定されるのではないかと予想している。(詳細の言及は避けます)
やはり今回の試合でポジティブ要素を見つけるとすれば、アプローチを間違えれば空中分解してもおかしくないチームが短期間ですり合わせを行い、自分たちのやりたいサッカーの実行に向けて舵を修正できたことにある。

このまま信じて、今こそ共に行こう。

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