【PREVIEW 2023ノルディックスキー世界選手権・前編】ノルディック複合新エースのメダル獲得なるか&クロスカントリーは世界への突破口を開けるか

チーム・協会

【写真:AP/アフロ】

 今シーズンは2年に一度のスキー&スノーボード競技の最高峰、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)世界選手権が開催されます。ノルディックスキーはプラニッツァ(スロヴェニア)、アルペンスキーはクーシュベル/メリベル(フランス)、フリースタイル&スノーボードはバクリアニ(ジョージア)が舞台。各大会の見どころを、SNOW JAPANの選手たちを中心にお届けします。

※SNOW JAPAN=全日本スキー連盟(SAJ)が統括するスキー・スノーボード競技の選手たちの総称

スキージャンプの聖地、プラニッツァでの初のノルディック世界選手権

 ノルディックスキー世界選手権はスロヴェニアのプラニッツァで行われます。ヒルサイズ240mのフライングヒルのジャンプ台があることで知られており、スキージャンプのFISワールドカップでは定番の開催地。過去、フライングヒルの世界選手権は数度行われていますが、意外なことにノルディックスキー全体の世界選手権を開催するのはこれが初のことです。シーズン終盤に行われることが多いプラニッツァでのワールドカップは、お祭りのような賑やかなイベントとしても有名で、どんな世界選手権になるのか楽しみです。
 大会は2月22日から競技が始まり、ジャンプ、ノルディック複合、クロスカントリーの3競技の種目が連日行われます。本記事ではすでに代表が発表されているノルディック複合とクロスカントリーについて、SNOW JAPANの選手たちの戦いをプレビューしていきます。

【ノルディック複合男子】山本涼太が新エースとしてメダルに挑む

 昨シーズンの北京五輪では渡部暁斗選手(北野建設SC)が3大会連続のメダルとなる銅メダルを、個人ラージヒルで獲得。さらに、暁斗選手・弟の善斗選手(北野建設SC)・永井秀昭選手(岐阜日野自動車SC)・山本涼太選手(長野日野自動車SC)のメンバーで挑んだ団体ラージヒルでも、同種目では1994年リレハンメル大会以来、28年ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得しました。そんな北京五輪を経て、ノルディック複合チームは世代交代にかかろうとしています。

新たなエースになりつつある山本涼太選手。ジャンプでは世界屈指の力を持つ 【写真:AP/アフロ】

 渡部兄弟は健在ながらも、昨シーズン限りで永井選手が引退し、今シーズンはFISワールドカップにも次世代の選手たちを積極的に投入。今大会でも谷地宙選手、山本侑弥選手(ともに早稲田大学)が代表に選ばれています。そんな世代交代の象徴的な存在が山本涼太選手です。
 昨シーズンまでもワールドカップで表彰台に上る活躍を見せており、北京五輪でもメダル獲得の原動力になりましたが、今シーズンはルカ(フィンランド)の開幕戦で自己最高の2位を記録すると、その後も安定して上位入賞をキープしており、今や日本チームのエースと言っても過言ではありません。

山本選手の課題はクロスカントリー。走力のさらなる進化が求められる 【写真:AP/アフロ】

 その強みはなんといってもジャンプ。ワールドカップ選手のなかでも1、2を争うジャンプの成績を残しており、そのアドバンテージを活かしてクロスカントリーを戦うのが山本涼太選手のスタイル。課題だったクロスカントリーも徐々に克服してきており、粘り強さも兼ね備えてきています。ただ、この1月の連戦では体調を崩して参戦できなかったレースもあり、コンディション面が心配されます。万全の状態で世界選手権に挑んでもらいたいところです。

今季は不振に陥っている渡部暁斗選手。世界選手権でかつての力を取り戻せるか 【写真:Newspix24/アフロ】

 一方で、これまで長くエースとして活躍してきた渡部暁斗選手は今シーズン、これまでにないほどの不振に陥っています。ワールドカップの総合優勝経験も持つ暁斗選手ですが、今シーズンの最高位は22位。その原因は本人も指摘しているように、オフシーズンからの調整不足にあるようです。経験豊富な選手だけに、世界選手権の大舞台に向けて復調を図ってくれることを期待したいところです。
 山本涼太選手を中心に、渡部兄弟のベテラン勢と谷地選手・山本侑弥選手の若手の力が融合されれば、北京五輪のようにメダル獲得も見えてくるはず。新生ノルディック複合男子チームの活躍に期待しましょう。

【競技予定】
2月25日 男子個人ノーマルヒル HS100/10km
2月26日 混合団体ノーマルヒル HS100/2×5km-2×2.5km
3月1日 男子団体ラージヒル HS138/4×5km
3月4日 男子個人ラージヒル HS138/10km

【ノルディック複合女子】五輪採用を左右する世界選手権の盛り上がりを期待

 女子ノルディック複合の競技は2020/2021シーズンからFISワールドカップのサーキットがスタートしています。世界選手権では2021年大会から正式に種目として採用。まだまだ歴史の浅い競技ですが、近い将来のオリンピック種目採用も期待されており、そのためにもワールドカップやこの世界選手権で種目としての認知度や成熟度を高めていく必要があります。

1月に行われたワールドユニバでワンツーフィニッシュを飾った葛西春香・優奈姉妹。世界選手権での活躍にも期待したい 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本チームも早いタイミングから女子選手の強化に取り組んでおり、今大会の代表になった中村安寿選手(株式会社ショウワ)、双子の葛西優奈・春香選手(ともに早稲田大学)らが第一人者として活躍しています。昨シーズンは中村選手がワールドカップ初優勝を果たすなどの活躍を見せましたが、今シーズンまだ誰も表彰台に手が届いていません。各国ともこの種目に力を注いできており、競技としての急激なレベルアップが図られている様子が見てとれます。ただ、メダル獲得のチャンスは十分にあるはず。また、世界選手権では初となる男子との混合団体も行われるので、ぜひご注目ください。

【競技予定】
2月24日 女子個人ノーマルヒル HS100/5km
2月26日 混合団体ノーマルヒル HS100/2×5km-2×2.5km

【クロスカントリー】男子は北京五輪組の躍進なるか。女子はベテラン石田正子に続く選手の台頭なるか

 クロスカントリーは男女それぞれ4名ずつ、計8名が代表として世界選手権に挑みます。男子は馬場直人選手(中野土建スキークラブ)、山下陽暉選手(自衛隊体育学校)、広瀬崚選手(早稲田大学)といった北京五輪出場組が中心。そのなかでもとくに期待が集まるのが馬場選手です。昨シーズンはワールドカップで8位入賞を果たすなど、ここ数年で着実に力をつけてきており、今シーズンも10位台の入賞を数度記録しています。もしもう一皮むけることができれば、さらなる躍進も期待できるはず。また、広瀬選手にも注目。1月に行われたFISUワールドユニバーシティゲームス(旧ユニバーシアード)では、個人種目のふたつの金メダルを含む4つのメダルを獲得。その後のジュニア世界選手権でも一桁順位の入賞を記録しており、成長株として注目していただきたいと思います。

海外選手にも見劣らない体格で戦う馬場直人選手。さらなる飛躍を期待したい 【写真:アフロ】

 一方、女子も石田正子選手(JR北海道スキー部)、土屋正恵選手(弘果SRC)、児玉美希選手(太平洋建設SC)といった北京五輪組が中心になりますが、そのなかでも11回目の世界選手権出場となる石田選手がやはりチームを引っ張ります。今シーズンもワールドカップで12位を記録するなど、42歳になった今でも世界のトップに食い込む力を見せてくれています。ただ、いまだに石田選手がエースを務めなければいけない状況は寂しく、この大会をきっかけにブレイクする選手が登場することを期待したいです。

ベテランながら依然として第一線で戦う石田正子選手。彼女に追随する若手の台頭を待ちたい 【写真:アフロ】

クロスカントリーは男女合わせて12種目が行われます。日本チームはスプリント種目では苦戦が予想されるものの、ディスタンス種目、とくに粘り強い持久力などが求められる長距離種目やスキーアスロン(フリーとクラシカル走法の混合種目)での活躍に期待が集まります。

【競技予定】
2月23日 男女個人スプリント・クラシカル
2月24日 男子個人スキーアスロン30km
2月25日 女子個人スキーアスロン15km
2月26日 男女団体スプリント
2月28日 女子個人10kmフリー
3月1日 男子個人15kmフリー
3月2日 女子団体リレー4×5km
3月3日 男子団体リレー4×5km
3月4日 女子個人30kmクラシカル・マススタート
3月5日 男子個人50kmクラシカル・マススタート

 また、ノルディック世界選手権もNHK BSで生中継を中心に放送される予定です。詳しくは下記のリンクより放送予定をご確認ください。

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著者プロフィール

公益財団法人全日本スキー連盟は、日本におけるスキー・スノーボード競技を統括すると同時に、普及・振興の役割も担う競技団体。設立は1925年、2025年には設立100周年を迎える。スキージャンプ、ノルディック複合、クロスカントリー、アルペン、フリースタイル、スノーボードの6競技において、世界で戦う選手たち「SNOW JAPAN」の情報や、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップなどの大会情報をお届けします。

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