「次のニッポン柔道」への確かな第一歩。 グランドスラム東京 2022イベントレポート
【STT】
観戦体験が進化
ブランディング戦略推進特別委員会 委員長の井上康生氏は、大会前のインタビューで、グランドスラム東京の大会の価値を上げることを一つの目標に、「スポーツプレゼンテーションに注力します。」と話してくれた。そのインタビューの通り、会場では観戦体験の向上のために、多々工夫が施されていた。
中でも、大きな課題として挙げられていた「ルールが分からない」、「試合がスピーディーすぎて何が起こっているのか分からない」という観戦者の意見に対するアプローチとして導入された場内解説サービス“Platcast”は、会場でも多くの利用者が見受けられた。
Platcastのサービスページ 【STT】
そして、試合演出も大きくアップデート。決勝戦の入場時には暗転やライティングなどの照明演出に加え、会場を巻き込んだ手拍子を促す演出によって、決勝に相応しい空気感を作り上げた。
【STT】
最新テクノロジーによる価値創出
取り組みの背景や詳しい内容は、過去の記事をご覧ください。
「柔道、新時代。」グランドスラム東京2022で柔道の魅せ方が変わる。 キヤノンと全日本柔道連盟が取り組む、テクノロジー活用。
https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/202211240089-spnaviow
企画の軸になったのが「ボリュメトリックビデオ技術」という時間と空間を丸ごとキャプチャする技術である。畳の下から見ているようなアングルなど、これまでには考えられなかったカメラワークを含む360度自由な視点で映像を見られることが特徴で、この技術を活用して撮影した映像とテクノロジーを掛け合わせ、それぞれの施策が展開された。
ボリュメトリック技術を用いて制作した映像の一部 【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
JUDO × TECHNOLOGY | Volumetric Movie by Shohei ONO × Aaron WOLF / 大野将平×ウルフアロン
https://youtu.be/IxESvQBpGSU
また、カード配布時の裏面は空白であるが、大会終了後には金メダリストが記されるファンの心をくすぐる細かい仕掛けも施されている。
JUDOコレカのイベントカード 【STT】
JUDOコレカのイベントカード 【STT】
ハンドスキャナーを使用し、360度自由視点の映像を操作することが可能。選手の技を、テレビ中継や試合会場からでは見られない角度から自由自在に見ることができる。特別な機器は使用せず、目の前のハンドスキャナーに手をかざしたり、動かしたりするだけで映像を自由自在に動かすことができるため、老若男女問わず楽しむことができるコンテンツである。このプロジェクトを企画・統括プロデュース推進するキヤノンマーケティングジャパン 諏訪氏は「直感で映像を動かせるので、特に子どもたちに人気。このような技術から柔道に興味を持ってくれたら嬉しい。」と語る。
一連の取り組みは、JUDO×TECHNOLOGY特設サイトからご覧になることができます。
https://www.judo.or.jp/volumetric/
また、新たな柔道ファン創出の切り口としてアニメの力にも期待を寄せている。2023年1月からテレビ東京で放送予定の柔道漫画“もういっぽん!”とのコラボレーションブースを設置し、放送までの機運を高めた。子どもたちを中心に写真撮影の列ができており、新規層の呼び込みについても手応えを得た。
【STT】
グランドスラム東京2022を終えて
「両日とも大変多くの観客の皆さまにご来場いただき、大会2日目にはチケットが完売しました。来場された方々に柔道や大会のライブ観戦の魅力を感じていただけていたら嬉しいです。大会後に実施したアンケートには1000件を超える回答をいただいておりますが、『初めて柔道の試合を観に来た』と回答された方が多くいらっしゃったことが印象的です。グランドスラム東京は世界最高峰の技と力のぶつかり合いを目の当たりにできる機会ですが、大会の存在や魅力を幅広い層に届けることが最大の課題でした。今回実施したプロモーションの振り返りをしっかりと行い、来年以降につなげていきたいと思います。」と振り返った。
5年ぶりの東京開催となったグランドスラム東京2022は、スローガンである “踏み込む、一歩。次のニッポン柔道。”を体現した大会になったのではないだろうか。今後もSPORTS TECH TOKYOでは、全柔連のテクノロジー活用による挑戦の様子をお伝えしていく予定だ。
新卒でJリーグクラブに入社し、広報担当として広報業務のほか、SNSやサイト運営など一部デジタルマーケティング分野を担当。現在はD2Cブランドでマーケティングディレクターを担いながら、個人でもマーケティング支援を手掛けている。
執筆協力:五勝出拳一
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事。スポーツおよびアスリートの価値向上を目的に、コンテンツ・マーケティング支援および教育・キャリア支援の事業を展開している。2019年末に『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ