「柔道、新時代。」グランドスラム東京2022で柔道の魅せ方が変わる。 キヤノンと全日本柔道連盟が取り組む、テクノロジー活用。
【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
【全日本柔道連盟】
本郷 光道(ほんごう あきのり)
中央大学法学部卒。選手として全日本柔道選手権大会3位をはじめ国内外の大会で活躍。2011年に現役を引退後、モントリオールに移住し、カナダナショナルチームの指導に参画。ロンドンオリンピックにおけるカナダ柔道の3大会ぶりのメダル獲得に貢献する。2014年に帰国し、公益財団法人全日本柔道連盟に入職。2019世界選手権東京大会では運営統括(プロジェクトマネージャー)を務め、現在は連盟のメディア・マーケティング領域を担当する。
【キヤノンマーケティングジャパン(株)】
2010年に総合映像プロダクションに入社、TVCMを始めとする広告映像や、プラネタリウム、プロジェクション、XR、アプリ開発、WEBサイト制作、イベントなどの多種多様なプランニング・プロデュース業務に従事。受賞歴として、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2018 総務大臣賞・グランプリ、他。その後、社会課題により近い場所で活躍したいという思いから、2021年にキヤノンマーケティングジャパンに入社。自治体プロジェクト推進室に所属し、主に省庁・自治体のプロモーション案件を担当している。
「柔道にテクノロジーを」
私たちキヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は、キヤノン株式会社が持つ多数のテクノロジーを社内外のさまざまなリソースと掛け合わせ、社会やお客さまにソリューションとして届ける活動を行っています。今回の件は、ソリューション開発の過程で、本プロジェクトで使用するボリュメトリックビデオ技術がスポーツ界の課題を解決し、スポーツの魅力を伝えていく新たな手段として活用できるのではないかと考えたことが、スポーツ業界にアプローチを始めたきっかけでした。
その中で、スポーツ庁実施する、スポーツ×テクノロジー活用推進事業の公募があり、現在は全日本柔道連盟様(以下、全柔連)とタッグを組んでプロジェクトを推進しています。
御社が提供するボリュメトリックビデオ技術について詳しく教えてくださいますか。
諏訪
ボリュメトリックビデオ技術は時間と空間を丸ごとキャプチャする技術です。現実世界の被写体をデータとして取り込み、3Dモデル化することで、空間内の自由な位置や角度からの映像生成が可能になり、実在するカメラではできなかった表現を目にすることができます。自由視点映像と言い換えると分かりやすいかもしれません。例えば、自由自在にカメラ位置を変更したり、被写体の動きを止めてカメラだけを自由に移動させ時間を止めたような演出をしたりといったことが可能になります。今回の全柔連さんの撮影においては、キヤノン(株)の川崎事業所にあるボリュメトリックスタジオで撮影をしました。このスタジオには、8メートル×8メートルの撮影エリアに100台以上の4Kカメラがあり、そこに畳を持ち込んで、柔道の撮影を行いました。スタジオの広さを存分に活用し、迫力ある映像が収録できたと思っています。
ボリュメトリックスタジオでの撮影時の様子 【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
本郷
ソーシャルメディアを中心に企業や個人など、誰もが発信をできる時代になり、世の中にコンテンツや情報が溢れています。そのような状況の中、柔道を魅力的に発信する方法の発見は、柔道界の課題の一つだと思っていました。この課題に対して、キヤノンさんのボリュメトリックビデオ技術を活用した、新しい柔道の見せ方に大きな可能性を感じ、事業をともに進めていくことにしました。
魅力に感じた点は、これまでは考えられなかったような角度から映像を視聴できることです。360度自由な視点でさまざまな角度から映像を見られること、特に畳の下からのアングルの映像まで生成できることに驚きました。映像の力によって、柔道ファンはもちろん、それ以外の方々にも興味を持っていただくきっかけにもなると考えていますので、キヤノンさんとの取り組みには非常に期待しています。
ボリュメトリックスタジオでの撮影時の様子 【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
グランドスラム東京2022における新展開
諏訪
今年の12月に開催されるグランドスラム東京2022に向けて、三つの施策を準備しています。一つ目がプロモーション動画、二つ目が『JUDOコレカ』というデジタルトレーディングカード、三つ目が『JUDOオール・ビュー』という360度視点で柔道が見られるコンテンツです。
この三つの施策全てに、ボリュメトリックビデオ技術を使用して、柔道の魅力を訴求していきます。加えて、ボリュメトリックビデオ技術だけを活用するのではなく、テクノロジー(=ボリュメトリックビデオ技術)×テクノロジーという視点で施策のプランニング・開発も行っています。例えば、プロモーション動画あれば映像技術を組み合わせ、『JUDOコレカ』であればNFTブロックチェーンの技術を組み合わせ、『JUDOオール・ビュー』あればアプリケーション開発を組み合わせています。プロモーションビデオは、11月25日に公開し、他の施策に関しては、グランドスラム東京2022(12月3日・4日)でのローンチを目指して動いている状況です。
本郷
今年度のはじめからキヤノンMJさんと並走しながら、準備を行っていた当事者中の当事者なので、感想といってもなかなか難しいのですが、手前味噌ながらすごくかっこいい動画に仕上がっていると感じています。
今まで見たことのない視点から柔道を見られることに加えて、グリーンバックのスタジオで撮影を行ったため、映像に背景やエフェクトを自由に乗せることができます。これまで柔道の動画で背景やエフェクトまで編集が施された映像は、私が知る限りではないので、業界内外問わずに大きなインパクトを与えられたら嬉しいです。
印象的だったのは、井上康生ブランディング戦略推進特別委員会 委員長がおっしゃった「こんな時代が来たか」という発言です。この一言が全てを表していると思います。
また複数の選手から「このスタジオで試合をやってみたいですね!」というような声もあり、ボリュメトリック映像による柔道の新しい魅せ方の提案には期待感が高まっています。
ボリュメトリック技術を用いて制作した映像の一部 【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
諏訪
まず技術的な視点からの感想ですが、柔道とボリュメトリックビデオ技術との相性がとてもよかったと感じています。また、ボリュメトリックビデオ技術は、キヤノン以外の企業も取り組んではいますが、8メートル×8メートルの撮影エリアを確保しているスタジオを保有していることは、私たちキヤノンならではの強みです。この撮影エリアだからこそ柔道の撮影が実現できましたし、迫力のある映像を撮影することができました。また社内では、この情報をより多くの人に伝えていくために各所からのサポートがあり、期待度の高い事業になっていると感じています。
本郷
全柔連のプロジェクトチームのメンバーとは、映像や素材を都度共有しながら進めているので、高い期待感を感じています。また、短いティザー動画をYouTubeで公開していますが、その動画を見た連盟の他の部門から、このプロジェクトやボリュメトリックビデオ技術に対して、多くの質問をもらいました。
今回のグランドスラム東京2022は、「踏み込む、一歩。次のニッポン柔道」をコンセプトに多様な施策に取り組んでいますが、このキヤノンMJさんとのプロジェクトがプロモーションのコアとなっており、柔道界でも非常に注目されているのではないでしょうか。
グランドスラム東京2022に向けて動いている、プロモーションやキヤノンMJとのプロジェクトの進捗状況について改めて教えてください。
本郷
全柔連として、大会に向けて三回のプレスリリースを予定しております。すでに第二弾まではリリースしており、第三弾は11月25日にキヤノンMJさんが制作するプロモーション動画の公開に合わせてリリースする予定になっています。また、ソーシャルメディアの反応を見ていると、これまでの大会とは異なる期待感を感じています。
このプロジェクトによって、柔道界はどのように変化すると考えてらっしゃいますか?
本郷
まだ施策公開前ですので、これからの期待ということでお話をしますと、やはりまず世の中に大々的に出ていくのはボリュメトリックビデオ技術を活用したプロモーション動画です。プレスリリースにも記載していますが、この動画には、東京オリンピックのチャンピオンである大野将平選手とウルフ・アロン選手の2名にご協力いただきました。二選手ともに認知度が高いスター選手で、この選手たちの映像をただ編集しただけでなく、ボリュメトリックビデオ技術を活用し、柔道の攻防を魅力的に伝えることを主眼に置いた映像が完成したので、反応が今から非常に楽しみです。
※プロモーション動画は以下のURLから視聴が可能です。
https://youtu.be/IxESvQBpGSU
ボリュメトリック技術を用いて制作した映像の一部 【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
【全日本柔道連盟/キヤノンマーケティングジャパン(株)】
https://www.judo.or.jp/volumetric/
柔道の新たな見せ方を追求し、魅力を届ける
諏訪
私たちとしては、協業させていただく前にボリュメトリックビデオ技術のテスト撮影・検証にご協力いただいたこともあり、円滑に進んでいると考えております。テスト期間を含めると、全柔連さんとは約半年間ご一緒していますが、プロジェクトの方向性や目標を共有しながら進められている点は大きいです。一方、実際の制作については、ボリュメトリックビデオ技術によって撮影した映像をプロモーション動画としてクオリティの高いものに仕上げていく部分は、我々としてもチャレンジでした。例えば、本動画はボリュメトリック映像と実写映像を組み合わせて制作しておりますが、それぞれの強みと弱みを補う形で構成していくという方法論を一緒に導き出す過程はこだわった部分です。協業という形で様々な方が関わる分、解決策をすり合わせることには時間を要しました。
全柔連さんの立場で、苦労したことや課題はございますか?
本郷
この取り組みはボリュームがあるので、それぞれを調整しながら進めていく上で大変なことは多々ありますが、それだけ手の込んだ事業だと考えています。テクノロジーをコンテンツに実装・実証していく機会をお探しのキヤノンMJさんと、柔道をより魅力的なコンテンツに昇華する道を探していた我々のニーズがマッチしており、双方に相性が良いと感じております。私たちはテクノロジーの分野に関しては門外漢ですが、大小様々なリクエストを日々お伝えしており、キヤノンMJさんにはご負担をかけてしまっていますが、真摯にご対応いただいており、心強く思っております。
スポーツ×テクノロジー活用推進事業を通じた協業は来年3月までが一区切りとなりますが、得たい成果やビジョンなどについて教えてください。
諏訪
本プロジェクトは、柔道の魅力を今まで柔道に馴染みのなかった方々にもお届けし、新規ファンを獲得することを目的に据えています。テクノロジーの力で、新しい柔道の見せ方を提案し、新たな価値を生み出したいです。また全柔連さんと一緒に取り組むことで、スポーツ界に貢献できるという自信を深めていき、他のスポーツ競技へのボリュメトリックビデオ技術の展開を模索していけたらと考えています。
全柔連の12月グランドスラム東京2022から3月末の協業終了までの計画を教えていただけますか。
本郷
これまでキヤノンMJさんとさまざまな準備を進めてきましたが、この11月からようやくプロジェクトを公開していくことができます。プロモーション動画から始まり、グランドスラム東京2022ではボリュメトリックビデオ技術を活用した施策の実証を進めて参ります。それから、プロモーション動画は全柔連のYouTubeチャンネルに残り続けるので、長く視聴されるコンテンツになってくれたらと思っています。
また事業の実施と同じくらい、大会後の効果検証が重要だと考えており、どの施策がどういった層に受け入れられて、グランドスラム東京2022あるいは柔道という競技に対して、どのような効果をもたらしたのかをキヤノンMJさんとともに分析を行います。この分析結果をスポーツ庁に報告しながら、来年度以降の柔道界においてこのプロジェクトを拡張させる、もしくは残していくような道があるのかを検討していくことを予定しています。
同じく、キヤノンMJの今後のスケジュールを教えていただけますか。
諏訪
先ほど本郷さんがおっしゃって頂いたことがほぼ全てですが、SNSでの反応やインプレッションなどの数値も取りまとめて、今後の活動について検討していく予定です。全柔連さんとは強力なタッグを組んで進められているので、来年度以降の取り組みについても考えながら、私たちはボリュメトリックビデオ技術を他のスポーツにも広げていくことも同時に考えていきたいと思います。
【大会概要】
開催日:2022年12月3日(土)・4日(日)
会場:東京体育館(東京都渋谷区千駄ヶ谷1-17)
主催:国際柔道連盟
主管:公益財団法人全日本柔道連盟
日程:3日(土)男子:73kg、81kg、90kg 女子:57kg、63kg、70kg
4日(日)男子:60kg、66kg、100kg、100kg超 女子:48kg、52kg、78kg、78kg超
【チケット情報】
一般発売実施中
※大会概要・チケット購入方法等に関する詳細は、全日本柔道連盟公式サイトからご確認ください。
https://www.judo.or.jp/tournament/11311/
【全日本柔道連盟】
INNOVATION LEAGUE 2022がスタート!
新卒でJリーグクラブに入社し、広報担当として広報業務のほか、SNSやサイト運営など一部デジタルマーケティング分野を担当。現在はD2Cブランドでマーケティングディレクターを担いながら、個人でもマーケティング支援を手掛けている。
執筆協力:五勝出拳一
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事。スポーツおよびアスリートの価値向上を目的に、コンテンツ・マーケティング支援および教育・キャリア支援の事業を展開している。2019年末に『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。
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