#35鈴木達也 エヴェッサの新たな司令塔は ピュアタイプのポイントガード

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#35鈴木達也は2013年にbjリーグのトライアウトを経て、バンビシャス奈良に入団。それからは三遠ネオフェニックス、京都ハンナリーズと移籍を重ねて、今季新たにエヴェッサに加わった。身長169cmと上背はないが敏捷性に長け、昨季はリーグ7位の1試合平均5.5アシストを記録するなど、ゲームコントロールに特性が現れるピュアタイプのポイントガード(PG)だ。過去に対戦相手として対峙してきた経験から、エヴェッサに対して持っていた印象をこう語る。

「エヴェッサは個々のオフェンス能力が高くて、オフェンスリバウンドにも強い。ただディフェンス面ではちょっと欠けている部分とか、足りない部分があるなと思っていました」

エヴェッサは今季を迎えるにあたって、主なメンバーは残留した。そこに今季でプロ11シーズン目を迎え、ベテランの域に差し掛かった自らを、どう落とし込んでいこうと考えているのか。

「マティアス・フィッシャー ヘッドコーチ(HC)からはチームとして、組織としてのプレーをオーガナイズして欲しいと要望されました。やっぱり個々が強いイメージなので、チームとして成り立たせるのが僕の仕事ですし、それをやっていきます」

プロデビューした奈良時代は、スピード自慢のプレーヤーだった。しかし裏を返すと、当時はそれ以外の引き出しが多くはない選手だったことも否めない。それが今ではスピードで攻撃を牽引しながらチャンスを作り、味方にシュートを打たせるポイントガードになった。奈良から三遠、京都を経る過程で、彼は正しい道のりを歩み、着実に成長を遂げてきた。

「奈良のころは、自由にやっていましたね。それから三遠に移って、チームのためにプレーを組み立てることが多くなりました。京都では求められたのが得点だったり、クリエイト、アシストだったんです。今のエヴェッサではしっかりとプレーを作って、個の強さをチームとしての強さにすることが求められているので、また役割は変わっているなと思います」

新たに加わったチームでは、点在している強い個をつなぐ役割のようなイメージか。

「そうですね。しっかりとしたプレーコールでフォーメーション、セットプレーへの全員の共通理解を高めさせて、コールしたことをやってもらう。ときには叫んで、指示して。それは全部、チームのためにですね」

選手としての成長期に、5シーズンもの長きにわたって在籍した三遠での経験が、今に直結している。

「それは、ありますね。年齢を重ねてきて、この場面で自分がやるべきことはなにかが、わかってきています。経験値として、培ってきたものがありますからね。今はパスと、自分の得点のバランスを意識してます」

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筋肉の鎧をまとう“小さな巨人”が強い個たちをチームにまとめ上げる

彼がプロ4シーズン目で奈良から三遠に移籍したそのタイミングで、Bリーグがスタートした。bjリーグから一段階も二段階もレベルが上がり、Bリーグそのものも年々レベルが高まっていることを、彼はコートで肌身に感じているという。その世界で自分が生き残っていくためにやるべきこと、それは……。

「これはよく言うんですけど、僕は本当にスペシャルなプレーヤーではないんです。背も高くないし、運動能力がそこまであるわけではない。そんな僕のような選手は、とにかくチームから求められていることをやる。それが、すごく重要なんです。現実的にはごく一部のスペシャルなプレーヤーを除いては、プロのバスケット選手になりたくてもなれない選手、子供たちがほとんどかもしれません。でもそういったコたちが上を目指すのであれば、自分がチームから求められていることをやる大事さを、感じてもらいたいですね」

チームから求められていることを、表現するのが大事。そう言う鈴木は新加入したエヴェッサでなにを求められ、それにどう応えようとしているのか。

「エヴェッサで求められてるもののひとつは、ディフェンスをソリッドにやること。このチームに来て初めてのミーティングで、昨季までのデータからエヴェッサがディフェンシブなチームではないことが数字として表れていました。そこでHCから、今季の僕たちはまずディフェンスのチームとしてやっていくと言われたんです。なのでそれに貢献できるように、まずは自分のディフェンスから頑張っています」

PGはコート上のHCと表現されることもあり、いわばチームのスタイルを自らのプレーで具現化する存在でもある。

「チームのディフェンスのすべては、僕がボールマンにつくことから始まります。そのトーンによって、後ろで僕を見てくれている選手のトーンが決まる。なのでそこは本当に強度を上げてハードにプレーして、後ろのみんなに全員でディフェンスやるんだぞという姿を見せないといけない。チームのディフェンスのスイッチを入れることも、僕の役割だと思っています」

今季のチームは、プレーが途切れた場面で選手たちがコート上でハドル(円陣)を組むシーンが目立っている。仲間を呼び寄せ、輪の中心にいるのは鈴木だ。

「あれは、わりと昔からやっていますよ。PGはチームの司令塔だし、キャプテンシーが出ていないとチームがまとまりませんから。ハドルのなかでは『次のプレーは、こういうふうにやるぞ』だとか、ちょっとドタバタしている状況だったら『俺たちは大丈夫だ。ここをしっかりやろう』とか。明確な言葉で自分たちのモチベーションを上げるような声をかけたり、次のプレーの確認だったりが多いですね」

プロデビューした奈良では、背番号は1を付けた。その後、三遠では15、京都では25と移籍するごとに変更し、今季のエヴェッサでは35を付ける。この背番号に込めた意味とは?

「30歳を過ぎたあたりから、35歳まで現役でやりたいなって思いがあるんです。そういう自分の思いを、背中に乗せています。カッコ良く言ったら、ですよ(笑)。まずは、35歳まで頑張るぞと」

1991年3月生まれ。今のプレーぶりを見る限り、35歳は通過点に過ぎないように思える。そんな31歳の鈴木達也は今季、どんなプレーをエヴェッサのファン・ブースターに見せるのか。

「今季の僕らはどのチームが相手でも、勝つチャンスがある。それを実際に勝利に結びつけるには、どれだけ自分たちのやりたいことができるか、相手のやりたいことをやらせないかがカギですね。自分自身のプレーに関しては、今年はディフェンスのチームで行くので、僕がディフェンスを頑張るところとアシストですかね。ドライブからのアシストを見てもらいたいですね。もちろんチャンスの場面では、シュートも積極的に打っていきます!」

サイズのハンデを補うために、徹底的に鍛え上げた上半身は筋肉の鎧が如し。エヴェッサの小さな巨人はチームの勝利のため、プレーハードを誓う。
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著者プロフィール

2005年にクラブ創立。七福神のお一人で商売繁盛の神様である「戎様」を大阪では親しみを込めて「えべっさん」とお呼びするところから、 人情・笑い・商売の街大阪を活気づける存在であることを願い「大阪エヴェッサ」と命名。 同年にスタートしたbjリーグで開幕から3連覇を成し遂げる。 2016年9月に開幕した男子バスケットボールの最高峰・Bリーグでは、ホームタウンを大阪市とする大阪唯一のクラブとしてB1に参戦。

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