【2022 SEASON REVIEW】#001 ー 県リーグ1部昇格、そしてその先のビジョンに向けて

鎌倉インターナショナルFC
チーム・協会

【DAN IMAI】

 創設5年目のシーズンを迎えた鎌倉インテル。昨シーズン途中には待望のホームグラウンド「みんなの鳩サブレースタジアム」も完成し、河内一馬監督体制2年目となる今季はなんとしても神奈川県リーグ1部への昇格を果たしたいところだ。

 16チームずつ2つのブロックに分かれて争われる県リーグ2部で、鎌倉インテルは開幕5連勝の好スタートを切った。現在、リーグ戦全15試合中の3分の1を終えてブロックAの首位。序盤戦5試合を振り返りながら、今後の戦いを展望する。

(文・本多辰成/スポーツライター)

思わぬ苦戦を強いられたアウェイ戦、昨年からの成長示す

苦戦を強いられた大和S.Matthausとのアウェイ戦は小谷光毅のゴールで辛勝 【㋚写真】

「昇格を決めて今シーズンを終えることができたら、おそらく思い返すゲームのひとつだと思います。開幕からの5試合の中で、このゲームが一番のポイントでした」

 指揮官として2年目を迎えた河内一馬監督が、そう振り返る試合がある。5月1日に行われた大和S.Matthausとのアウェイ戦。開幕戦を勝利した翌週の2戦目として開催されたこのゲームは、第5節までの5試合では唯一、「鳩スタ」以外の会場で行われた一戦だった。

 試合は前半から何度か先制のチャンスを迎えるも、相手の粘り強い守備に苦しんでゴールを奪えず。逆に後半開始早々にはセットプレーの流れから相手の強烈なシュートがクロスバーを直撃する場面もあった。その後もスコアレスのまま試合は進み、嫌な雰囲気が漂い始めていた。

 前週にホーム「鳩スタ」で行われた開幕戦では、日本工学院FCに3対0と快勝。しかし、その順調なスタートのなかに河内監督は「嫌な予感」も感じていたという。

「正直、開幕戦の結果は少し出来過ぎくらいに感じていました。内容もスコアもきれいに決まったんですが、個人的には試合が終わる直前くらいから出来過ぎていることに対する怖さみたいなものがあって。次のゲームに対する不安をちょっと感じていました」

 嫌な予感もわずかに抱きながら迎えた第2戦だったが、対戦相手の大和S.Matthausに対しては「誤解を恐れずに言えば、比較的、楽に勝てる相手と分析していた」と振り返る。しかし、蓋を開けてみれば、あわや敗戦の可能性すら感じさせる大苦戦となった。

 苦しい展開のなか、68分にようやく待望の先制点が生まれる。右サイドからのクロスを内藤洋平がつなぎ、最後は小谷光毅が落ち着いて左足でゴールネットを揺らした。その先制点がそのまま決勝点となって1対0の辛勝。一昨シーズンはいわてグルージャ盛岡でJ3リーグ全34試合に出場していた強力な新戦力、小谷がチームの危機を救った。

 開幕戦に意識を向けて準備を続けてきたため、2戦目は「悪い意味でリラックスしてしまった面もあった」と河内監督は反省する。

「開幕からの5試合で唯一、精神的な脆さが出てしまった試合でした。でも、そんな試合を我慢強く戦って勝ち切ることができた。単純に得点を決めた小谷のような能力や戦術眼は去年のチームになかったものですし、いろんな面で去年との違いを感じた試合でもありました。本当に大きな1勝だったと思います」

多くの新戦力が加入、活動日数も増やしチーム強化

「鳩スタ」での活動日を増やし、課題を改善しながらのチームづくり 【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 創設5年目の節目を迎えた今シーズンは、いくつかの大きな変化があった。まずは昨シーズン途中に「鳩スタ」が完成し、今季は開幕からホームグラウンドが存在すること。そして、それに伴ってトップチームの活動日数は大幅に増加した。昨年までは週3日だった練習日を週4日まで増やし、週末のゲームを含めた活動日は合計で週5日。社会人サッカーとしてはかなり多い活動日数となった。

 開幕前には強力な新戦力たちが次々とチームに加わった。2020年まで3シーズンに渡ってJ3で活躍したMF小谷を筆頭に、同じくJ3のいわてグルージャ盛岡に所属していたMF清水敦貴、湘南ベルマーレユース出身のMF柴野諒貴、関西の強豪・関西学院大のトップチームでプレーしていたDF北村万宙といった有力選手たちが続々と加入。県リーグ1部昇格へ向けて戦力が整えられていった。

 一般に社会人サッカーでは、選手間のコミュニケーションが十分に取れないケースもある。だが、今季は活動日数を大幅に増やしたことに加え、各種チャットツールやSNSなども駆使して密な連携を図ることで新加入選手たちも含めてチームが結束。月に1回は「インナーワーク」と名付けられた議論の場を設けてじっくりと意見を交わし、開幕に向けてチームは徐々にまとまっていった。

 多くの新加入選手たちを抱えたチームだけに、もちろん最初から結果が出たわけではない。プレシーズンには勝てない時期もあったが、在籍3年目を迎える芹澤徹郎はその点においても「鳩スタ」の存在が大きかったと感じている。

「去年まではフルピッチのコートで練習することができなかったので、試合で課題が出ても改善することができませんでした。修正できずに次の試合が来て、また新たな課題が生まれてしまう。それが今年は『鳩スタ』があるので、課題を改善しながらチームをつくっていくことができた。そこはすごく大きな違いだったと思います」

 そして迎えた4月24日の開幕戦では、6人の新加入選手がスタメンに名を連ねた。得点はすべて新加入選手によるもので、3対0の完勝。鎌倉インテルが新たなチームとして生まれ変わったことを示す白星発進だった。

新加入選手の活躍もあり開幕戦は完勝 【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

公式戦でクラブ史上初の「鎌倉インテルダービー」

史上初の公式戦での「鎌倉インテルダービー」はトップチームが制す 【㋚写真】

 5節までの戦いを振り返るとき、ひとつのハイライトと言えるのが第4節で行われた「鎌倉インテルダービー」だ。ともに県リーグ2部に所属するトップチームの鎌倉インターナショナルFCとセカンドチームに当たる鎌倉インターナショナルSCが同ブロックに組み込まれたため、クラブ史上初となる公式戦でのダービーマッチが実現した。

 公式戦での対戦が決まったときの心境を、トップチームの河内監督は率直に「すごく嫌だった」と振り返る。

「正直に言うと、SCと対戦することが決まったときはすごく嫌だと思いました。そもそもこちらが余裕で勝てるほどの差はないと思っていましたし、SCの選手たちもいつもの2倍、3倍の力を発揮してくるのは間違いないだろうと」

 セカンドチームには昨季、トップチームでプレーしていた選手たちも数多く在籍している。新戦力の加入や活動日数の増加によって、やむなくトップチームを去った選手も少なくなかった。それだけに河内監督には「不甲斐ない試合はできない」という責任感があり、一方のセカンドチームの選手たちは「この試合は絶対に勝とう」と開幕前から意気込んでいた。

 組み合わせが決まった段階では「すごく嫌だった」という河内監督だったが、実際にダービーの日が近づく頃には心境に大きな変化があったという。

「プレシーズンを戦うなかでうまく成長することができて、SCとの試合が行われた5月29日の時点では、自分たちの実力を発揮すれば間違いなく勝てるという感覚がありました。対戦することが決まったときと試合当日では、僕の中の自信は雲泥の差があったと思います」

 苦戦を強いられた大和S.Matthaus戦を乗り越えたチームは、続くJFC FUTURO戦を7対2と快勝。そこで改めて次戦に迫ったダービーに目を向けると、組み合わせが決まった時点で感じた不安は消え去っていた。そこから試合までの2週間、河内監督はただ勝利するだけではなく、トップチームとして尊敬される勝ち方とは何かを選手たちと話し合うことにも努めたという。

 クラブにとっても記念すべき一戦となった両チームの激突は、立ち上がりに2点を先制したトップチームが後半にも1点を追加。史上初の「鎌倉インテルダービー」は、3対0でトップチームの勝利という結果に終わった。

県リーグ1部昇格、そしてその先のビジョンに向けて

【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 クラブの歴史に刻まれるダービーを制したトップチームは、続く第5節の港北FC戦も5対1と快勝。チームによって試合消化数が異なるため暫定ではあるが、現在、5戦全勝でブロックAの首位に立っている。

 大和S.Matthaus戦以外の4試合はいずれも3点差以上の大差をつけており、計19得点3失点で得失点差+16と勝ち方も力強い。しかしながら、確実に県1部への昇格を掴み取るには、ブロックBを制したチームとの昇格決定戦に勝利しなければならない。チームを率いる河内監督も、気の抜けない状況がシーズンの最後まで続くことを強調する。

「チームの課題はまだまだたくさんありますし、本当にやらなければいけないときに力を発揮できるかと言えばまだ不安もある。そこはもう、練習に対する意欲とか質、強度を上げて毎日いい練習を積み重ねていくしかないと思っています」

 さまざまな経歴やスタンスの選手たちが集まる社会人サッカーにおいて、チームがひとつとなって進むのは簡単ではない。だが、「CLUB WITHOUT BORDERS」という明確なクラブビジョンを掲げる鎌倉インテルにはそれに共感する選手たちが集い、現場レベルでも意思統一が図られているのは大きな強みと言えるだろう。

 自らJリーグの契約更新を断って社会人サッカーに進み、今季、鎌倉インテルに加った小谷もクラブのビジョンに共感して入団したひとりだ。実際にチームに加わり、クラブの一員として戦うなかで、チームメイトに求めるものも次第に厳しくなってきているという。

「開幕前はあまり強く言わなかったんですが、今は言います。今季の目標は昇格ですが、それはクラブが目指すところに辿り着くための手段。そこを目標にしていていいんだっけ? というところを感じてほしくて言っている部分もあります。昇格したとしてもこのままでは来年は勝てないよ、と。そういうクラブだと思っているので」

 他の選手たちに話を聞いても、誰も今季の昇格だけを見据えている者はいない。少なくとも来季の県1部での戦いにつながるイメージができており、さらにその先にあるものへも視線は向いている。そして、その逆算としての「県1部昇格」へ向けて今、チームが順調に歩みを進めているのは確かだ。

【Kotaro Matsuo】

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著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

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