トッド・ブラックアダーHCに廣瀬俊朗さんがインタビュー!選手育成や主将像について

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東芝ブレイブルーパス東京OB廣瀬俊朗さんが「府中ダービー」に来場【番外編】

ジャパンラグビー リーグワンはいよいよ来週プレーオフに突入する。東芝ブレイブルーパス東京は5月1日(日)に開催された第15節の「府中ダービー」で東京SGに勝利して4位の座を自力で掴み取り、プレーオフ進出の権利を得た。そして迎える21日(土)準決勝は再び「府中ダービー」となる、リーグ1位の東京SGとの一戦。

花園での決戦の前に今シーズンがチームを率いて3シーズン目となり、終盤の6連勝でチームをプレーオフに導いたトッド・ブラックアダーHCのインタビューをお届けします。先日の「府中ダービー」前にはダービーに関する部分のみを掲載しましたが、オールブラックスの元キャプテンであるトッド・ブラックアダーHCにジャパンの元キャプテンである廣瀬俊朗さんが聞いたインタビューは主将論など非常に深いものがあり、ぜひファンの皆さんにご一読いただきたい内容ですので、プレーオフ前に【番外編】として緊急掲載することにしました。

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選手育成について
今シーズンの東芝ブレイブルーパス東京は、新卒選手を含めて55名の在籍選手のうち42選手を起用し、終盤に向けてチーム力を高めて順位を上げて来た。試合出場の経験の浅い選手も積極的に起用してチーム全体でリーグ戦を戦った印象があるが、その背景となった考え方に迫る。

廣瀬:若い選手が良くなることで、チームが良くなっていくのはとても嬉しいことではないですか。
トッド・ブラックアダー(以下、トッド):そうですね。今のチームには若手にも良い人材がそろっているので、育てたいという意識があります。自分たちの育成の部分には自信を持っていますし、若手の選手にも準備さえできていれば、積極的にチャンスを与えています。
そして、ベテラン選手にとってもそのような若手選手と競い合えることはとても良いことです。長期的な視点で厚い選手層を獲得するには、いかに構築出来るかが重要だと考えています。チームとして若手であっても準備ができていればプレーができるという状態に仕上げたいですね。特に今みたいな世間の状況や時代に合わせると、そのようなメッセージが大事なのかなと思います。

廣瀬:育成という面では、外部からの講師を招いているのもエッセンスとしてとても良いと感じます。
トッド:そのような部分はすごく大事だと考えています。人を育成していますので、良いリーダーになるため、自分自身をより理解するため、選手自身には知性のあるスマートな人間になってもらいたいです。また、様々な視点を持てる人間になってもらいたいとも思っています。最近では自分たちがどのようなことを考えているかということを認識できる、良いセミナーを開催できています。ラグビーに関する多くの部分は、極論を言えば「自分を理解できるか」というところに帰結します。
問題が発生した時に、どのように認識し、それをどのように解決するかが重要です。今シーズンはそのような教育的な部分でもセミナーを開催できています。選手が違う角度から学びを続けることによって、より理解が浸透していきます。歳をとってから振り返るとわかることがありますが、自分たちにとってはそのような機会はすごく有効なことです。人間を育てるという場合は、ラグビーのフィールドだけではなくて、オフザフィールドの部分も大事になってきます。一番大事なのは、自分たちの中にしっかりとした価値があるというところです。
今はお互いの理解がすごく進んでいて、それがすごく良い形になっています。選手がプレゼンターとして人の前で発表するのですが、外国人選手と日本人選手で本当に違った考えをする場合もあれば、すごく似た考えをする場合もあります。このチームのすばらしいところは、お互いのことを受け入れていて、さらに理解し合うことが出来るところです。文化対文化ではなく、自分たちは何ができるかという部分で、すごく良い理解ができています。信用を築き上げる部分で自分の思っていることを正直に話すことを、フィールド上でもフィールド外でもやっていて、それが非常に役に立っていると思います。コロナウィルス感染症の影響で人が交流するのは難しい時期ですが、上手く対応できているかなと思っていますね。廣瀬さんは東芝の文化を当然ご存じですが、他者と仲良くするという部分は大事です。そのような部分がコロナウィルスの影響で難しいにも関わらず、セミナーを介すなどして、ラグビーがうまくなっていることはとても良いことですし、そこは順調にいっていると感じています。

廣瀬:個人的には、そのようにいろいろな文化の人が合わさっていくのはとても重要な観点だと考えていて、すごく価値のあることだと思います。
トッド:すごく大事なことだと思います。現在のチームは、2つの文化が独立して存在しているというよりは、それらが合わさっているという感じです。人間を育てるという時に、日本人か外国人かという話はあまりしていません。1つのチームとしてコネクションができていると思いますね。ですので選手の起用においても、誰がその週でベストのプレーヤーなのかという点で判断をしています。

廣瀬:今のブレイブルーパスを見ると、良いリーダーがたくさんいるように思います。だからこそチームが良い状態になっているのでしょうか?
トッド:そこは同感です。ディフェンスのミニグループにおいてマット・トッド選手はリーダーですし、スクラムだったら太志(森太志選手)がリーダーです。ティム・ベイトマン選手、伊藤鐘平選手、といったメンバーも各々のエリアで責任を持っていて、選手たちはすばらしい仕事をしてくれています。それによって、キャプテンだけが責任を持つわけではありません。

廣瀬:お話を聞いていると良い意味でウィニングカルチャーみたいなものができているように感じます。それこそ、クルセイダーズのような。
トッド:そうですね、選手たちがそのようなウィニングカルチャーをつくってくれています。自分自身を信じるだけではなく、システムやお互いのことを信頼できているのが良い部分だと感じます。仲間をがっかりさせたくないということで、絶対に良いプレーをしたいという思いにつながっているのかなと思います。

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キャプテン像について
オールブラックスの元キャプテンであるトッド・ブラックアダーHCとジャパンの元キャプテンの廣瀬さん。共に国を背負って戦っただけに共感できる思いがあるようで深い話を聞くことが出来た。

廣瀬:チームの共同主将を務める2人をどう見ていますか。
トッド:見えないところで人をつなげるということをすごくやってくれるのが小川選手です。そしてラグビーのレベルをさらに上げることができたと思っています。徳永選手もすばらしいFWのリーダーですし、思っていることを包み隠さず話してくれます。シーズンが深まるにつれて、彼のラグビーもどんどん良くなってきています。その2人がお互いの強みを引き出しているかなと思います。
また、小川選手がケガで出場できなかった時に、リーチ・マイケル選手がチームリーダーを務めてくれました。本当に良いリーダーがチームにそろっていて、さらにチームファーストで考えてくれていますので、すごくうまく機能していると思いますね。
廣瀬:德永選手にインタビューをした際に「全体を見ようとして自分のプレーにフォーカスできていなかったが、トッドさんから言われた言葉が自分を変えるきっかけになった」と話していました。
トッド:当然廣瀬さんもご存じだと思いますが、キャプテンとして一番大事なところは自分のプレーにフォーカスして、まずそこをしっかりやることです。それを実行できれば、自分の背中を見せて引っ張っていけると思います。
こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけないなど、キャプテンには様々な情報が入るので、ついチームがしっかりやることを意識しすぎて、自分を忘れてしまうということもあると思います。エゴスティックな部分がなければないほど、そうなってしまうと思いますね。ただやはり情報を詰め込みすぎずに、自分自身の役割を明確にすることが必要です。トク(德永選手)はそのようなことがしっかりできれば、フィジカルマシーンになるような選手だと思います(笑)。

廣瀬:それはキャプテンが悩むことの一つだと思っているのですが、トッドさんは最初からそのバランスはうまく取れていましたか?
トッド:もちろん自分もチームファーストで常に考えてきました。自分の役割はボールキャリアで、フィジカルがあったので、それが自然にできたという部分もあります。しかし、チームが正しい状態になるためにという観点で、情報がいっぱいになってしまったことはありました。自分で抱え込みすぎてしまうと、チームが結果的に良い方向にはいきません。ただ同時に、自分で責任を持つという部分ではすごく良いことだと思います。
どうやって対処するかということですが、時には個人のラグビーの部分で苦労してしまうことはあると思います。多くのキャプテンが、自分のエゴをなくそうとしてしまうということはあると思いますね。そして、プロセスにフォーカスするかわりに、常に結果に目がいってしまいます。そのような部分で成長していくのには、やはり時間がかかりますね。コーチやファンのために、チームのために勝ちたいという気持ちが強すぎて、自分が若い時は苦労しました。キャプテンになるためには、本当に多くのことを考える必要があります。コーチングチームと選手の間に入らなければならないことも多くありますので。

廣瀬:トクはトッドさんのサポートのおかげで切り替えられたと話していましたが、トッドさんにもターニングポイントのようなものはあったのですか?
トッド:順調にチームではプレーしていたのですが、自分が引っ張っていたというよりは、サポートをするという立場にいたと思います。トクとの会話とも似ているのですが、自分の試合を見た時に、自分のラグビーをどこに向かわせていきたいのかと考えたんですね。そこで、まずは自分が整っていなければいけないと思いましたし、フォローする価値のあるリーダーにならなければいけないと思いました。どうやって自分が模範になっていくかと考えた時に、それはまず自分のやるべきことをしっかりやっていくことだと思い、キャプテンだけがリーダーではないと考えたので、他のメンバーにも共有していました。そうすることによって、ある意味肩の荷がおりましたね。他のメンバーにも引っ張ってもらうということを認めた点が、ターニングポイントになったかもしれません。他のメンバーに大事な部分で役割を与えて責任を持ってもらったことで、自分のキャプテンシーが変わったかなと思います。

東芝ブレイブルーパス東京の「府中ダービー」での廣瀬俊朗さんに関する記事配信は以上で終了となります。ご覧いただきましてありがとうございました。
(ライター / 内海 日和)

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著者プロフィール

東芝ブレイブルーパス東京はジャパンラグビーリーグワン(Division1)に所属するラグビークラブです。日本代表のリーチマイケル選手や德永祥尭選手が在籍し日本ラグビーの強化に直接つなげることと同時に、東京都、府中市、調布市、三鷹市をホストエリアとして活動し、地域と共に歩み社会へ貢献し、日本ラグビーの更なる発展、価値向上に寄与して参ります。

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