【水戸】私のミッション・ビジョン・バリュー2021年第11回 三國スティビアエブス選手「何事にも真剣勝負」
【©MITOHOLLYHOCK】
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2021年第11回は三國スティビアエブス選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
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「1回1時間ぐらいの面談を3回行いました」
Q.面談して、自分のサッカー人生を振り返りながら、その時の思いを言語化する経験はいかがでしたか?
「話をしていて、なぜサッカーをするようになったのかをあらためて考えるようになりましたし、それこそ、今、何のためにサッカーをしているのかを強く考えるようになりました。昨年、特別指定選手に登録されてからMVVを作成したんです。その時の面談で気づいたこともたくさんありました。周りの人の支えのおかげで今があることを再確認しました」
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「自分の中でスポーツをすることのメリットは、サッカーの場合、チーム競技ということでチームメイトとの信頼関係を築くことがあります。なので、周りの人に対して感謝の気持ちや思いやりを養うことができると感じています。デメリットに関しては、人それぞれだと思いますが、学年が上になればなるほど競争が激しくなって、競争を勝ち抜く人もいれば、競争で外れてしまう人もいるという現実もあります。あと、レベルの高い場所でスポーツをするとなると、お金の問題も関係してきます。自分は6人兄弟で、6人全員がスポーツをやっている。なので、親は大変だったと思います。そういう金銭面の問題があるということを知ってもらった上でスポーツを好きになってもらいたいという思いがあります」
Q.そういうことを感じたのはいつ頃でしょうか?
「自分は中学から青森に行ったのですが、高校を卒業して東京に戻ってきて、弟のチームに顔を出して一緒にサッカーをした時、その子たちにプロを目指してずっと頑張ってもらいたいと思ったことがきっかけですね」
Q.中学入学時に東京から青森に行くことを決断しましたが、その時もそういったことを考えましたか?
「小学校5年の時、選手権の決勝戦が青森山田と山梨学院だったんです。その時に見た柴崎岳選手に憧れて、青森山田に行きたいと思うようになりました。お母さんの実家が青森だったので、ツテを活かして青森山田中学の練習に参加させてもらった上で青森に行くことを決めました。ただ、MISSIONのようなことを考えるようになったのは高校に入ってからですね。中学時代はただガムシャラにサッカーをやるだけでした」
Q.自分の過去を踏まえて出てきた言葉ということですね。
「そうですね。最近、コロナ禍でいろいろ規制がかかって、社会全体のサッカー熱が落ちているように感じています。どうすれば、熱を取り戻せるのかという話を水戸の選手同士ですることもあります。大切なのはサッカーだけでなく、スポーツ全体で発展することだと思っています。そのためにも、メリットとデメリットをちゃんと理解することが大切だと感じました」
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「水戸ホーリーホックは若手とベテランの意見交換ができるすごくいい関係が築かれているチームだと感じています。昨年、水戸に練習参加した時から感じていました。若手がベテラン選手に意見することができないチームもあると聞きます。それはスポーツだけの問題ではないと思うんです。日本は上下関係が厳しくて、下の人の意見が通らないことが多いような気がします。なので、下の人が上の人にちゃんと意見を伝えられるような風潮になったら、社会全体が変わっていくんじゃないかなと思って、この言葉を選びました」
Q.高校と大学は上下関係が厳しかったのでしょうか?
「大学時代はまったくなかったのですが、中学・高校は上下関係が厳しかったです。特に1年生の時は自分の考えで動くというより、上の人から言われた通りに動くという感じでした。振り返ってみると、すごくもったいない時間を過ごしたなと感じています。なので、そういう思いを下の年代の人たちには感じてほしくない。どんどんなくなってきているとは思いますけど、もっとよくなっていったらいいなとは思います」
Q.水戸でそう空気を作っているのはベテラン選手なのでしょうか?
「細川淳矢選手や本間幸司選手といったベテラン選手が積極的に若手に話しかけてきてくれるんです。意見交換する時も『あの時どうしたかった?』といった問いから入ってきてくれる。なので、僕らもしゃべりやすいですし、伝えやすい。実際、『こうしたかった』と答えたら、『もっとそういう要求していい』と言ってくれる。本当に水戸のベテラン選手は一緒にプレーしていて心強いんです」
Q.今年はルーキーですが、今後三國選手より若い選手が入ってきます。下の選手に対しての接し方の見本となりますね。
「見習うべき存在ですね」
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「高校まではサッカー以外の人とあまり関わっていなかったんです。遊びに行くのもサッカー部の仲間とだけでした。でも、大学4年間でいろんな競技の人と話をするようになりました。体操の日本代表選手もいましたし、陸上や野球の選手など、いろんな人と関わるようになったんです。それによって、新しい知識がどんどん入ってきたんです。それが自分にとって大きかった。あと、プロサッカー選手になった利点ってあると思うんですよ。プロサッカー選手だからこそ、広がるコミュニティーもあるんですよね。なので、その環境を活かして、いろんな人と話をして、自分の知識をもっと広げていきたいと考えています」
Q.「Make Value Project」も貴重な時間ですね。
「先日、昔からクラブに関わっている水戸ホーリーホックの萩原武久顧問の話を聞いて、それこそ、今のこの環境も当たり前ではないということをあらためて気づきましたし、1日1日を無駄にしてはいけないと本当に思いましたね」
Q.2つ目は「サッカー以外の知識を身につける」。1つ目の延長線の話ですかね。
「これは本や記事を読むことですね。自分はあまり読むことが好きじゃなくて、読むトレーニングとして、昨年から少しずつですが、本を読むようにしています」
Q.そう思うようになったのはなぜですか?
「水戸ホーリーホックに来て、西村卓朗GMと話をした時、自分の存在意義を整理して話をすることやいろんな人の話を聞いて整理して自分の価値観を高めるといったことの必要性を感じました。そのために自分でできることは何だろうかと考えた時、『本を読んでみよう』という考えに至りました」
Q.3つ目は「相手に伝わる言語化にこだわる」とありますが、それも2つ目の延長線上にある考えなのでは?
「そうですね。思ったことをちゃんと伝えないと、相手に伝わらないんですよね。伝えたつもりでも伝わっていないことが高校時代は多かった。サッカーでもコーチングがすごく大事ですし、日頃から簡潔に言語化して伝えることが大切だと気づきました。言語化するためにはいろんなことを知らないといけない。なので、2つ目の延長線上にはなりますが、現在意識的に取り組んでいることです」
Q.言語化するために「本を読む」ことを大切にしているのですね。
「本を読むと自分の知らない言葉がたくさん出てきます。それを知らないままにするのではなく、自分で調べてみることによって、その言葉の意味を知ることができる。そうやって言語化能力を高めようと思っています」
Q.4つ目は「凡事徹底」です。
「中学・高校では礼儀や挨拶に対してすごく厳しかったんです。でも、それは今になってすごくよかったと感じています。大学に入ってから、周りに挨拶ができない人や人の話を聞けない人が結構多くて驚いたんです。高校時代まではそれが当たり前のことでしたから。挨拶や人の話を聞くことは社会に出てから大事なスキルだと思っています。なので、高校時代に身につけたことを忘れないようにしますし、これからも1日1日しっかりやっていこうという思いを込めて、この言葉を選びました」
Q.5つ目は「何事にも真剣に取り組む」。
「サッカーのトレーニングでの1つ1つのパス練習や筋トレなどで手を抜かないようにしていますし、MVV作成の面談も真剣に取り組んだからこそ、こうやって言語化することができている。Make Value Projectも僕は全講義にオフラインで参加して、ちゃんと講師の方の目を見て話を聞くようにしたことによって、自分に必要な知識を得ることができました。なので、この言葉は自分にとってすごく大切なんです。自分では『真剣』とは思っていなくて、当たり前のことなんですけど、周りからは『真剣』だと思われているという自負があります」
Q.最後は「自分と向き合う」です。
「今までやりたいことをやってきたサッカー人生ではあったので、もう一度見直すという意味も込めて、自分と向き合って、今必要なことを考えるようにしています。今年1年間、そういうスタンスでやってきました」
Q.「自分と向き合う」ことは簡単そうで難しいと思います。
「今までサッカーに関して、能力で補うところがあったんです。今ももしかしたら、そうなのかもしれませんが、サッカーの本を読むことやサッカーの試合を見たりすることによって、ポジショニングや戦術を学ぶようにしてきました。リーグ終盤になってしまいましたが、自分の中で確実に成長を感じているんです。うまくいかなくて挫折しそうな時もありましたし、なかなか試合に出られなくてつらい思いをしてきました。それでも、練習試合やJエリートリーグで100%の力を出して、自分に何が足りないのかを考えながら取り組んできました」
Q.VALUEを見ると、変わろうとしている意志を強く感じます。その意志こそが、三國選手の現在のVALUEなのでしょうね。
「そうだと思います。サッカーは自分で価値を示すのですが、評価するのは自分ではありません。プロサッカー選手は周りに認めてもらえてもらわないといけない。自分がよくても、周りからは評価されないこともありますし、逆のこともあります。誰が見ても評価してもらえるようになりたい。もう少し時間はかかると思います。でも、ぶれずにやっていきたいと思います」
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「真剣勝負。何事にも手を抜かない。どうしても妥協したくなる時はあります。サッカーをしている時はあまりないのですが、オフのところで『今日はいいかな』と甘い考えが出てしまうことがある。たとえば、『今日は疲れたから読書しなくていいや』と思うこともあるのですが、10分でも、3ページでもいいから読むようにしています。そういう意志を込めてこの言葉を選びました」
Q.自分と真剣勝負しているのですね。
「それはカッコよく言い過ぎですね(笑)。それこそ、中学の時はサイドMFやボランチでプレーしていたのですが、聞き足の右足ばかり使ってプレーしていて、左足で全然蹴れなかったんです。それが悔しくて、全体練習後、一人で左足のキックを何十本も蹴って練習をしました。それによって、左右両足同じレベルで蹴れるようになりました。あの時、努力してよかったなと思っています。なので、これからも真剣勝負をしていきたいと思います」
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